ミてしまいました
本日5月、快晴に恵まれたこの良き日。
私は奇妙な書き付けを、自分のアルミペンケースのしたから見つけた。
お昼を隣のクラスにいる、鈴森さん水田さん吉田さんといっしょにとったあとのことだ。
ノートの切れ端をちぎって四つ折りにされている。取り敢えず開いてかかれた文章を読んでみた。
「ある先輩が、鷲津さんのメアドが欲しいと言ってます。下に書いてください。」
以上、下には書けとばかりに余白がしっかりとられている。
まずは、
「きもっ」
汚い物を触ったかのようにメモを放り出した。
「……」
隣の橋本くんは寝ていたのかと思っていたが、一連の流れを見ていたのか目があった。
汚い言葉を口に出した気まずさと、居心地の悪さからメモを言い訳のように彼に見せた。メモはすでに私の手のせいで皺がよっている。
「誰か知ってる?」
クラスにいるのはざっと半分ほどのクラスメイト。私は、昼休みが始まってすぐ隣のクラスにいっていたので誰でもメモを仕込むことができた。
何か見てなかったか聞くが、彼は首を横にふった。寝る気分ではなくなったのか、体を起こしてメモを私と同じように放り出した。
昼寝を邪魔することになってしまったことに申し訳ない気持ちがわく。
「どうすんの」
「書いた人が分からないから……、無視するしかないかな」
名前もわからない人に連絡先を教える義理もない。
「じゃ、これ捨てるよ」
メモをつまんだ橋本くんは、ビリっとメモを引き裂いた。そのままメモは八つ裂きのばらばらにされる。いきなりのことに驚いたが、無視案件なのだ。構わないかと、開き直った。
「ありがと、ゴミ捨ててくるよ」
「よろしく」
紙くずの山となったそれはゴミ箱の中で散っていった。
「橋本くんは、携帯持ってるの?」
「持ってるけど」
顔がじんわり熱を持つ。
「私が教えて欲しい、って言ったら教えてくれる?」
橋本くんは、しばらくなにも言わなかったがしばらくしてスマホを取り出した。携帯ではなかった。
「はい」
彼は連絡先をスマホの画面で見せてくれた。私もあわてて自分の携帯を取り出す。
メモ犯のことはあれこれいえないかもしれない。
「俺はいいのか」
「直接聞いてくれれば私も考えるよ。こういうの、嫌いだから教えないだけ。橋本くんは連絡先交換するのに抵抗ない?」
「人による」
「私はいいの?」
「まあ」
嫌ではないらしい。
期せずして、連絡先を交換しました。