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7:メイドからの願い



 なんだかんだで伯爵に背中を流してもらった次の日。

 依頼を受けるために城を出ようとしていた俺に、「まってくださーいっ!」と声がかけられる。


「お待ちをダルク様っ、これお弁当です!」


 そう言って包みを差し出してきたのは、メイドのミストちゃんだ。

 まだ十代も前半といったところだろうか。背丈の小さな茶髪の女の子なのだが、ツンツンしていて気の強そうな風貌をしている。

 レーテ伯爵はもちろん、俺のことも避けているような印象だったが……、


「このお弁当、もしかして作ってきてくれたのか? 俺のことを嫌ってると思ったんだが……」


「ん……そりゃまぁアナタが屋敷に来た当初は、伯爵と同類のヤバい人だと思ってましたからね。英雄馬鹿がもう一人増えたのかと。

 でもアナタが帝国騎士との共闘に出向いている間、パパが教えてくれました。アナタがどうして伯爵の下を訪れたか」


「パパ?」


 はて、そりゃ一体誰のことか。

 首を捻る俺に「あ、言ってませんでしたっけ」とミストちゃんは呟く。


「わたし、街の整備長の娘なんですよ。ほら、ダインっていう」


「あーーーっ! あの人の!」


 俺の『ワイルド・コボルト』をしっかりと手入れして売り渡してくれたおっさんな。

 そういえば俺、あの人の好感度を稼ぐために『レーテ伯爵を止めるため、俺自身が英雄になることにした』って語ってたっけ。

 それをこの子が聞いたわけか。


「……正直言って、その手があったかって気分ですよ。わたし、いざとなったらレーテ伯爵をぶっ殺そうと思ってましたからね?」


「ぶっ殺すって……」


「パパからは情報収集だけしておけって言われてますけど、もしもレーテ伯爵が孤児以外にも手を出すようになったら即座にやってやるつもりでしたよ。

 ……でもあの人、ぶっ壊れてるようで一本筋が通ってるんですよねえ。彼が拾ってくる子供は、孤児の中でも餓死寸前の身寄りのない子ばかりなんです。だから街の住民は嫌悪感を覚えても対処には乗り出そうとしませんし、経営自体はむしろ優秀でムカつくんですよ」


 そうだったのか……。

 孤児だったら見境なく拉致ってるイメージだったが、最低限の弁えは出来ていたんだな。

 まぁどちらにせよ悪いことではあるんだが……。


「彼にお腹いっぱい食べさせてもらって、無理やりとはいえ『英雄になる』という夢を植え付けられたことで、死にかけていた頃より活き活きとするようになった子たちを何人も見てきました。

 それを思うとなかなか手が出せなくて……でもそんなとき」


「俺が現れたってわけか」


 ミストちゃんはこくりと頷く。


「パパは悲しそうに言ってました。かつてのレーテ伯爵は、街を守るために全力で戦っていたヒーローだったと。

 今ではすっかり変わり果ててしまったそうですが……ダルク様ならどうにかできるかもしれない。『英雄』としての姿を見せ続けることで、どうかあの人を真っ当な道に戻してあげてください」


 弁当箱を手渡しながら、俺を真っ直ぐに見上げてくるミストちゃん。


 ……正直言って重い頼みだ。レーテ伯爵は俺がロボを手に入れるためにつるむことにしただけの相手だしな。

 前世のゲームで知った時も、別に好きなキャラじゃなかったし。


 だけどまぁ……、


『ダルクくんっ、髪も洗ってあげよう!』


『今日の夕飯はダルクくんの好きなハンバーグを用意したよっ!』


『ダルクくんは魔導機がずいぶん好きみたいだね? 私も魔導機にはかなり詳しいんだ。眠くなるまで一緒に語ろうっ!』


 ――嫌いな相手、ではないかな。


「了解した。キミの父であるダインのためにも、その願い引き受けよう」


「はいっ! 頑張ってくださいね、ダルク様っ!」


 弁当と共に彼女の想いを受け取った。

 まぁ俺に出来ることなんて相変わらずロボで暴れることだけだが、それで満足してくれるならいいさ。

 

 そうと決まったらさっそく依頼を受けに行こう。

 俺はコボルトに乗り込むと、街まで走っていったのだった。



・ヒロイン系包帯グルグルサイコパスじじい、レーテ伯爵……!


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― 新着の感想 ―
[一言] ジジイはヒロインにはならないんだよっ‼︎
[良い点] 何故この作者はジジイのヒロイン化に特化しているのか……ただ胸がデカイだけのTSじゃないぶん、かなり良きキャラになってるw [一言] バトー博士を思い出す。 俺も嫌いじゃないぜっ。
[一言] 読者の性ぐせを歪ませようとしてきてるぞ、この作者様…
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