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3:漆黒の人狼機



「さぁダルク、魔導機を選びな。どの機体だろうがバッチリ整備して渡してやるからよ!」


「さぁダルクくんっ、英雄ポイント200越えのキミには好きなのを買ってあげるからね~!」


 両手に花……ではなく厳ついオッサンとサイコパスじいさんの地獄みたいな状態で、いよいよ俺は自分の機体を選ぶことになった。

 さてどうしようかな。とりあえず高いのを買えばそれで正解ってわけじゃないぞ。


 魔導機というのは、大型モンスターの肉体を素体として生み出されたサイボーグみたいなものだ。

 電力ではなく、パイロットの身体に秘められた『魔力』と呼ばれるエネルギーを食らって動くようになっている。


「伯爵に整備長、ちょっと一人で見て回ってくるから待っていてくれ」


「「えーコイツとー?」」


 お互いを嫌そうな目で見つめ合うオッサンとじいさん。

 喧嘩とかするなよ?


「さーて、よく考えないとなぁ……デカくて高機動で高出力な機体ほど、魔力を多く消費するわけだし」


 展示された魔動機たちを眺めながら歩いていく。

 機体を選ぶときはパイロットの魔力量に応じたものを選ばないといけない。

 これが切れると気絶したり、最悪の場合は死んじゃうからな。

 

 ちなみに魔力量はほぼ生まれつきで決まるそうだが、俺はわりと高いほうらしい。

 まぁそうじゃなかったら村人の身で王国騎士団には入れなかっただろう。

 あそこでコキ使われまくったおかげで体力もあるから、高機動で身体に負荷がかかる機体も問題なく選べそうだ。


「だけど俺の場合、戦場で長く活躍しまくってみんなに自分のロボを見せつけてやりたいんだよなぁ。元プラモデラーとしての血が騒ぐ……」


 ゆえに継戦能力も考えないといけないだろう。

 短期決戦型の機体というのもロマンがあるが、すぐに魔力が切れて棒立ちになっちゃうのはダサいからな~。


「そんで出来れば人型で、素体になったモンスターが大人しい機体がいいなぁ。この世界の操縦方法って運動感覚をリンクさせるヤツだし、元が生命体なだけあって暴走する可能性もあるしな」


 要するになんとかゲリオンみたいなものだ。

 ブースターやミサイルを増設したらレバーを引いたりボタンを押したりしなくちゃいけなくなるが、四肢を動かすくらいならイメージだけで可能なのだ。


 まぁその分、魔導機が暴走し始めたら止める手段がなくなるんだけどな。

 気性の荒いモンスターを素体とした魔導機だと、強いダメージを受けた時なんかに制御不能になることがある。

 そうなったらもうお手上げだ。魔力を食い尽くされる前に止まってくれるよう神頼みするしかない。


「さて……燃費が良くてそこそこの機動力とパワーがあって、人型で大人しい機体。となるとコレが一番か」


 そう呟きながら、俺は一体の魔導機の前で立ち止まった。

 機体名『ワイルド・コボルト』。5メートルほどの人狼型魔導機だ。

 狼男に漆黒のフルアーマーを纏わせたような姿をしており、地味だけどなかなかカッコいい見た目をしている。


 ちなみに尻尾は改造されるときに切除されている。

 付いてても特に意味がないかららしい。可哀想。


「おいダルク、そいつでいいのかよ? 『ワイルド・コボルト』なんてすげーありきたりなやつじゃねえか」


 伯爵と共にダイン整備長が近づいてきた。


 彼の言う通り、『ワイルド・コボルト』はロボットアニメの量産機のような存在だ。

 操縦者によく従ってくれるし、素材元となるコボルトは弱くて捕獲も容易だから値段も安い。

 

「ダルクくん、もっと高級な機体をねだってくれてもいいのだよ……?」


 レーテ伯爵もこの選択に首を捻ってきた。

 しかし俺は自分の意志を貫き通す。


「いやいや。ありきたりな機体だからこそ、一級品どもを圧倒するような活躍をしたら『英雄』になれるってもんだろ。なぁ伯爵、そっちのほうがロマンがあると思わないか?」


「ッッッ、ロマンッ! あぁ、たしかに言われてみればそうだともッ!

 そうだそうだ……一部の恵まれた人間だけではなく、孤児だって英雄になって欲しいと願ったからこそ、私は彼らを拉致していたんだ。そちらのほうがロマンがあるから……その精神を忘れていたよ……!」


 俺の手を取って「やはりキミは最高だッ、英雄ポイント50点!」と叫ぶサイコパス伯爵。

 とりあえず孤児を拉致するのはマジでもうやめろ。


「もちろん伯爵には甘えさせてもらうさ。機体を安く済ませた分、装備品はしっかりとしたモノを買わせてほしい。

 整備長。防弾性を上げるラミネート加工に追加の魔導ブースター、それと足裏にダッシュローラーも付けて加速力を上げてくれ。あとはアダマンタイト製の大剣と、上腕部に牽制用のガトリングガンを装備させてほしい」


「おぅ合点だッ!」


 とりあえずそんなところだな。

 あまりにもいじりすぎると操作が難しくなるし、慣れるまではこれで頑張っていこう。


「というわけで、これからよろしくな、『ワイルド・コボルト』」

 

 機体の足をポンポンと叩く。

 鎧を纏った人狼の口から、『グルル……』と応えるような声が聞こえた気がした。


 


・ワイルドコボルトくんの見た目のイメージは、だいたい狂戦士の鎧に飲み込まれた剣士さんみたいな感じです。

 ちなみに魔導機は成長することがあります(ロボのくせに…)。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 例えがわかりやすいw [一言] 破天荒な作風だけかと思っていたら、そんなことはなかったぜ! いろいろ読んでますけど、どれも面白いところがあって良き。 ただ、ポイントが伸びないとエタるのかも…
[良い点] ほほう。 何とかゲリヲンとは面白くなりそう。 シンクロ率みたいな隠れパラメータがあるかも。 外見が狂戦士の鎧のあの人とはカッコいいですよね。 進化ってのもいいですな〜
[一言] (o`・∀・´)つ★★★★★
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