第六十三話「賢者の屋敷」
屋敷に入ると広間があり、客人をもてなすためのテーブルとイス、ソファが置かれていた。ヘルフリートは既に家具も購入したらしく、生活に必要な物は全て揃っているのだとか。
玄関を入って右手には二階に続く階段が、広間の奥にはキッチンがあった。二階は寝室と客室と書斎になっていた。各部屋には浴室があり、浴槽は豪華な大理石で作られている。広々としていて雰囲気が良い。寝室には私とヘルフリート、フィリアの三人でも余裕を持って寝られる大きさのベッドが置かれていた。こんなに立派な家でこれから私達の生活が始まるんだ。屋敷に荷物を運ぶと、ディーゼル三兄弟が訪れてきた。
「師匠。立派な屋敷じゃないか。遊びに来たぞ」
「おう、よく来たな! まぁゆっくりしていってくれ」
「ああ。キッチンを使っても良いか? 羊の肉を手に入れたんだ。今日は俺達が料理をするぞ」
「それは助かるよ。自由に使ってくれ」
ディーゼル三兄弟は手土産の葡萄酒と大きな羊の肉を持ってくると、早速キッチンに入って料理を始めた。私達がゆっくりと家の中を見て回っていると、ティアナが遊びに来た。
「ヘルフリート! 屋敷を買ったって聞いたけど、こんなに立派な屋敷なんだ……」
「やぁ、ティアナ。遊びに来てくれてありがとう。ランドルフ達もさっき来たところだよ」
ティアナは白くてふわふわした耳を立てながら楽しそうに広間を見て回っている。今度イーダさんやゲレオン叔父さん、ザーラ叔母さんも招待しよう。その前に、久しぶりに近況を報告した方が良さそうね。ランドルフ達の料理が終わるまで、ゲレオン叔父さんに手紙を書こう。私は広間の大きなテーブルの上に羊皮紙と羽ペン、黒インクを準備して手紙を書き始めた。
『親愛なるゲレオン叔父さん、イーダ叔母さんへ。連絡が遅くなってしまってごめんなさい。私はヘルフリートとベルガーの町で暮らしています。今は夏休みで、夏休みの間はベルガーのダンジョンに潜ってお金を稼いだり、フレーベルの町に旅行に行ったりして過ごしていました。ゲレオン叔父さん、ザーラ叔母さんも道具屋の仕事を頑張りすぎずに、たまにはゆっくり旅行でもしてみてはいかがでしょうか? 私からの提案ですが、この度、ヘルフリートが家を買ったので、いつでもベルガーに遊びに来て下さい。明日からは夏休みが終わり、魔法学校の授業が始まります。私は両親に掛けられた錯乱の呪いを解除できる魔術師を目指して、毎日魔法の訓練を重ねています。また、近い内に連絡をします。私に連絡をする場合はヘルフリートの住所宛に、ガーゴイル便かフクロウ便を飛ばして下さい。エミリア・ローゼンベルガー』
「手紙を書いていたのかい?」
「うん。久しぶりにゲレオン叔父さん達に近況を知らせようと思って」
「それは良い事だな。そろそろ料理が出来たみたいだ。明日からは久しぶりに魔法学校に登校するんだな……長い夏休みだった」
「ヘルフリートは大変だったよね、貧困層に剣と魔法を教え始めたり」
「これから更に忙しくなるよ。もしかしたら魔法学校には毎日通えないかもしれない」
「来れる時に来てくれれば良いよ……」
「うむ。午前中になるべく顔を出すようにはするよ。しばらくはハース区の住人に戦い方を教えなければならないから、忙しいだろうけど」
しばらくすると、広間のテーブルには豪華な料理が並んだ。ディーゼル三兄弟が日頃の感謝を込めて作ったのだとか。ヘルフリートは夕食を食べるためにガーゴイルの姿に戻ると、私の膝の上に飛び乗って食事を始めた。
葡萄酒を一口飲むと、何故かコリント村に住んでいた日の事を思い出した。まさかゲレオン叔父さんから頂いた本の中に賢者の魂が宿っていて、その賢者が私の初めての恋人になり、家まで購入するとは思わなかった。本の中の賢者ハースから魔法を教わった事が遠い昔の事のようだ。これからこの屋敷で、私達三人の新しい生活が始まる……。
私は魔法学校で魔法を学び、天空の魔法陣を目標に魔力を鍛える。勿論、最終目標はヘルフリートを再召喚する事。絶対に私の力でヘルフリートを召喚するんだ。
ヘルフリートはこれから貧困層の住人に対し、戦い方を教え、貧困をなくすために働く。フィリアはヘルフリートと共に行動し、魔法の練習を続ける。彼女が今のペースで強くなれば、あっという間に私以上の魔力を身につけるだろう。だけど負けたくない。ヘルフリートは私を選んでこの世界に再び姿を表してくれたんだ。ヘルフリートが誇れる魔術師になり、一日でも早くヘルフリートを再召喚するんだ。
ランドルフ達が作ってくれた夕食を堪能していると、ヘルフリートが突然ファントムナイトの体に戻りたいと言った。ファントムナイトに戻ったヘルフリートは、ランドルフ、ヴィクトール、バルタザールを見つめた。
「皆。今日まで俺と一緒にダンジョンに潜ってくれたり、ハース区の住人の手助けをしてくれてありがとう。俺はこれから路上生活者に生きる手段を与え、弱い者でも豊かに生きていけるベルガーを作るつもりだ。皆、強力してくれるかい?」
「勿論だ、師匠。当たり前の事を言うな。俺は民を救える英雄になると誓った男だ」
「そうだ。俺達三人は死ぬまで師匠と共に居るつもりだ。荒くれ者で戦い方すら知らない俺達を、今まで鍛えてくれた師匠に恩返しをするつもりだ」
「水臭いじゃないか、師匠。俺は師匠を超えるまで師匠と共に居るつもりだぞ。という事は一生共に居ると言う事だ」
「お前達……」
ヘルフリートはディーゼル三兄弟の体を抱きしめると、三人とも満足そうにヘルフリートを見つめた。ランドルフ達も私と同様、ヘルフリートと一緒に居たいんだ。
「私もずっとヘルフリートと一緒に居たい……」
「勿論だ。最後まで助けると約束したからな」
「ヘルフリート……」
ティアナは嬉しそうに尻尾を振ってヘルフリートに抱きついた。そんな様子をフィリアは嬉しそうに見つめている。しばらく料理と葡萄酒を堪能した頃、フィリアとディーゼル三兄弟は帰っていった。ヘルフリートは広間でゆっくりと葡萄酒を飲んでいる。私とフィリアは二人でお風呂に入ってから休む事にした。大きなフカフカのベッドに横になると、すぐに睡魔に襲われて眠りに落ちた……。
夏休みが終わり、時間は矢のように過ぎた。ヘルフリートはハース区の住人に対して、剣術と魔法を教え続けている。既に全ての路上生活者はヘルフリートが建てた家で生活をし、モンスターを討伐出来る者はランドルフ、ヴィクトール、バルタザールの三人が指揮する討伐パーティーに加わり、効率よくお金を稼いでいる。ヘルフリートは瞬く間にベルガーの町から貧困を無くし、全ての住人が人として尊厳を持って暮らせる環境を作り上げた。
私はと言うと、早朝の六時に起きて魔法の練習をし、午前中は魔法学校で授業を受ける。授業が終わると、レオナやティアナと共にダンジョンに潜ったり、リーゼロッテと学校の談話室で魔法の練習をして過ごしている。
ついに冬休みが始まった。冬休みにはイーダさんとゲレオン叔父さん、ザーラ叔母さんが遊びに来てくれた。ゲレオン叔父さんはファントムナイトのヘルフリートを見て驚いたものの、既にファントムナイトのヘルフリートが、ベルガーの町から貧困層をなくしたという功績が、コリント村をはじめ、大陸中に知れ渡っていたらしく、ゲレオン叔父さんは私の事をよろしく頼むとヘルフリートに伝えた。
彼はゲレオン叔父さんと硬く握手を交わしながら、エミリアは俺が幸せにしますと言ってくれた。イーダさん、ゲレオン叔父さん、ザーラ叔母さんは冬休みの間、暫く私達の屋敷で滞在した後、コリント村に戻った。
私達のパーティーは日に日に力をつけ、ダンジョン内だけではなく、ベルガーの周辺のモンスター討伐を政府から依頼されるようになった。報酬もダンジョン内のモンスター討伐よりも遥かに多く、時にはベルガー以外の地域まで遠征し、悪質なモンスターを討伐する事もあった。冬休みも終わり、私は二年生になった。二年生の授業が始まった四月一日、ベルガーの町を震撼させる事件が起こった……。
〈二年時ステータス〉
エミリア・ローゼンベルガ―
Lv.6:力…270 魔力…655 敏捷…360 耐久…380
属性:【聖】【氷】【水】
聖属性魔法:キュア ヒール バニッシュ ホーリー ホーリーシールド ホーリーソード エンチャント・ホーリー ナイトの召喚
氷属性魔法:アイス アイスジャベリン アイスシールド アイスエレメンタル
水属性魔法:ウォーター ウォーターボール
魔法陣:聖域の魔法陣 魔法反射の魔法陣 大地の魔法陣 罠の魔法陣 氷の魔法陣 氷霧の魔法陣
杖:大魔術師の杖(魔力+80)
防具:ホワイトパラディン・シルバーメイル(耐久+30 魔力+30)
防具:ホワイトパラディン・シルバーガントレット(耐久+20 魔力+15)
防具:ホワイトパラディン・シルバーフォールド(耐久+20 魔力+15)
防具:ホワイトパラディン・シルバーグリーブ(耐久+20 魔力+15)
防具:霊力のローブ(魔力+20)
装飾品:妖精族の指環(魔力+10)
装飾品:約束の首飾り(魔力+20)
特殊効果:ホワイトパラディンの誓い(魔力回復速度上昇)
特殊効果:賢者の誓い(自動回復・魔力回復速度上昇)
特殊効果:大魔術師(レベル5以下の魔法を無効化する)
妖精・フィリア
Lv.5:力…250 魔力…510 敏捷…340 耐久…450
属性:【土】【火】
土属性魔法:アース ストーン アースエレメンタル ストーンゴーレムの召喚 ストーンジャベリン
火属性魔法:ファイア ファイアボール エンチャント・ファイア
武器:創造の杖(魔力+25)
防具:ルーンメイル(耐久+15 魔力+20)
防具:ルーンガントレット(耐久+15 魔力+20)
防具:ルーンブーツ(耐久+15 魔力+20)
装飾品:フィリアの指環(魔力+20)
ファントムナイト(賢者ヘルフリート・ハース)
Lv.6:力…660 魔力…625 敏捷…635 耐久…620
属性:【聖】
聖属性魔法:ホーリークロス ホーリーアロー エンチャント・ホーリー ホーリー バニッシュ キュア リジェネレーション ヒール ホーリーソード ホーリーシールド
魔法陣:大地の魔法陣 聖域の魔法陣 魔法反射の魔法陣 罠の魔法陣
武器:プラチナロングソード(魔力+30 敏捷+20)
武器:ルーンダガー(魔力+40)
防具:ファントムナイトの魔装
防具:ハース魔法学校のマント(耐久+15 魔力+15)
装飾品:ティアナの鞄
装飾品:フィリアの指環(魔力+20)
装飾品:ハース魔法学校の銀時計(魔力+10)
特殊効果:ファントムナイト(レベル3までの全ての闇属性攻撃を無効。闇属性攻撃に込められた魔力を聖属性魔力として吸収する)
ティアナ・ブロスト
Lv.5:力…500 魔力…340 敏捷…410 耐久…420
属性:【雷】
武器:ブロードソード(魔力+10)
防具:シルバーメイル(耐久+15 魔力+10)
防具:シルバーガントレット(耐久+15 魔力+10)
防具:シルバーブーツ(耐久+15 魔力+10)
ランドルフ・ディーゼル
Lv.5:力…580 魔力…420 敏捷…580 耐久…570
属性:【雷】
魔法:サンダー エンチャント・サンダー サンダーボルト
武器:シルバースピア(魔力+10)
防具:シルバーメイル(耐久+15 魔力+10)
防具:シルバーガントレット(耐久+15 魔力+10)
防具:シルバーグリーヴ(耐久+15 魔力+10)
ヴィクトール・ディーゼル
Lv.5:力…510 魔力…280 敏捷…425 耐久…420
属性:【風】
武器:鉄鋼のロングソード(魔力+10)
防具:アイアンプレート(耐久+15 魔力+10)
防具:アイアンガントレット(耐久+15 魔力+10)
防具:アイアングリーヴ(耐久+15 魔力+10)
バルタザール・ディーゼル
Lv.5:力…500 魔力…320 敏捷…445 耐久…420
属性:【風】
武器:鉄鋼のロングソード(魔力+10)
防具:アイアンメイル(耐久+15 魔力+10)
防具:アイアンガントレット(耐久+15 魔力+10)
防具:アイアンブーツ(耐久+15 魔力+10)
レオナ・ブライトナー
Lv.4:力…410 魔力…400 敏捷…425 耐久…415
属性:【土】【火】
土属性魔法:アース ストーン ストーンピラー ストーンウォール
火属性魔法:ファイア ファイアエレメンタル エンチャント・ファイア
火属性スキル:ファイアブロー
武器:火炎のトマホーク
装飾品:シルバーネックレス(魔力+20)
防具:アサルトブレスト(耐久+20)
防具:アサルトガントレット(耐久+20)
防具:アサルトブーツ(耐久+10 敏捷+20)
防具:マント(魔力+5 耐久+5)
特殊効果:火炎(火属性攻撃力上昇)
リーゼロッテ・ヘルダー
Lv.4:力…210 魔力…480 敏捷…320 耐久…310
属性:【風】
風属性魔法:ウィンド ウィンドショット ウィンドアロー ウィンドスピア ウィンドエレメンタル
武器:シルバースタッフ(魔力+20)
防具:ホワイトローブ(魔力+20)
装飾品:エルフの首飾り(魔力+15)
装飾品:エルフの指環(魔力+15)




