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10:襲撃




「――レーテ伯爵が、帰ってこない?」


 依頼に出てから数日後、ヴォーダン領の城に戻ってきた時のことだ。

 メイドのミストちゃんが青い顔で俺に話してくれた。


「えぇ……ダルク様がやってきてから、あの人様子がおかしかったんです。ときおり大きく溜め息を吐いたり、包帯を取って自分のシワシワの手を悲しそうに撫でたり。

 そしてこの前……ダルク様がまた大活躍をされたと知った日、狂ったように飛び出していってしまって」


 ってなんだそりゃ、何がどうなってるんだよ。

 

 レーテ・ジル・ド・ヴォーダンが失踪するなんてイベントは知らない。そんなのゲームにはなかったはずだ。

 だからこれは間違いなく、俺が介入したことで起きた変化となる。


「もしかしたらあの人、自殺してしまったのかもしれません。

 ダルクさんと一緒に戦えないことを悔いていましたし、こんな身体は彼に似合わないとか言っていて……」


「なんだそりゃっ、それで生まれ変わりでも試そうとしたってか!?」


 ……レーテという男は決して善良なキャラじゃない。

 何人もの孤児をおかしくさせてきた立派な悪役だ。


 だけど、流石にこんな末路は悲しすぎる!

 老いて傷付いた自分の身体を恥じ、俺と一緒に戦えるような来世を願って死んだなんて……そんなのあるかよ……!


「あの人のことは好きじゃないが、だけど決して嫌いなわけじゃない。だってアイツは、夜が更けるまで語り合ったこともある『ロボ好き仲間』だからな」


「ダルク様……」


「なぁミストちゃん、捜索隊は出しているんだよな? 何か手掛かりは!?」


 彼女の肩を掴んで問うが、ミストちゃんは残念そうに首を横に振るった。


「街の人たちが探し回ってくれていますが、遺品の一つも見つからず……。それにみなさん、あまりやる気が……」


「クソッ、こんな時に人望が足を引っ張るのかよ……!」


 レーテ伯爵は孤児を拉致する悪徳貴族と見なされている。

 経営自体はちゃんとやっていたし領民たちに実害があったわけじゃないらしいが、本気になって探す気なんてそりゃ起きないだろうな。

 悪役キャラの現実を知ってしまった気がする。


「……でも、俺にとっては大切な仲間だ。機体をプレゼントしてくれた人間を、無下になんて出来るか」


 こうなったら俺も『ワイルド・コボルト』に乗ってそこらじゅうを探し回ってやる。

 連戦の影響で関節部などがくたびれているが、走り回るくらいなら問題ない。


 そうして俺が機体に飛び乗った、その時。


「――おーい、ミストーッ! ダルクの坊主ーッ!」


 俺たちの下に向かって、魔導機商会で整備屋をやっているダインが走ってきた。

 って顔面真っ青じゃねえか、何があったんだよ!?


「パパッ、どうしたんですか!?」


 俺の代わりに娘のミストちゃんが問う。

 するとダインは息を切らしながら、


「しゅ、襲撃だッ! 魔導機乗りの集団が、領主のいない隙を突いて街を襲ってきやがった!」


「なっ!?」


 おいおいおいおい……なんてことをしてくれるんだよ!


 魔導機を使ってモンスターと戦っているこの世界だが、当然ながら人を傷付けるために機体に乗っている奴らはいる。

 村を焼き払って金品を奪ったりだとか、単純に人をぶっ殺すのが好きな連中とかな。


 俺が絶句する中、ダインは大きく肩を落とした。


「アイツら、魔導機商会の整備場から襲いやがった。ウチは機体を置かせてやるサービスもやってるからな……おかげでほとんどのやつが戦えなくなっちまった」


「そりゃまずいな……」


 機体を置くための土地を持たない貧乏な魔導機乗りも多い。

 そんな連中を助けるサービスをやっていることを逆手に、敵は抵抗戦力を一気に奪っていきやがったわけか。


 クソッ、状況はかなり悪いな。指示を出すべきレーテ伯爵もいないし、どれだけの領民が被害に合うかわかったもんじゃないぞ!


「……わかった、俺が例の集団を倒しに行く」


「ってダルクッ、オメェ依頼から戻ってきたばっかだろ!? 機体もボロボロじゃねえか!」


 もちろんそんなことはわかっている。

 だけどたくさんの人間を見殺しにするほど男として腐ってはいないし――そして何より、燃えるじゃないか!

 俺が前世から憧れ続けてきたロボットアニメの主人公たちみたいな状況だ。

 ここから逆転できたらカッコいいだろ!


「ダイン、アンタは娘のミストちゃんを連れて街の外に逃げてくれ」


 万が一ってこともあるからな。

 例の集団が街を荒らし終えたら、高台にあるこの古城も物色しにやってくることだろう。


「っ、ダルクの坊主……」


「そんな顔すんなって。俺は絶対、生きて戻ってくるからよ」


 不安そうな表情をするオッサンに笑顔で頷く。


 そうして俺は機体に魔力を巡らせると、煙の昇り始めた街に駆け出していったのだった――!

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 善戦するも、機体のダメージがたたってピンチになる主人公。 そこに駆けつける謎の助っ人!その正体は…!?
[良い点] 第10話到達、おめでとうございます! [気になる点] さあ、ダルクは街を守れるか!? [一言] 続きも楽しみにしています!
[一言] シリアスだ!!!!! めっちゃシリアスだ!!!!! こんな話も書けるんですね!!!!! SUGOI!!!!!
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