5.<揺れる想い>
一主婦が、出逢うはずのない出逢いをした時、どうなるのだろうか。
人は、簡単に恋をするものだろうか・・・。
トオルは、毎日夜11時に必ずチャットに来た。
彼が来るまでの時間を、私は先にチャットにインして過ごす。
つまり、待ち伏せ。
彼が来るまでの数十分を、いつもチャット内で遊んでいた。
恋をしている女性だから、そのチャットの会話もはじけていた。
明るく楽しい女性。チャットの知り合いの人たちは誰もが桃美をそう思った。
そして、トオルがイン。
個人的な会話機能を使用して、私だけに話しかけてくる。
「こん。 お待ちどうさま〜」と。
ちなみに、「こん」とは、チャットの中での挨拶言葉。
「こんにちは」「こんばんは」の省略形。
そして、トオルに誘導されて、別部屋へ行く。
この日は、特別な話をすることになった。
二人きりの部屋。特別な感情を抱くのは、ごく自然なことでもあった。
「逢う日のことだけどさ〜、考えてくれた?」
突然の言葉に、桃美はとまどった。
「やはり、逢いたい?」
「そりゃ〜お前のことが大好きだし、逢いたいに決まってるでしょう。」
「どうしても?」
「お互い好きなんだからさ、逢うべきでしょう。」
「私の写真・・・・見たでしょう?」
「送ってもらったやつだろう?小さくて顔がよくわからないや(笑)」
「そか・・・・。」
「私も逢いたいけど・・・。普通のおばさんだよ?」
「そんなことはないでしょー」
「逢って、がっかりされたら嫌だな、て。」
「ないない。だからさー、来週いつがいい?」
「そか・・・・。」
「来週、六本木で逢おう!」
「うん・・・わかった」
承諾をしてしまう桃美。危険な約束・・・・・。
次の日、トオルから、長めのメールが送信された。
【桃美へ】
ずっと逢いたくて、毎日、お前のことを想ってきた。
一度、思いきり断られた時はどうしようかと思ったけど、
やっと逢えることになって、俺も、すごく嬉しい。
だからさ、コンビにでお酒を買ってさ、二人でホテル行こうよ。
中でお酒飲むだけでね。
その方が、人目を気にしないで、ゆっくりできるしさ。 考えておいてね。
さぁ〜どうする・・・桃美。