1.< 序章 女性として >
◆遊覧チャット◆
<序章 女性として>
人は、妄想をして自分だけの時空を作ろうとする。
限りなく、自分勝手な妄想だと誰が気づくだろうか・・・。
妄想>理想>現実
この空間の真実の意味を知ったものにしか、理解できないものがそこにあったのなら、
現実逃避の幻を追いかけて行くのか、それとも、時の流れに身を任せるのか・・・。
人は、どこに価値を見出して生きているのだろうか・・・。
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時は昭和45年、桃美は、東京の南端の町で生まれた。時代は、高度成長期のまっただなか。
オイルショックも終盤を迎えていた。都会は、秒刻みで人々は駆け巡る。
世間の流れは、核家族へと突入し、少しずつ贅沢な生活へと変化していく。
戦争を知らない子供たちの誕生だった。
桃美は、父と母、兄ひとりの4人家族の中で、明るく活発な女の子として育つ。
幼稚園の時には、毎年の定期検診と予防注射の恐怖で泣き出す同級生を
大丈夫だよとなぐさめる優しい一面を持っていた。
初恋は、小学生の時。クラスメイトの男の子で、いつもの喧嘩相手だった。
素直に好きとは言い出せない・・・そんな普通の女の子。
悪口が大嫌いで、いじめも許せない性分。だから同性の友達も多かった。
そんな実直な性格がゆえに信頼もされて、生徒会などにも縁があった。
桃美15歳。楽しい学生生活を過ごした。
高校生になると、好奇心満タンで思考が爆発していた。
何にでもチャレンジをしたり、夢のような将来設計を空想したりして、終始笑顔の毎日。
もちろん彼氏も作り、純愛と呼べるような恋愛をした。
そんな桃美の望みは、可愛いお嫁さんになること・・・・。
桃美の小さい頃の夢は、お父さんと結婚すること。
どこの家庭でもよくありがちな言動。
幼い女の子の知恵は、簡単そうで不可能な夢であった。
その後、順調に大学へと進学する。
大学は、女子大。 他大学の、テニスサークルというものに入部し、青春を謳歌していた。
「ふぞろいの林檎たち」というドラマのように・・・。
二十歳になると、フードコーディネーターを目指していたため、
料理番組のアシスタントのアルバイトに就いた。
番組は、数分。
しかしその前の下準備は、何時間もかかる仕事であった。
メニュー表や材料表作りに、買出し、材料の下処理。
特に買出しは慎重に行わなければ、時間が無駄になってしまう。
香味野菜ひとつでも、長さや色のこだわりを考慮して選択しなければならなかった。
そして、アシスタントの大切な仕事は、調理途中の見本と完成品の見本を用意すること。
わずか数分の番組に、数十分かかる調理時間は、省かれるものである。
その省かれた調理時間を、ふたつの見本でつなげていくわけである。
「10分煮たものがこちらです」
一度くらいはどこかで聞いたことがあるフレーズだろう。
長時間の立ち仕事の裏方は、華やかな表舞台からは想像できないほど、
過酷な仕事でもあった。
生活に疲れてきたこの頃・・・。 いつしか、結婚願望への気持ちが強く増していく。
忙しすぎるため、彼氏とは無縁の桃美、二十一歳。
「心やすらぐ安定した生活をしたいなぁ」
その思考が、結婚への道へと導いていった。
とは思うものの、相手はどこにいるのか。
あせらなくてもいい年齢なのに、何故か気持ちはあせり始めていた。
名づけて
「桃美、結婚大作戦!!!」