年越し
「実はわたし宇宙怪人なの」
そう言った妻の頬に牙の並んだ獰猛な口が裂け開き、「ア・イ・シ・テ・ル」と言ってみせた。
「そんな……そんなことって……」
僕は左手の義手を外してバスター砲を構え、妻の肩越しに部屋の隅を走っていたゴキブリを焼き殺し、自分が宇宙怪人を追って地球へやってきた宇宙始末屋であることを明かした。
「でももうこっちで定職ついちゃったもんなぁ」
「ウ・ケ・ル」
妻は笑って、剥いたミカンの半分を僕にくれた。
もうすぐ紅白歌合戦。今年も、二人で静かに年を越すことになりそうだ。