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9:動き出すやべーやつ!




「いくぞっ、『ワイルド・コボルト』!」


 漆黒の人狼機と共に森を駆ける!

 

 四方八方から緑色のモンスター『ゴブリン』が飛び出してくるが問題ない。

 左腕に仕込まれたガトリングガンで打ち抜きまくり、掻い潜った奴らも蹴り飛ばしていく。


 もちろん出てくる魔物連中はゴブリンだけではない。

 俺たちを輸送してくれた昆虫型魔導機の原型、『ジェノサイド・ワーム』という巨大イモムシや食人植物の『マンイーター』など、様々なモンスターたちがウジャウジャ出てくる。

 

 だけど怯みなんてしないさ。今の俺には仲間がいるからな!


「頼むぞバレルッ、自慢の二丁拳銃で六時方向の敵を一掃してくれ!」


『あいよーっ!』


 俺の指示に応え、真っ赤な人型魔導機『バースト・オーガ』に乗ったバレルが派手に弾丸をブチ撒ける。

 マンイーターの群れが弾丸の雨に消え去った。

 

 だが安心してはいられない。俺は機体に搭載された通信用魔法具を使い、仲間たちに指示を飛ばしていく。


「今回の依頼は出来る限りの掃討戦だ。決して無理はすることなく、退路を維持しながら戦っていくぞ。

 バレルは引き続き後方より迫るモンスターを頼む。ブラウンとブルーノは左を、バイオレットとグリーンヒルは右方向の敵を任せた。絶対に囲まれないことを意識してくれ」


『了解っと。にしてもダルクの旦那、指示を出すのにずいぶん慣れてんなー? 騎士団にいたって時はかなりお偉いさんだったり?』


「まさか。ただ必死こいてるだけさ」


 バレルの問いかけを笑って誤魔化す。

 

 騎士団にいた時は下っ端もいいところだったが、今の俺には前世の記憶があるからな。

 ロボットモノのオンラインゲームでよく指示出しをしていたものだ。そのときの経験が活きている。


「いくぞみんなッ、この調子で森のモンスターどもを狩り尽くしてやろうッ!」


『おう!』


 こうして俺たちは魔力の続く限り暴れまくり、死骸の山を作り上げていったのだった。


 


 ◆ ◇ ◆



 ――『噂のコボルト乗り、またしても活躍! リヨーヌ地方の開拓に大きく前進!』


 そのような文字の踊る新聞紙を手に、レーテ・ジル・ド・ヴォーダンは立ち尽くしていた。

 瞳孔の開いた瞳はすでに乾燥しきっていた。

 紙面に載せられたダルクと仲間たちが肩を組んでいる写真を、彼は何時間もまばたきもせず見続けていたのだ。


「あのぉ、レーテ様……?」


 メイドのミストが声をかける。

 レーテのことを毛嫌いしている彼女だが、流石に老人が数時間も固まったままというのは放っておけない。

 まさか死んでるんじゃないかと思いながら肘を突っつく。


「おーい、レーテ様生きてますかー? 一体どうしちゃったんですか~……?」


 おそるおそる主人の身体を揺らすミスト。

 しかし一切反応がなく、まさか本当に死んでいるんじゃと思った――次の瞬間、


「ォッ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーッ! ダルクくんッ、ダルクくんッダルクくんッダルクくんッダルクくんッ! あぁダルクくんっ、彼がこんなに活躍しているのに、私は一体なんなんだーーーーーーーッ!?」


 突如、滝のような涙をブチ撒けながらレーテ伯爵は崩れ落ちた!

 思わず「ひえッ!?」と悲鳴を上げるミスト。しかしそんなメイドを放置し、レーテは包帯まみれの手で床を叩く。


「彼は立派に『英雄』としての道を駆け上がっているっ! このまま全てが順調にいけば、ダルクくんはきっと国中で知られる人物となるだろう。

 それに加えて、私はなんだ……!? どうしてこの写真の中で彼と肩を組んでいるのが、私ではないのだァアアッ!?」


 憎しみのままに床に落ちた新聞を殴るレーテ。

 ダルクの写っている部分には決して傷を付けず、彼の隣に立っているバレルを執拗に攻撃していく。

 包帯に包まれた手から鮮血が噴き出した。


「ちょっ、レーテ様なにやってるんですか!? 怪我してますよッ!?」


「あああああああああああッ! こんな怪我がなんだッ! 胸に感じる痛みに比べたら、こんなの全然痛くないっ!

 あぁ、本当に私はなんなんだ……。ダルクくんが活躍している一方で、私はただただ朽ちていくだけ……。多くの子供たちを犠牲にしただけの、老害として人生を終えていくのだぁ……!」


 子供のように泣き崩れるレーテ。

 彼はグチャグチャになったバレルの写真を心から羨ましそうに見る。


 ――どうしてダルクくんの隣にいるのが自分ではないのだ。

 ――どうして自分はダルクくんと同世代に生まれることが出来なかったのだろう。

 ――どうして自分は、素敵で愛しい彼と比べてこんなゴミみたいになってしまったのだろう。


「ははっ、ははは……最近よく、夢に見るのだ。若々しい姿になった私が、ダルクくんと共に仲良く戦場を駆ける光景を。

 だが現実はこうだ。私はもはや歩くことすら精一杯な傷病人の老人だ。ときおり、血を吐くようにもなってきた」


 噛み締めるように呟くレーテ。

 その姿があまりにも痛ましく、ミストはもう見ていられなかった。


「レーテ様、どうか元気を出してくださいっ!」


 必死で彼を励ますミスト。

 毛嫌いしていた相手だったが、今や少女の心は同情心でいっぱいだ。


 老いや病によってやりたいことが出来なくなる絶望は、いつか自分にも降りかかるものだろうから。

 いくら相手が嫌いだからってとてもじゃないが笑えない。


「アナタはダルク様のパートナーなのですよ? そんな姿は似合いませんっ!」

 

 ――そうして彼女が、『へこんでいる姿は似合わない』という意味合いでそんな言葉を放った時だ。

 レーテ・ジル・ド・ヴォーダンはハッとした顔で立ち上がった――!


「あっ、ああ……たしかにそうだッ! そうだともッ! 英雄の相棒である男が、こんな老体など似合うわけがないッ!」


「えっ、レーテ様……?」


 突如として元気を取り戻した彼だったが、その異様な雰囲気にミストは頬を引くつかせる。

 そんな彼女を無視し、レーテは決意に燃えた瞳でふらふらと歩きだした。


「ありがとうミスト、本当にキミの言う通りだ。こんな姿は似合わない……()()()()()()()()()()……ッ!

 私はダルクくんに見合う男に生まれ変わってみせる。たとえそれが、命を懸けた勝負になろうとも……!」


「は、はぁ!? レーテ様っ、どこに行くんですか!? 何をやらかすつもりなんですか!?」


 少女が叫ぶも男の足は止まらない。


 ――“あぁダルクくん、今すぐキミに相応しい男になるからね……ッ!”


 そう呟きながら歩むレーテ伯爵。

 その後ろ姿からは、情熱と狂気とたしかな『愛』が蜃気楼のごとく滲み出していた……!

 



バレル「なぜか全身が痛いんですけど……」


・次回、決戦――!


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[一言] じじぃがアヘりそうだなあ、 果たしてじじぃは相棒になれるんでしょうか…。 一波乱ありそうなので期待半分 怖いもの見たさ半分くらいの心持ちです。 次話が楽しみです!
[一言] どっかの女神みたいに性別すら超越しそうだな。 愛の前に障害はない。 一方的な愛だけど……
[良い点] ジジイのヤンデレはいらんが、美少女のヤンデレは大歓迎(男の娘でも可) つまり、俺達の言いたいことが分かりますね?
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