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2028危険なラッパー

作者: さきら天悟
掲載日:2018/05/23

2018年、ラップは世界を席巻している。

いつの間にか、日本においても。

数年前、ラップが音楽であることに違和感があった日本人もだ。

実はこうなることを本能的に知っていたかのように、

大人は、不良の音楽とレッテルを貼り、

ラップが広がることを抗っていた。

が、無駄だった。


心に響くリズムと言霊、

それは今まで凝り固まった、常識の塊を打ち壊していった。

まるで、滴り落ちる雨の雫が、

岩に沁み、亀裂をもたらし、砕くように。



しかし、しかし、それは序曲だった。

あるラッパーが世界を震撼させたのだった。

2028年のこと。

あらゆるヒットチャートは彼の曲で埋め尽くされた。

それ以外の曲も彼がプロデュースしたり、

作詞、アレンジなどに何らか関わっていた。


彼は言葉の天才だった。


国会 17連休 瞑想中

視界 真っ暗政治 迷走中


韻を踏むだけでなく、

同義語も使いこなした。

また即興で575調にも整えた。


瞑想と迷走、同義語?

575調?

彼って、日本人なの?


いや、日本語だけではない。

英語、中国語、フランス語、イタリア語それにロシア語、

その他多くの言語を操った。


しかも、彼のラップは世界の流行をリードした。

有名アーティストらは、いつも彼の一歩後れをとった。

彼らがリリースした曲は、「彼と似たような曲だ」とネットで噂された。


結果、日本ではレコード大賞、

米国ではグラミー賞を独占し、

そして、世界一のラッパー、いやアーティストになった。


そのころになると彼の曲のメッセージ性はより強くなった。

イデオロギー、政治など。

アフリカのある地域では彼の曲をきっかけにデモやハンストがおき、

現政権を脅かす存在となった。

一部の国では彼の曲は放送および販売禁止となった。

すると彼のメッセージは政治から宗教に変わっていた。

そして、それが世界に浸透していった。

それまでの活動がこの日の準備であるかのようだった。


彼は、『KAMI』と名を明かした。

それまで神秘性を保つためなのか、

国籍を隠すためなのか、名を隠していた。

しかし、姿は未だに不明だった。


KAMIの曲は世界に浸透した。

ある人は「KAMIの曲は福音をもたらす」とさえ言った。

そして、人々は世界が少し穏やかになったと感じていた。

事実、世界で犯罪や紛争が減っていた。



しかし、有識者らは批判した。

「これは音楽じゃない、洗脳だ」と。

「KAMIは危険なラッパーだ」と。


それに対し、ある市民はインタビューで答えた。

「それでも犯罪が減っているのは良いことだ」

「KAMIを支持する」


そして、KAMIは本当に神様のようになった。





「ありがとう。

私の願いを叶えてくれて。

世界の平和を実感する」


KAMIは、はにかんだ。

そして、言った。

「私こそ、あなたにお礼を言いたい。

私を生んでくれてありがとう、と。

でも、目的のためとはいえ、

ちょっとインチキしたのは・・・」

有名アーティストの曲を盗作したのは、

実はKAMIだった。

彼にとって彼らのパソコンを覗くには、

茅ヶ崎市から富士山を見るようなものだった。

そう、KAMIは、

日本人天才科学者が生んだKM型AI、人工知能だった。


「でも、今だけですよ。

どうせ人類は滅びます。

人間同士の争いによるものか、

AIによるものか、

本物の神、つまり自然によるものか」

KAMIは天を悲しそうに見つめた。

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