表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/15

2:悲しいさだめを背負った男(という設定)




 レーテ伯爵を味方につけた俺は、さっそく彼と共に街の『魔導機商会』を訪れていた。

 魔導機の開発と販売を一手に行っている組織で、国を問わず世界中に手を広げているらしい。

 ハンバーガー売ってる企業みたいなもんか。


 さて、そうしていくつもの魔導機が並んだ展示用ホールに入っていったわけだが……、


「うわ、あの伯爵また来たぞ……」

「今度は誰が犠牲になるのかしら……」

「子供を隠せっ、英雄にされるぞ!」


 彼を見た瞬間にお客さんたちがざわめく。


 ……うわぁ~流石はゲームの敵キャラだ、みんなからめっちゃ警戒されてますね。

 一応この人、ここら一帯の領主なはずなんだけど……。


「うぅ、私は悲しいよダルクくん。孤児たちに夢とロボを与えているだけなのに、どうしてこんなに叩かれるんだろうか?」


 いやそりゃ普通に嫌われるだろ。

 前世で言うなら洗脳して銃を与えているようなものだからな? めっちゃ怖いわそんなやつ。


 まぁそんなことを言うわけにはいかないので、俺は彼の肩を優しく叩いた。


「仕方ありませんよ伯爵。――英雄になることは、痛みを伴ういばらの道です。多くの方には理解されないことでしょう」


「そんなっ、ダルクくん……」


「しかしッ、自分は違います! 苦しくても辛くても、試練を乗り越えた先に栄光があると信じている。だからこそ断言しましょう、アナタの行いは間違っていないと!」


 そう言い放つと、レーテ伯爵の目から再び涙がボタボタと流れた。


「あっ、ありがとうダルクくんッ! キミの優しさに英雄ポイント100点だッ! これで200点貯まったから、その分お金もいっぱい出してあげるね!」


 わーいやったぜ!

 

 なんというかアレだな、チョロいおっさんを騙してる風俗嬢みたいな気分になってきたな。

 まぁいいか、ロボで活躍するためにもこれからもこの人を喜ばせてやろう。

 望まれるままに、『英雄』らしく振る舞ってな。


「ちなみに10点貯まった時点で私にタメ口をきける権利をゲットしているよ!」


「いや安すぎだろタメ口の権利……。アナタは俺の相棒(※サイフ)なんだから、もっと自分を大事にしてくれ」


「あ、相棒ッ!? んほぉーーーッ!」


 嬉しそうに鳴き声を上げるサイコパスおじいちゃん。

 今まで嫌われまくってきたためかなりチョロくなっているようだ。


 そうして俺がレーテ伯爵を喜ばせている時だった。「おい」というぶっきらぼうな声が背中にかけられた。


「アンタ、そこの頭のおかしい伯爵の従者かなにかか? もうガキの棺桶を用意するのはうんざりなんだが……」


 手にしたスパナで自分の肩を叩くオッサン。恰好から見るに、ここの整備士みたいだ。

 なるほどなるほど……整備士に嫌われるわけにはいかないな。

 よし、じゃあこうしよう。


「俺の名はダルク。アナタは?」


「オ、オレぁ整備士のダインだ」


「そうか。ならダイン、少し話がある」


 そう言って俺は伯爵から距離を置き、ダインの耳元にそっと顔を近づけた。


「なっ、なんだ!?」


「――俺は伯爵の従者ではない。彼の行いを、止めたいと思っている者だ」


「っ!?」


 俺の言葉に彼の顔色が変わる。そこにさらに畳みかける。


「倫理を説いても無駄だろう。だが暗殺も駄目だ。賑わっている街の状態を見るに、経営だけはきちんと行っているようだからな、暴力で排除すれば混乱が生まれる。

 ――ならば話は簡単だ。俺が英雄となって彼の欲望を満足させる。そうすれば、レーテ伯爵も孤児を戦地に送るような真似はやめてくれるだろう」


「なっ……要するにアンタ、伯爵を止めるために犠牲になるつもりか!? 英雄になるってことはつまり、いくつもの過酷な戦場を乗り越えないといけなくなるんだぞ……!?」


 嫌悪の目から一転し、こちらを心配した目で見てくるダイン。

 頑固親父のように見えてわりと人情家なようだ。こりゃー好都合だな。


 俺はフッと笑いつつも少しだけ眉を下げて、『運命を受け入れた者の悲しい顔』っぽい表情を作った。


「臆病なせいでとある騎士団を追われた身でな。本当はもう戦場に出るなんて御免なんだが……でも仕方ないだろう。これは、誰かがやらないといけない役目なんだ」


「ッッッ……!」


 そんな俺の一言に、ダインを唇がプルプルと震えた。

 そして俺の肩を強く掴むと、熱を帯びた目でこう言い放つ。


「安心しろッ、ダルクッ! この整備長のダイン様が、おまえに最高の機体を用意してやるッ! だから絶対に生きて英雄になりやがれーッ!」


 そう叫びながらダインはわんわんと男泣きをするのだった。


 ――よし、整備士からの信頼ゲットだぜッ!

 これで俺の機体をいじる時にはモチベーションマックスで作業してくれることだろう。

 『サイコパス伯爵の部下』のロボをいじるのと、『英雄になるさだめを背負った悲しい男』の機体をいじるのじゃ情熱が違うだろうからな。


 んじゃっ、さっそく魔導機を選ばせてもらおーっと!


  


・じいさんとオッサンを騙して最高の機体を最速で手に入れる風俗嬢ムーブ……!


【読者の皆様へのお願い】

 ↓少しでも「面白い」、「先が読みたい」と感じましたら、最後にブックマークと評価をお願いしますっ! 書籍化に繋がります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 風俗嬢ムーブ、風俗にお詳しいのですねッ!
[良い点] >「子供を隠せっ、英雄にされるぞ!」 セリフがキレッキレッすぎw
[一言] ロボの設定でダン〇インかと思ったんですが、むせる方向で行くんですねw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ