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魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第三章「フレーベル編」
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第六十話「フレーベルのダンジョン」

 フレーベルのダンジョンは地下五階層までの浅いダンジョンで、低レベルのモンスターが多いらしい。目的の魔石は地下二階層にあるのだとか。私達はヘルフリートの魔石を取りに行くために、ダンジョンの中に入った……。



〈フレーベルのダンジョン〉


 光が入らないダンジョンの中を照らすために、ホーリーの魔法で小さな光の球を作り上げた。一階層は氷属性のモンスターが湧くのか。夏だというのに、まるで冬のように冷たい魔力が蔓延している。


「エミリア。フレーベルのダンジョンは、ベルガーのダンジョンよりもモンスターの種類が多く、種族も様々だ。一階は氷属性、二階は聖属性、三階は闇属性、四階は火属性、五階は土属性と精霊」

「え? 地下五階に精霊? このダンジョンには精霊も湧くの?」

「極稀にだが、高レベルの冒険者がダンジョン内に入った時のみ、姿を表す事がある。精霊は基本的に人間に対して友好的な者が多いから、相手から攻撃を仕掛けてくる事は少ない」

「精霊か……私もいつか会ってみたいな」

「エミリアが強くなれば、いつか精霊の方から会いに来るはずだよ」


 強い氷の魔力を感じる薄暗いダンジョンをゆっくりと進むと、ダンジョンの奥の方からキラキラした美しいモンスターが姿を表した。全身が水色の毛で覆われており、狼のような見た目をしている。


「スノウウルフだ。氷属性、レベルは1から2程度だろう。強いモンスターではないが、集団で行動している事が多い。気をつけるんだよ」


 スノウウルフは私達を警戒するように睨むと、前足に強い魔力を込めて攻撃を仕掛けて来た。スノウウルフが飛び上がって前足を振りかぶった瞬間、ヘルフリートは目にも留まらぬ速さでスノウウルフの体を切り裂いた。一撃で真っ二つに切られたスノウウルフの体は、まるで雪が降るように辺りに氷の魔力を散らして命を落とした。地面には小さな魔石が一つ、転がっている。ヘルフリートは魔石を拾うと私に差し出した。


「この魔石も今度賢者の書に登録しておこうか。まぁ、氷属性はアイスドラゴンが居るから必要ないとは思うが」

「そうしようか。他のモンスターに姿を変えたヘルフリートも見てみたいし」


 一階層のスノウウルフを狩りながらダンジョンの中を進むと、私達は二階層に続く階段を見つけた。ヘルフリートの魔石が隠されている二階層に続く階段の奥からは、心地の良い聖属性の魔力を感じる。きっと聖属性のモンスターが居るに違いない。


 多分、二階層には私達の敵は居ないだろう。聖属性のモンスターが、聖属性の魔術師である私とヘルフリートを襲う事は無い。モンスターの中にも人間と敵対している種族も居れば、人間と共存している種族も居る。


 二階層に続く階段をゆっくりと降りると、一階層とは全く雰囲気の違う空間が広がっていた。まるで春の心地の良い日差しのような魔力が蔓延しており、この場に居るだけで気持ちが安らぐ。


「いつ来てもここの魔力は心地良い。俺は駆け出しの頃、このダンジョンで魔法の訓練をしていたんだよ。二年くらい毎日通い詰めたかな」

「駆け出しの頃?」

「うむ。あれは十歳の頃だったかな。当時、戦士をしていた父親共に、毎日このダンジョンに潜り、モンスターを狩り続けた」

「十歳の頃にはダンジョンで狩りをしていたんだ」

「ありえない話だろう? 当時は魔法が使える者が少なく、魔法の腕が良くなくても、ダンジョンのモンスター討伐に駆り出されたんだ。半ば強制的にね。幼い頃から日常的にモンスターと戦い続けた俺の魔力は、大幅に強化され、十八歳の頃には大魔術師の称号を得た」

「十八歳で大魔術師か……本当に凄いな」

「エミリアもきっとなれる。両親に掛けられた呪いを解くためには、最低でも大魔術師にならなければならない。魔力が800を超えれば、天空の魔法陣を使いこなせるようになるだろう」

「魔力800か……いつか越えてみせるんだ。ヘルフリートと一緒に努力して」

「うむ。エミリアなら大丈夫だ」


 ヘルフリートの過去の話を聞きながら、ダンジョンの通路を進んでいると、強い聖属性の魔力を感じる部屋を見つけた。古ぼけた金属製の扉には、冒険者達が何度も攻撃を放った痕がついている。


「ここが目的の部屋だ。エミリア。扉の仕掛けを解除するには、魔力500以上のホーリーの魔法を、同じタイミングで、同じ量の魔力で使用しなければならない。俺が威力を合わせよう」

「うん……」


 目的の部屋の前に着いた私達は、早速扉の仕掛けを解除する事にした。杖を扉に向けて構え、聖属性の魔力を込める。杖の先からは大きな魔力の塊が現れた。私の隣に立っているヘルフリートは、ロングソードを構えて魔法を唱えた。


『ホーリー!』


 ヘルフリートが魔法を唱えた瞬間、剣の先には大きな銀色の魔力の塊が現れた。


「エミリアはそのままホーリーの魔法をキープしていてくれ、俺が魔法の威力をあわせる」

「わかった」


 私よりも魔力が強いヘルフリートが私の力に合わせてくれるんだ。私は作り上げたホーリーの魔法を、中に浮かせてキープしていると、ヘルフリートは私の魔力と同等のホーリーの魔法を作り上げた。


「これで準備は出来た。あとは全く同じタイミング、速度で扉に向けて放つだけだ。俺が念話で合図をするから、合図したタイミングで魔法を放ってくれ」

「速度はどうしたら良いの?」

「俺がエミリアの魔法の速度に合わせるよ」

「わかった……」

「それじゃ行くよ……」


 私は空中に作り上げたホーリーの魔法を、杖で制御しながらヘルフリートの合図を待つ。


『今だ!』


 ヘルフリートの合図と共に、ホーリーの魔法を放つと、二つの魔力の塊は物凄い速度で扉に激突した。扉に掛かっていた仕掛けが解除されたのか、古ぼけた扉が勢い良く開いた。扉が開くと、部屋の奥からは強い聖属性の魔力が流れ出した。この魔力の感じはヘルフリートの魔力だ……。


「ついにこの時が来たか……自分自身の全ての能力を封じ込めた魔石との再開……」

「ずっと待ってたんだよね」

「ああ、エミリアの様な人が現れるのを待っていた。さぁ、魔石を取りに行こうか」

「うん……」


 ついにヘルフリートの魔石が手に入るんだ。魔石を手に入れたら、魔力1000を目指して魔法の練習を続ければ良い。私達はヘルフリートの魔石がある部屋へ進んだ……。

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