14:気合×気合=!?
――自分の機体が進化したと知ってから二時間後、俺の体調は万全になったッ!
ついさっきまでは起き上がることもしんどかったが、もはや倦怠感など皆無だ! そんなものは情熱で焼き尽くしたッ!
最初はロボが進化するなんてそんなの知らないって混乱したけど、よく考えたらコレめっちゃ燃えるシチュエーションじゃねぇか!
激戦を乗り越えたことによるパワーアップ……ロボ好きにとっては堪らない展開だ!
というわけで工場に突撃じゃーい!
「整備長ッ、俺のコボルトはどこだッ!?」
「うぉおおっ、ダルクッ!? おまっ、魔力回路がイカレて一か月は寝たきりなんじゃ……」
「気合で治した!」
「気合で!?」
驚いた顔をする整備長のダイン。
レーテ伯爵の機体『クリムゾン・ハーピィ』の整備も引き受けており、今では彼(?)の正体を知る数少ない人物である。
「いやダルク、気分の問題でどうにかなることじゃないだろ……。伯爵の野郎もオメェのピンチを助けるために頭蓋骨ハメた瞬間飛び出していったらしいしよぉ……」
「フッ、『戦友の窮地に駆けつけるために病み上がりの身体を押していく』展開は燃えるシチュエーションの一つだからな。俺の戦友ならそれくらいするだろ」
「もうやだこのバカップル……」
はぁ~と溜め息を吐く整備長。アイツとはカップルじゃなくてダチなんだが?
ってそれは別にいいとして、今は進化したっていう『ワイルド・コボルト』だ!
「で、俺の相棒は!?」
「おう、この通りだから見てみな」
そう言ってダインが魔導式昇降機のスイッチを押す。
すると天井の一部が音を立てて下がり始め、筋肉を剥き出しにした人狼機が俺の前に姿を現した――!
「これは……」
俺は半月ぶりに再会した相棒を見て驚く。
肉付きが良くなった……といえばいいのだろうか。
配線交じりの手足が、明らかに以前よりもたくましくなっている。
魔導機とはゾンビみたいなものだ。
捕獲したモンスターを一度殺して内臓や脳のほとんどを取っ払い、人間が制御できる機械として生まれ変わらせた存在である。そのため、もうその時点で身体が成長するなんてありえない。
だけどこれはどういうことだ?
見れば顔付きも強壮になっている気がする。
装甲が外されているから見える牙だって、まるで刃のように鋭く長い。
「整備長、一体なにが……」
「オレだってよくわかんねーよ。ただ色々と文献をあさってみた結果、百年以上前の最初期の魔導機にはまれにこうした現象が起きていたらしい」
――整備長の話だと、データの少なかった当時はどこまでモンスターの脳を切除していいかわからず、感情や記憶を多く残した暴走しやすい魔導機を作り上げてしまうことが多かったとか。
そうしたモノの多くは暴れ回ってあっという間に壊れてしまうのだが、極一部の長く戦い続けることが出来た魔導機は、運用当初よりもなぜかスペックに上昇傾向がみられたとか。
「たしかオメェ、暴走状態になってでも一緒に戦ったって話だろ? それに普段から話しかけたりしてるとか」
「あぁ。よくコボルトの側でご飯食べることもあるしコボルトの側で寝ることもあるしコボルトに絵本を読ませてやることもあるな」
「って愛しすぎだろコイツのこと!? まったく呆れちまうが……原因はそれかもしれねぇな。普段からわずかに残ったコボルトの自我を活性化させていたことで、肉体にも変化が起きたのかもしれん。
じゃあ何で野生のコボルトはこんな風にたくましくならないのかって話にもなるが、そこは――」
「わかってるさ。俺のコボルトが、めちゃくちゃ気合のあるヤツだったんだろ?」
俺の予想に、整備長は呆れながらも頷いた。
「はぁ~、そうだよ……馬鹿らしいことにその可能性が一番高い。本来は気弱でおとなしいコボルトだが、どうやらそいつは群れの中でもじゃじゃ馬だったらしい。
んで、そんな暴れん坊にオメェみたいな燃え滾ってるヤツが乗り込んだことで、相性良すぎて『先祖返り』みたいな現象が起きたのかもな。コボルトの祖先は『ガルム』っていう凶悪な狼モンスターだったっていうし」
「へぇ、ガルムか……」
ならば、今の相棒の名前は『ワイルド・コボルト』あらため『ワイルド・コボルトガルム』ってところか?
……なんか長いなぁ。呼ぶときはこれまで通りコボルトでいいや。
「これからもよろしくな、コボルト」
『ガフゥー!』
元気そうに返事をする俺の相棒。
それが嬉しくて、ついついたくましくなった手足をなでなでしてしまう。
そんな俺の様子を見て、整備長のダインが「まったく」と呟いた。
「よぉダルク、最初はオメェのこと心配してたんだぜ? レーテのやつを止めるために魔導機に乗ることにしたっていうから、てっきり嫌々やってるんだと思ったら何だよ。オメェ魔導機のこと大好きじゃねーか」
「そりゃ男なんだから当然だろ。もしかして、心配して損したとか思ってたり?」
「ハッ――馬鹿言え、ホッとしてんだよこの野郎! オレもロボが大好きで整備士やってんだからなぁ。辛気臭そうなヤツより、楽しく乗ってくれそうなヤツの機体をいじるほうが気分がいいや!」
そう言って彼はニヘッと笑うと、俺の背中を強く叩いてくるのだった。
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