13:進化
――魔導機乗りの盗賊集団『ヨルムンガンド』の襲撃から半月。
俺は魔力を無理やり絞り出した影響により、レーテの城でベッドから動けない日々を送っていた。
まぁ不便なことは特にないんだけどな~。
「はっはっはっは! ほらダルクくんっ、どんどん食べたまえっ! あーんだ、あーん!」
そう言ってスプーンを向けてくる銀髪の美少女。
この通り、俺は生まれ変わったレーテ伯爵に甲斐甲斐しく世話をされていた。
「大丈夫だってのレーテ、食事くらいは一人で摂れるから」
「まぁまぁいいじゃないか。『ヴォーダンの英雄』の介護を出来る機会なんて、滅多にないんだから!」
上機嫌に微笑むレーテ。
瞳孔ガン開きで病んだ瞳から放つ敬意の視線が、三割増しで上がっている気がする。
そう、あれから俺は領地ヴォーダンの領民たちから称えられることとなった。
敵の魔導機乗りたちを一手に引き受け、多くの者たちが避難する時間を作った英雄として認められたのである。
「まったく、街の連中も現金なものだよな。これまではレーテの援助を受けている者ってことで、ちょっと引かれてたのに……」
魔導機乗り界隈でそこそこ名を上げていた俺だが、この領地内の評価は微妙だったらしい。
まぁスポンサーが子供拉致って洗脳しまくったヤベー伯爵なんだから仕方ないっちゃ仕方ないけどな。
でも今回の一件でそれに対する忌避感も薄れたようだ。
そして何より、悪いイメージの根源であるレーテ伯爵が死亡したことになったからな。
「よかったのか、レーテ? 自分のことを亡き者にしちゃって」
「いいんだよダルクくん。スポンサーが汚名まみれなままでは、キミにも迷惑をかけてしまう。ここは心機一転し、『レーテ伯爵の遠縁の娘』として頑張るさ」
そう言って少し寂しげに笑う新領主様。
皮肉な話だが、評価が最低値だったかつてとは違い、今の伯爵の人気はどえらいことになっている。
なにせ街の窮地に颯爽と現れ、俺と共に敵を一掃するというカッコよすぎる登場の仕方をしたんだからな。
さらに見た目も十代半ばの銀髪美少女で、領地の復興も手慣れているかのようにテキパキ進める有能領主ときたら、人気が出ないわけがない。
かくして爵位の継承も無事に終了し、新たな領主『レーテンシア・ジル・ド・ヴォーダン』が誕生することになったのだった。
「ありがとう、ダルクくん。枯れていくばかりだった私の人生に、キミは光を与えてくれた」
俺の手を強く握るレーテ。彼(?)は顔を近づけてくると、潤んだ瞳で俺を見つめる。
「ずっと寝たきりだった身体でね、魔導機を自在に操れるようになるにはしばらく時間がかかりそうだが、これでいつかキミと一緒に戦うことが出来る……っ!
それだけが、それだけが私の願いだったんだ……っ!」
「レーテ……」
静かに涙を流すレーテ。俺はそんな彼(?)を優しく抱き締めた。
――痛いほどに気持ちはわかるさ。
“戦友と共に鉄火場を駆ける”。それは男にとってロマンの一つだからな。
「今まで寂しい思いをさせちまったな。でももう大丈夫だ……これからはずっと一緒だぞ、戦友」
「っ、ああっ! また一緒に戦おう、戦友よっ!」
そうして男同士の熱い抱擁を交わし合う俺たち。
と、その時。ドアがバシーンッと開けられて、ちびメイドのミストちゃんが飛び込んできた。
「ちょっとレーテ伯爵、アナタも病み上がりなんですからダルク様の世話ばかりしてないで休憩を……って、何やってるんですかアナタたちーーーーーッ!? は、ハレンチですっ!」
「むっ、何がハレンチなのだねミストよ? 私とダルクくんは男同士だぞ?」
「いやいやいやいや今は女の子じゃないですか伯爵ッ! それなのに昨日もダルク様をお風呂に入れてあげたり――っ!」
ギャーギャー騒ぐミストちゃんとよくわからなそうに首を傾げるレーテ。
はたから見ると天然ボケしたお嬢様が侍女に怒られているみたいで微笑ましい。
というか、
「そうだミストちゃん。俺の『ワイルド・コボルト』はあれからどんな風になった?」
そう問いかけるとミストちゃんは騒ぐのをやめ、難しい顔をし始めた。
そして「もうコボルトはいません……」と呟き――って、えッ!?
「ま、まさか壊れすぎて死んだのか!?」
「あっ、いえ、そういうわけではなくてですね! まだ整備長のパパからは伝えないよう言われてますが、ちょっと意味の分からない現象が起きてですね……っ!」
意味の分からない現象!?
いったい俺の相棒に何があったのかと問い詰めると、ミストちゃんは観念したように口を開いた。
「実はあのコボルトさん――なんか、進化しちゃったんですよねぇ」
「は?」
え、ロボが……進化?
予想外の言葉に、俺はしばらく固まるのだった。
・コボルトモン、進化――!
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