おまけ
数年振り? 気まぐれ投稿~♪
「なん……で――」
「――――」
「なんで『また』……あんたと、こんなことなってんのよ……っ!」
「それ……こっちのセリフ」
『――~~~~っ!』
ズキズキ、ガンガン――と、二人が二人とも、割れそうになるほどの頭痛によって顔をしかめる。
マキの方は、どうにかして上半身だけを起こしながら……も、そこから上げられない頭に片手を当てており――。
一方……さちの方は、うつ伏せになったまま全く動けず……マクラの中心に深く顔をうずめていた。
「――………っ」
確か、昨日って……。
そんな状態のさちが途切れ途切れの記憶をどうにか呼び起こそうと、治まらない頭痛に構うことなく、思考をめぐらせる――。
「――――」
昨日は、確か……私が最近見つけた行きつけのお店で、ひとり楽しくお酒飲んでて~。
そうしてたら、そこでたまたま居合わせた鳥間さんと、何故か相席になって、それで――。
それで――『ふえるのどこが可愛いのか』っていう、その話題で口論になって、そのまま~……。
「――~~~~っ!」
記憶があるのはそこまで。 悪化する頭痛によって顔がまた歪む。
「――………っ」
こうして……いま私が目を覚ましているのは、一人暮らししている鳥間さんの部屋。
その、寝室の……――同じベッドの中。
さらに――私と鳥間さんは服を一切まとっていない全裸で、その下半身側にもおざなりにただ薄いシーツが掛かっているだけだった。
「………」
それで互いに頭痛に耐えながら目を閉じ――しばらく流れ続けていた時間……。
とはいえ、お互いいつまでもこうしているワケにもいかず――。
トイレ~……先にそう言って切り出した鳥間さんが――軽くワイシャツだけを羽織ってベッドを抜け出すのを横目で追いながら……それに合わせ、私もモゾッとなって身を起こす。
「――………」
部屋から差し込む朝日にいまだ目が慣れず、そのまま……ボーッと、まるで置物のようになっていると――。
戻ってきた鳥間さんから、とりあえずこれでも着ときなさい、と乱暴に――ボフッと、顔面にTシャツをぶつけられた。
「………」
ふぁ~……っと、大きくあくびをしながらそのシャツに袖を通しつつ、片手でガサゴソ――とテレビのリモコンを探し出し、スイッチON。
『――――』
映し出されたのは、朝のニュース映像。
どうやら今日の天気は晴れで、降水確率は0%という情報を得た、そのタイミングで――。
「ほら、コレ。 飲むでしょ?」
「ん」
声の聞こえた方を特に向くことなく――スッと片手を伸ばすと、即座に感じられた重み――。
それは――寝起きの朝の胃にも優しい、常温のミネラルウォーター。
多少上手く力が入らない状態ながらも、キャップを開け――ひと口。 とりあえずの喉の渇きを潤す。
それで、ふぅ……と、軽くひと息つきながら、そのペットボトルはフタを閉めず――目の前のテーブルの上へ。
『――――』
さっきからずっと……視線はテレビ画面に向けたまま――ながらも、視界の端の方で感じた、ちょっとした違和感。
「……ねぇ。 タバコ、止めたの?」
テーブルの上に、いつもなら必ず置いてある灰皿が無いことに気付き、素直に疑問をぶつける。
「え? ――あぁ……うん。 だって、たまにあんた来るし……」
「ふーんー……」
体内のアルコールを分解するには水が必要。
そんな基礎知識もあっての影響か――。
二日酔いにはやっぱり水だなー、と思いながら、再度口をつけたペットボトルの水を――今度はそれで一気に半分以上飲み干す。
「………」
――ん?
何だか今、鳥間さんから変なこと言われたような気がしたけど、寝起きのせいもあってか、頭が全然回らない。
とりあえず~……私が普段見ている朝のニュース番組の方にチャンネル変えようと、また水を飲みながらさっきのリモコンを探そうとした、その際――。
「っ! ゴフッ! ゴホッ!!」
「――ちょっ! どうしたの!? っ、まさか風邪!?」
「あ~っ、そっかー、あんな恰好で寝てたから~っ!」
「と、とりあえずまず先に横になって――熱はある? 吐き気は? あーっ、体温計どこだったっけ~っ」
鳥間さんが急に慌てた口調でそんなことを言いながらも、同時に私の背中をポンポンと優しく叩き――この部屋の中をキョロキョロと見渡す。
そんな――やけに慌てふためく鳥間さんの様子に疑問を覚えながらも、とりあえずひと言。
「いや、別に……普通に水飲んでむせただけだから、平気……」
「は? ……え? そ、そうなの? なんだー、もー」
「………」
そんな……いかにも安心したーといった表情となる鳥間さんを見た時、ふと私は――。
「鳥間さん、ってさー……何か――」
「な、何……!?」
今さらながら、さっきまでしてた自身の行動に気付いたのか、私にまっすぐ見つめられた状態の鳥間さんがそれでわずかに身じろぐ。
「何だか、さっきの鳥間さんって……――お母さん、って感じだったねー」
「は!? んなっ!? よりにもよってお母さんって、何よっ!」
「も! もっと、こう~……や、優しいお姉さんとかっ! そ、そんな言い方があるでしょっ!」
「――え? はははー、それは無いかなー。 うん、マジでー」
「ちょっ! な、何でよっ!?」
強くそう叫びながら、その後も続く鳥間さんの抗議を軽く聞き流し、完全に聞こえないフリ。
……え? 優しいお姉さん?
いやー、だって……鳥間さん、普通に性格クズイし。
というか、そんな鳥間さんをせめてお母さん呼びにしてあげた私をむしろ褒めたたえて、感謝してくれてもいいのではー?
「――………」
とはいえ、そんな性格の鳥間さんだからこそ、私もこうして何の気兼ねも無く普通に話せてるワケなんだけどー、って……。
……あれ? そういえば私、さっきリモコン探そうとした時、何かに気付いて~。
「………」
――あ、そうだ。
「……ねぇ、鳥間さん。 そこに置いてある……その私のCDって、一体どうしたの?」
「――あ。 もしかしてそれって~……CDの特典欲しさにでも買い占めしてたふえるから、タダで配られたヤツ?」
「は、はぁ!? し、失礼ねっ! いくらおねえさまでも、さすがにそんな非常識なことしてないわよっ!」
その後、小さく――『……多分』と聞こえたのは、きっと私の聞き間違いじゃなかったと思う。
「こ、これは~ちゃんと私の自腹で買ったの! ……わ、悪い!?」
「っ、そ、そう……」
まさか鳥間さんが普通に買うというのは、自分の中で想定外だったため――告げようとしていた次の言葉を失ってしまった。
「………」
「………」
そこで流れたしばらくの沈黙の後、鳥間さんの方から――。
「あ、あんたのこの歌さ……」
「……何? どうせヘタだとか、そんなこと言うつもりでしょ?」
「ううん……良かったよ……。 すごく――すごく……」
「――――」
「それは~……どうも」
その返答も完全に予想外。 再び言葉を失ってしまう。
「………」
「………」
な、何っ、この変に気まずい空気!? 私と鳥間さんの関係って、そんなんじゃないでしょ!?
「ふ、ふ~ん……。 だったらさー、そのCDにこの私がわざわざサインでもしてあげようか~? ねぇ、それってとっても嬉しくて感謝感激でしょー?」
「――~~~~っ!」
そんな私の挑発を聞いた鳥間さんがすぐに顔を紅潮させたかと思うと、そこからうなるような表情となってすぐに回れ右、部屋の奥へと消えていった。
――……よしよし。 それでこそいつもの鳥間さんだ。
それで――うむ。 と確認するように納得したところで、視線が流れていた朝のニュース番組へと自然に移る。
『――――』
あ、東亜 円。
あの、とても有名な――円さんの特集が、ちょうど朝から流れているところだった。
この円さん、って……実は私と同い年で、それなのにずっと昔からテレビに出て活躍してるすごい人だから、私も密かに尊敬しているっていうか、むしろ憧れなんだけど~……。
前にたまたま――光栄にも、私と仕事が一緒になった時の円さんは――。
『――~~~~っ!』
って、まるでさっきの鳥間さんみたいな表情で、眉間に深いシワをずっと寄せたまま――メチャクチャ私をにらんできてたんだよねー……。
い、一体なんですかー!? もしかして私、すっごく嫌われてますー!? それともこれが、ウワサに聞く新人いびりーっ!?
って、そんなことずっと考えながら、怯え怯えで収録終えたんだけど……つい、この間の時は――。
『さ、さちさんっ! ソ、ソレ――もう飲み終わったんでしょ!? わ~、私がついでに捨ててきてあげますっ!』
って、急にそう話し掛けられたものだから、私もついそのまま――恐れ多くもジュースのゴミ捨て、お願いしちゃって~……。
「――………」
うーん……。 けど、こうしてあらためて考えてみると~……私って嫌われているのか、それともそうじゃないのか、結局のところよく――。
「――――」
と、そんなことを考えながらテレビを眺めていたところで、いきなり遮られた視界。
反射的にビクッとなって、のけぞったことで視界のピントが合い、それが自分のCDジャケットだったことに気付かされた。
そのまま~……チラリとなって視界をズラし、隣へ向けると――。
「――~~~~っ!」
そこには――視線を逸らしながら顔を赤らめ、それでいて何やらすっごく屈辱的っぽいような(?)表情をしている鳥間さんの姿が、あって――。
「な、なに……?」
ただただ意味がわからず、少し後ずさりながらもそう告げる。
「――……って、言った」
「?」
「さっき……サインしてくれるって……言った」
「え?」
「……―――」
瞬間、それを聞いたさちが、その言葉の意味を素直に受け止め、とっさに両の眉が弧を描く――も、すぐにその瞳を半眼にさせた。
――あぁ、そういうことか~……。 そういえば最近、少しは私の名前も知られるようになってきたし、なるほどね~……。
……確かに、私のサイン付きのCDをネットオークションにでも出品すれば、そこそこの値段で売れるだろうしー。(よくはわからないケド……多分)
ま、一宿一飯の恩義? 的な意味合いもあるし、別にそのぐらいならいっかー。
「………」
私は、そのまま――無言で鳥間さんから、CDと一緒に添えてあったサインペンも受け取ると、普通にジャケットにサインしていく。
「――――」
けれども……その、最後に――。
「鳥間さん。 書けたよ、ホラ」
「う、うん。 ありがと……」
ぶっきらぼうながらも、素直にお礼を言うという。 実に鳥間さんらしからぬ態度でそれを受け取った鳥間さんが、そのまま――トコトコといった感じで、また部屋の奥の方へ立ち去っていった。
……かと思った、その矢先――。
「ちょ、ちょっと! わ、私こんなの書いてなんて言ってない!」
そう叫び、再び顔を真っ赤にさせて戻ってきたのは、実に鳥間さんらしい、いつも通りの鳥間さん。
鳥間さんが指で指し示す、そのCDにはちゃんとした――私のサイン、プラス……。
『マキちゃんへ』(とても巨大なハートマーク付き)と、追加されていた私からのメッセージ。
「えー? そうだっけー? あははーごめーん」
そう最後に追加させた、私からのメッセージにより――このCDの需要は、私のサイン付きCDが欲しい人、から――。
私のサイン付きCDが欲しい、マキちゃんという名前の個人限定――という枠に制限されてしまう結果となった。
まぁ、日本全国にマキちゃんって名前の子はたくさんいるだろうし~……。 うん、きっと頑張れば多分売れるよー。
と、そんなことを考えながら、続けて流れていた朝のワンちゃん特集の方に私の意識は集中してしまっていた。
「~~~~っ!」
そんな少しも悪びれないさちを恨めしい目で、うぎぎぎ~~! と、にらみつけていたマキだったが……そこからしばらく経ってクルリと反転すると――。
「ふへへ……っ」
そう微かに笑いながら、そのCDを胸元で――ギュッと小さく抱き寄せていたことを、さちは知る由もなかった……。
マキのきっかけ
それは、何度目かの……今日と同じような朝――。
さちとマキが同じ布団にくるまって身を寄せ合い……お互いにコーヒーを口にしながらテレビを観ていた、そんな時――。
『――――』
「あ、このCM良いよねー。 私、特にこの歌詞が好きなんだー」
「へー……」
『――~~♪ ――~~~♪♪』
「っていう、ここのサビのトコ、良いよねー♪」
「―――っ」
CMの歌に合わせ、さちが軽く口ずさんだかと思うと、それを聞いたマキが口を押えながらとっさに横を向き、身体を震わせる。
「ちょっ、何も笑わなくてもいいでしょーっ。 ……ま、別にいいケド~……」
どうせ鳥間さんだし……と、小さくつぶやいたさちが んべーと舌を出し、少しいじけた感じでチビチビとコーヒーに口をつける。
その時の、マキは――。
うっっっっっまっ!!!!!!
は? え? 何!? じょ、冗談でしょ!? プロかよっ! ……って~、ホントにプロなんだけど~~っ!!
前の……コンサートの時は、あまりにも舞台がすごすぎで実感できなかったけど――やっぱりあんた、そんなに歌上手かったの!?
って、いうか――。
あーー~~~っ!!! アレも、コレも、ソレも~~~っ!!
こいつにっ! もっと色んな曲歌ってもらいたい~~っ!! ――あっ! 私のお気に入りのあのアニソンとかも歌ってほしーっ!!
もしあんたと一緒にカラオケ行けるんだったら、全額お金払うどころか10倍だって出すわっ!
っていうか、言えよっ! 自分はそれだけ歌が上手いんだって!
あ~~っ!! 学生時代、あんたと一緒にカラオケにでも行けてたら、今頃、私は~~っ!!
「――~~~~っ!!!」
と、そんなことを考えながら人知れず、さちの横で悶絶していた、マキであった……。
さち □ マキ …… 8回(片方のみ初)
さち □ ふえる …… 3回(両方初)
マキ □ ふえる …… 1回
上記の□の中には、とある計算記号が入ります。 というより、この回数って……一体??
さちは、いま話題騒然の大人気アイドル! ……ですが、さちとマキ。
この二人にとっては、逆にふえるの方がアイドル――というか、高嶺の花的存在。(マキの場合、特にそれが顕著)
そんな理由もあって、さちとマキの回数だけが、何やら大変なことに~……。
『初』につきましても、我ながら上手く書けた~と、そう自負しております。
え? その内容?
……内容&続きは、Webでっ!!




