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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第二章 ハイラス鎮守府編

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121/472

121南下する海賊の理由

 首を傾げながらのじゃ幼女を見送った一行は、お役人さんの案内でそもそもの目的であった水司の港湾事務所へと向かった。

 此度起こった海賊襲撃についての報告を聞くのだ。


「……そう、今回はちょっと考えて来たのね」

 あらましを聞き、水司へ出向しているバレッタが感心して頷いた。

 近頃頻繁に出現するようになった海賊だが、たいていは一隻にて商船を襲うのが常だった。

 だが何度か撃退された経験から、今回は二隻艦隊による時間差襲撃だったらしい。

 もっとも海に生きる種族である人魚たちに掛かれば多少の増減など問題ではない。

 彼らと来たら海中にあればとらえることが難しい素早さで泳ぎ回るし、船の下に潜り込んで船底に穴をあけるなどの工作だって簡単なのだ。

 こんなの(マーマン隊)に絡まれては、海賊船だろうと軍船だろうと成す術はないのだった。

「ところで、海賊さん方はなんで最近ここまでやって来るようになったのです?」

 一通りの報告が終わったところで、大人しくハーブのお茶をすすっていたエルシィが訊ねる。

 先に聞いた話だが、海賊が良く現れる海域はここよりもっと北の方だったはずだ。

 それが南下してきたのなら何か理由があるのだろう。

「おそらくですが、ケントルム海峡の通商が盛んになったからではないかと言うのが、水司の見解です」

「なるほど、獲物が多そうだから喰いついた、とそういう訳ですか」

 エルシィはお役人の回答に納得して「ふむ」と頷いた。

 ケントルム海峡とは、ジズ公国のあるジズリオ島とここハイラス領の間に横たわる海のことだ。

 昔から海流穏やかで魚影も濃く、船の航行においても難所は少ない。

 だがこれまで海賊の食指が動くことはなかった。

 なぜか。

 それはこの海峡を渡る商船が少なかったからだ。

「つまりエルシィ様の御威光の賜物という訳ですね。

 さすがエルシィ様です」

 この話を聞き、フレヤが一足飛びな解釈を披露しつつ、小さくパチパチと手を叩く。

 エルシィも褒められて満更でないので「それほどでもー」とフレヤに笑い返した。

 商船が増えたのがエルシィのおかげなら、海賊が増えたのもエルシィのせいと言えてしまう、という辺りまで知恵が回らないのはご愛敬だ。

「最近、ということは当然エルシィ様の行動が何らかの作用しているのでしょうけど……なぜ商船は増えたのですか?」

 と、疑問を挟んだのはキャリナだった。

 彼女はエルシィの秘書のような仕事をしてはいるが、そもそも政治向きの人間ではない。

 なのでエルシィのごく近い身回りを離れた事柄は、それほど把握していないのだ。

 もっともそれはフレヤやアベルも同様だ。

 エルシィでさえ、全体的なことをふんわりと知っている程度。

 とてもじゃないが一人の人間がすべてを深く把握するなど無理である。

 エルシィがそのふんわりとした知識を披露するために口を開く。

「コホン、それはですね?

 わたくしが旧ハイラス伯国の国庫と伯爵の財産から、多大な戦争賠償金を支払ったからです」

「?」

 少しピンとこなかったようなので、続けて話す。

「先日の争いでジズ公国における被害は最少だったと言えますが、それでも全くなかったわけではありません。

 また、そもそもいろいろなものが足りていない国ですから。ジズ公国は。

 お金があれば買いたいものはたくさんあったのですよ」

「なるほど……」

 エルシィの説明で一応納得はしたが、少し釈然としない表情のキャリナだった。

 彼女にしてみればジズ公国でさほど不自由な生活をしていなかったので、「いろいろ足りていない」と言われてもやっぱりピンとこないのだ。

 このあたりは「余剰なお金があるなら貯金した方が良い」と考える個人的な思想と、「お金がある時こそ整備すべき」と考える為政者との意識差もあるだろう。



 報告とそれに付随する雑談がひと段落したところでエルシィたちは港湾事務所を辞した。

 今日のエルシィとバレッタはお休みなので、あまり長居するのも宜しくないだろう、という訳である。

 とは言え、水司の方としてもハイラス領のトップが来たというのに放っておくわけにはいかない。

 結局その後はお役人がついて、港の倉庫や港湾施設、船の見学などを案内された。

 そして夕方、主城へ戻る馬車の中。

「エルシィ様、明日の予定ですが……あら」

 隣り合わせに座ったエルシィとバレッタが互いに支え合うように寄りかかり合い、すかーっと静かな寝息を立てている風景がそこには広がっていた。

 キャリナは馬車の御者に「なるべく静かにお願いします」と申し渡し、優しい微笑みを二人に投げかけるのだった。


 翌朝。

 一晩寝てすっかり元気になったエルシィが一行を振り返ってのたまう。

「今日は街を出て農村へ向かいます。

 目的はお米……いえ亜麦の調達です!」

 何が何やら解らないままに、一行は合わせて「おー」とコブシを挙げた。


 そして農村。

「え? 領主様? なしてこんなところに……製粉していない亜麦が欲しい?

 収穫はまだ先ですが……」

「がーん」

 そう、季節は春を過ぎ初夏。

 はたしてエルシィは亜麦を手に入れることが出来るのか。

次回は来週の火曜になります

今週はちょっと忙しく、書いてる余裕がなさそうなので……

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