6:自由騎士誕生!
「おっ、おおおおッ、おかえりダルクくーーーーーーーーーんッ! やはりキミは素晴らしいッ! 英雄ポイント100点満点ッ!」
「おう、ただいま伯爵」
帝国騎士との共闘から一週間、俺はレーテ伯爵の城に帰還した。
本当はもう少し早く帰れたのだが、第七師団の者たちが俺のことを気に入ってくれたらしく、ちょこちょことモンスターを狩ったり模擬戦なんかをしてたんだよなぁ。
「キミの活躍はこちらにも届いているよ。さぁさぁダルクくんっ、ご飯にしよう! それともお風呂が先かな!? 私が背中を流してあげよう!」
いやいや一人で入れるからいいわ。
というか嬉しそうだなー伯爵。全身包帯まみれでミイラみたいな見た目してるのにピョンピョン跳ねてやがる。
そんな無茶をしてたら……、
「ッ、ガハッ、ゲホッ!?」
「って大丈夫か伯爵!?」
唐突にレーテ伯爵は血を吐いた。
そう、『敵キャラクター』であるレーテ・ジル・ド・ヴォーダンは死にかけの身だ。
ぶっちゃけるとゲーム中でも放っておいたら死亡するのである。
「うぅ……すまないね。私自身も英雄を目指してかつては暴れ回っていたのだが、とある魔導機乗りに敗北してこのザマだ。全身は焼けて内臓もいくつか潰れ、歩くのも精いっぱいな身体になってしまったよ……」
気恥ずかしそうに彼は笑う。
この世界に酷似したゲームはオープンワールド形式だった。
だだっ広い世界を主人公がロボと旅をするのだ。
そこで出てくるレーテ伯爵は、すでに本編が開始したときには寝たきりとなっているキャラだった。
まぁ悪癖はまったく変わってないけどな。彼が生きている限り、暴走した少年兵がポコポコとフィールドに現れる面倒な仕様となっている。
だが必ず討伐しなければいけないわけではなく、終盤まで放置すると勝手に消えるのだ。
うーん……悪か正義かでいえばもちろんコイツは悪なんだが、今は俺のスポンサーになってくれてるからなぁ。
高いパーツも英雄ポイントを貯めたら買ってくれるそうだし、帝国騎士とコネが持てたのもこの人の権力があったからこそだからな、今死なれるのは困る。
少年兵も、俺が現れてからは生み出してないみたいだし。
「……元気出せよ、伯爵。英雄ってやつを生み出したいんだろう?」
「ダルクくん……ありがとう。私の死を願わないのは、きっと世界でキミだけだよ。
――さてっ、それでは話を変えようか。キミ宛てに、発行を頼んでいた魔導機商会からの『自由騎士ライセンス』が届いているよ」
そう言って免許証のようなものを渡してくるレーテ伯爵。
これこそ、ファンタジー世界でいうところの冒険者の証みたいなものだ。
魔導機を作るにはモンスターの死体がいる。
そこで製造元である魔導機商会は、野良の魔導機乗りたちにモンスター討伐の依頼を出すことにした。
国に所属せずそうした依頼で食いつないでいる者たちを、『自由騎士』と呼ぶわけだ。
「通常ならFランク騎士から始まるところだけど、キミは王国騎士であったことや先週の大活躍を評価して、Cランク騎士から開始していいとのことだ。
Cランクともなれば歯ごたえのある依頼がたくさんあるから、楽しみにしておくといい」
「あぁ、明日からさっそく受けさせてもらうよ」
コボルトの操作にも慣れてきたからな。
今よりももっと色々カスタマイズして、その姿をたくさんの魔導機乗りたちに見せつけてやるのが楽しみだ。
純粋にバトル自体も楽しいしな。この世界はロボオタにとって天国だぜ。
「じゃ、俺は風呂に入ってくるから」
「私が背中を流してあげようッ!」
「いやそれはいいから」
最悪なはずの敵キャラとそんなやり取りをしつつ、夜は更けていくのだった。
魔導機商会「ちなみに依頼で壊れた魔導機はウチで修理します!(※ 有 料 )」
ダルク「上手い商売してんなぁ…」
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