16.<白と黒の判定>
文字の証拠。
それは、ネット内では、ログとり=ログ保存という。
リアルタイムで流れていくチャットやメッセンジャーの文字は、
一般的な口から発せられる声と同じで、本来メモや録音をとるような会話ではない。
しかし、言った言わないと、もめることも多い世界だけに、
ログ保存をするネット族も、多かった。
桃美は、普段のネットの会話を保存することは、していなかった。
ログを保存する使途も知らなかった。
だから、今回の集団メッセンジャー内の悪口証拠ログ保存は、桃美にとって、異例のことであった。
保存した悪口証拠ログを、チャットに遊びに来ている周囲の人に見せた。
ネット内の反応が待ち遠しかった。
「え〜これ、本当なの? ひどいね〜。」
「信じられないな〜。」
「何とかしないとね〜。」
という、予測どおりの反応を得た。
悪口を言われている当の本人にも、このログを見せた。
本人A「・・・・・・・」
Aは絶句し、撃沈した・・・。
これは、桃美の頭の中で描いていたものとは違い、まったくの予想外の反応であった。
悪口を見てAは怒り、反旗を翻す行動をとるかと思っていただけに、がっかりだった。
ひどいね〜と明確な反応をした人々も、その言葉を簡単に言うだけで終った。
所詮、他人事なのか・・・。
絶句、撃沈した当の本人は、これを機に、チャットを去っていった。
仕方なく、桃美は一人で正常化運動をした。
つながっているメッセンジャーで、
「とにかく卑怯なことはやめなよ!」
と言って回った。
結局、悪口をやめさせようという動きは、桃美一人の肩にのしかかってしまった。
相手は、したたかな集団だ。
人数だけでみると、多勢に無勢である。
いつも強気な桃美ではあったが、さすがに、この時はどうしようかと、ひるんでしまっていた。
正しい行動をしたはずなのに・・・と落ち込んでいく。
そわそわした気持ちを落ち着かせようと、チャットにインした。
そこで、驚く光景を目にする。
いつもの部屋、いつものメンバー。
違う所は、桃美に対する嫌がらせ。しかも、集団で・・・。
とりあえず、いつもの挨拶はあった。
そのあとの会話の流れは、桃美の発言を皆で無視・・・
挙句の果てに、桃美をその部屋から退室させようかとチクチク言ってくる。
この時の、ボスが、あのダイゴであった。