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3人目の異性マサヒロもまた、携帯の鬼であった。
朝から夕方まで、来る日も来る日も、恋愛モードのメールを送信してきた。
「俺は、桃美の優しさに惚れたんだなー。」
「織り姫と彦星のように、ロマンチックな恋だよねー。」
「10年後も、このまま、桃美といたいよ・・・。」
「せつないよ・・・・でも、素敵な出逢いだね。」
女性として、これほど嬉しい言葉はなかった。
桃美は、何よりも、マサヒロからのメールを大事に保存していた。
返すメールにも、精一杯の愛情を表現した。
「あなたに出逢えて、こんなに幸せです。」
「いつの日か、何年後になるかわからないけど、絶対に、逢いたいね。」
桃美は、恋の・・・・いや、妄想の奴隷だった。
そして、ある事件が起きた。
マサヒロは円満な家庭を持っていた。少し、カカア殿下の家風。
ある日、カカア殿下の奥さんに、携帯を見られてしまう。
その後、携帯を破壊されたとか・・・。
携帯を肌身離さず持ち続けることは、家族からみたら、怪しいと予感する行動である。
大人の駆け引きとして、失敗。
これを機に、しばらく、マサヒロとは、連絡がとれなくなってしまった。
桃美は、号泣した。
それは、マサヒロとの連絡がとれないことへの涙ではなく・・・。
桃美をふわふわさせるものが消失してしまうという、恐怖であった。
それほど、妄想の奴隷に変貌していた。
マサヒロとの連絡がまばらになった桃美は、次の妄想へと暴走していく。
それが、4人目の異性、アキラだった。