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山井出 千夏の見た世界  作者: シャイン・シュガー
番外編・他
32/38

第31話 番外編 ③ 『ファミレス』

 そりゃあ作者のお気に入りなので再登場しますよね~。


 ゴメン、会長……。 あなたの出番は、もう……。

 この糸には、他人を操る不思議な力がある……?


 いつの間にか、気付いた時には私の目の前に見えていた、この糸。


 そして、おそらくその糸が原因と思われることで起きた、私の周囲での様々な出来事……。


 他人を操る糸、か……。


 そう思いながら、こうして糸の出ている指先を見つめ――。


「――――」


 その視線の先にいた風子とまともに目が合った。


 そして、その風子が不意にニコリと微笑むと――。


「山井出さ~ん、さっきの映画、よかったよね~っ」


 と、嬉しそうにそう話しながら手にしているメニューに視線を向ける。


 ――そう。 私と風子はさっきまで一緒に映画を見ていて、ここはその帰りに寄ったファミレス。


 さちは以前――私のことを親友だと言ってくれて、私もそう思ってる。


 そして、目の前にいる風子、は……。


 私の方からは決して言わないし、今後も絶対に言うつもりもないけど――。


 さちと同じぐらい大切な友達で親友……って、そう思ってる。


 ――うん……。


 風子は私にとっての大切な親友……。


 だから~……いいよね?


 と、自分の心の中で、どこか言い訳めいたことをつぶやきながら、クククッとした声がわずかに漏れ出てしまった。


「山井出さん、決まった~? 店員さん呼ぶね~」


「――――」


 卓上の呼び出しボタンを押し、それからすぐに現れた女性店員さん。


 私はとりあえずコーヒーのみを注文し、風子もコーヒーとそれ以外の何かを注文していた。


 伸びた私の糸はこうして風子につながっている状態のまま――。


 風子も、そのすぐ近くにいる店員さんも、それに気付いている様子がまるでない。


 そして、そんな二人を見ながら、私は――。


「ご注文は以上でよろしかったでしょうか~」


 まずは軽くジャブ……。


「―――っ」


「――あ、はい。 それともうひとつ。 ちょっと私のおっぱい揉んでもらっていいですか~?」


「――……はい?」


 ――解除。


「え!? ――あっ! す、すいません、冗談です……」


「そ、そうでしたか~……。 も、もう少々お待ち下さ~い……」


「は、は~い……」


「………」


 今のやり取り……。


 やっぱり私の思考が直接風子に作用し、あんなことを言わせることができた……?


 ――あ。 でも普段の風子の様子を考えたら、あんなことだって普通に言いかねないから、今のがただの偶然ってこともありえるなぁ~……。


 だったら――。


「――――」


「ゴ、ゴメンね~、山井出さ~ん……私ってば、何か急に変なコト言っちゃって~……」


 先にきたコーヒーをお互いにすすりながら、風子がそんなことをつぶやく。


「ううん、別に……あんなの風子にとってはいつものことでしょ?」


「え? ちょっと待って? 山井出さんから見た私のイメージって、そんななの? その話、もう少し詳しく――」


「――――」


「………」


 風子が何か言っているようだけど、私はコーヒーを口にしたまま――これからのことについて意識を向ける。


 さっきのじゃ弱い……。 まだ確定とは言えない……。


 もっと……通常じゃありえない……何か、別の――。


「――――」


 と、私がそんなことを考えていたところに風子の注文したケーキを持ってきた店員さんがやって来るのが視界に入った。


 よし、ちょうどいい……今度こそ、確定的な――。


「お待たせいたしました~。 こちら――」


 そう言いながら店員さんがチーズケーキを持ってきたところで――。


「い、一番! 多田野 風子! 見桜女子高等学院けんおうじょしこうとうがくいん校歌独唱しますっ! お聞きくださいっ!!」


「へぇっ!?」


『我らが母校~♪ 剣と拳を握り~っ♪』


「――え!? え!?」 (な、何!? この人っ、コーヒーで酔っぱらってる!?)


 風子がいきなり校歌を大声で熱唱した瞬間、身をのけぞらせて驚愕(きょうがく)した店員さん。


 ん~……でもなぁ……。


 あの風子だったら、こんなこといきなりやってもおかしくないから、これがただの偶然ってことも~……。


 そう思った私は、次に――。


「に、二番っ! 多田野 風子! テーブルの上でエア平泳ぎやりますっ!!」


「お、お客様ぁっ!? あ、あのっ!!」


 そう言った瞬間、本当にテーブルの上でエア平泳ぎを始めた風子。


 当然、テーブルの上に置いてあった二つのコーヒーは私が両手に持ち、事前に回収済みだった。


「ぷはっ! ぷはっ!」


 風子が必死になって息継ぎし、手足を動かし続ける。


「あ! あの~!? お客様!? 他のお客様のご迷惑に~ってレベルじゃないので、もう少し――」


「ターンッ!!」


 そう叫んだ瞬間、席のついたてをキックして再び平泳ぎ。


「おっ!! お客様っ!?」


 その際、パンツが完全に見えてしまっている風子の下半身を、すごく慌てながらも必死に隠そうとしてくれてる優しい店員さん。


 ん~……でもなぁ……。


 あの風子だったら、こんなこといきなりやってもおかしくないから、これがただの偶然ってことも~……。


 ん~……風子が絶対にやらないこと、っていったら~……後は~――。


 そう、例えば~……風子のすぐ横に立ってる店員さんをポールに見立てて、そのままポールダンスのストリップショーを~――。


「――って! 山井出さんの中の私ってどれだけっ!?」


「……え? あれ? 私……今、何か……」


「お! お客様っ!?」


 そんな――いきなり叫び出してしまった風子を見ながら、さらに慌てだす店員さん。


「………」


 そのまま……そんな二人を見ている間にも私は考え続け……そして、ついに本当の答えにたどり着いた。


「―――っ」


 もう何度目かになるこの糸の力を使い、新たに風子に行動させたモノ、それは――。


「あ、あの……や、山井出さん……」


「わ、私……ずっと好きでしたっ。 私と付き合ってくださいっ!」


 そう叫んだ風子が顔を赤面させ、私に向かって頭を下げてきた。


「――――」


 それを聞いた瞬間、私の心が――スッと、驚くほど冷静になっていくのを自覚させられた。


「………」


 これは、違う……――と、単純にそう思った。


 風子はいつも変なことや冗談を言い、それで相手を困らせたりすることが本当によくある、けど――。


 こんな――人の心に直接踏み入るような冗談だけは決して言わない……。


 それだけは……確信を持って、そう言い切ることができた。


 それは、つまり――この糸の力は間違いなく本物だと、今のこの結果でそれがついに証明されたことを意味していた。


 これでようやく結論が出た――と。


 それで安心したからか、何なのか――途端にお腹が空いてきてしまった。


 と、そんなことを考えていた時――。


「あ、あの~……」


 そこで聞こえてきた風子の声。


「や、山井出さん……? そ、それで~……答え、は?」


「? ……答え?」


「う、うん……。 な、何かさ~私、山井出さんのこと、好き? だったみたいで~……」


「だ、だから、それでいきなり告白しちゃって……その答え、って……」


 そこまで言われてようやく話の内容を理解し、すぐさま返答。


「私、好きな人がいるのでゴメンなさい」


 そう言ってペコリと頭を下げ、それから――。


「あ、店員さん。 私、このマカロニグラタンを――」


「『MA! KA! RO! NI!』とかじゃなくっ!! 興味っ!! お願いだから山井出さんっ!! 私にもっと興味持ってーーっ!!!」


「お、お客様ーーーっ!!?」


 この力があれば……私は、お姉ちゃんと……。


 何だかよりいっそう騒がしなっていく店内の中――ぐへへっ、となって、(よこしま)な笑みを浮かべてしまう私だった。


 風子……一瞬とはいえ、勝希の支配から逃れ、その思考を逆に読み取った、だと……。


 ま、まさか風子は、本人が自覚していないだけで、今の勝希を凌駕するほどのすさまじい力が……。




 ――あ、いえ。 特にそんなことは無く、風子はただの普通の子です。


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