4:人狼蹂躙
俺の目的は、ロボに乗って活躍しまくることだ。
ロボオタとしてのセンスでカスタムした機体で暴れまくり、みんなに見せつけてやるつもりだ。
というわけで、
「――自分はダルクと申します。フランソワーズ帝国騎士団の皆さま、本日はよろしくお願いします!」
白い軍服を纏った者たちに敬礼する。
彼らこそ、このフランソワーズ帝国を守護する正統な騎士たちだ。
今日もモンスターの群れが王都を目指して進撃していると聞き付け、迎え撃つべく森林で待機しているところだった。
んでんでんで、俺はレーテ伯爵の権力パワーでその防衛作戦に参加させてもらったわけだ。
帝国騎士たちと一緒に活躍すれば噂は大きく広がるだろうからなぁ。
ちょうど彼らの機体は白で統一されてるし、俺の黒いコボルトは目立ちまくることだろう。
……シャツについた醤油みたいでちょっとアレな目立ち方だけどな。
そんなことを考えていた時だ。
赤髪の女がニヤリと笑いながら前に出てきた。
「へ~綺麗な敬礼じゃない。あのトンチキ伯爵がよこした増援だっていうからどんなヤツかと思えば、ちゃんと礼儀は弁えているようねぇ」
俺のことをしげしげと見つめてくる赤髪の美女。
ってコイツはたしか……、
「私の名はオルトリンデ。この帝国騎士団・第七師団の団長サマよ」
あーそうだ、彼女はオルトリンデといってゲームの『敵キャラ』の一人だったはずだ。
腕は立つけどかなりの戦闘狂で、自分の信奉者たちである第七師団を引き連れて国を離反した人物だ。
それで盗賊をやったり好き勝手していたところ、主人公に狩られるという流れだったか。
なるほど……彼女が帝国騎士をやっているってことは、ゲーム本編が始まるまでしばらく時間があるってことか。
「んでダルクだっけ。言っておくけど、アタシたちの足を引っ張ったらぶっ殺すからね?」
「ハッ、その時は容赦なくぶっ殺してください!」
「あははっ、いい返事するじゃない。気に入ったわ。――さぁて、そんなことを言っていたら敵さんが来ちゃったみたいよ?」
少し離れた丘の向こうから土煙が上がるのが見えた。
よく目を凝らすと、5メートルほどの豚顔のモンスター・トロールの群れがこちらに走ってくるのがわかった。
「さぁ野郎どもッ、お仕事の時間よー!」
『うぉおおおおおーーーーーッ!』
魔導機に乗り込んでいく帝国騎士たち。
彼らが乗っているのはたしか『ブレイブ・リザードマン』と呼ばれる竜人型の高級機体だったか。
オルトリンデの隊長機に続き、ブースターを噴かせてトロールの群れに突撃していく。
「さて、俺たちもやるぞ相棒ッ!」
『グルルルルッ!』
俺の言葉に漆黒の人狼が唸りを上げた。
胸の中心にあるコクピットに乗り込み、魔導機と一つになっていく。
「運動感覚、および魔力回路の接続完了。各種動作に異常なしっと。――じゃあ行くかぁ、『ワイルド・コボルト』!」
足裏のダッシュローラーを猛回転させ、俺たちは一気に駆け出した。
伯爵と整備長の用意してくれた最高級装備は伊達じゃない。先に出撃していた帝国騎士たちを抜き去り、一番にトロールの群れに食らいつく。
そして大剣を振り上げると、挨拶代わりに先頭の一体をぶった斬った!
「さぁ、まだまだいくぞーッ!」
自由自在に大剣を振るい、さらに一体、もう一体と仕留めていく。
前世の記憶を取り戻した俺は、明らかに以前よりも機体の操作が上手くなっていた。
それもそのはず。魔導機を動かすために一番大切なのはイメージ力だ。
「前世では山ほどロボットアニメを見てきたんだ。色んなロボの動く姿が、俺の脳裏に沁みついている」
それらを思い起こしながら機体の動きに反映させる。
剣術の得意なロボの動きを真似て敵を斬り裂き、スピード特化のロボの足さばきを真似て縦横無尽に地を駆けた。
たちまち周囲を埋め尽くしていくトロールたちの死体。
その中心で血を浴びながら、俺は『英雄』らしく帝国騎士たちに吼え上げる。
「さぁ騎士たちよ、俺に続けッ! 国の未来を守るために!」
そう言って大剣を掲げると、リザードマンたちのコクピットから歓声が上がるのが聞こえてきた。
・次回、他者視点いきます!
【読者の皆様へのお願い】
↓↓↓少しでも「面白い」、「先が読みたい」と感じましたら、最後にブックマークと評価をお願いしますっ! 書籍化に繋がります!




