第五十八話「フレーベルを目指して」
朝目が覚めると、部屋にはヘルフリートの姿がなかった。フィリアは気持ちよさそうにすやすやと眠っている。一体どこに行ったのだろう? 今日はヘルフリートの生まれ故郷であるフレーベルを目指して出発する日だ。私はヘルフリートを待ちながら、天空の魔法陣の練習を始めた。一時間程魔法の練習をしていると、ヘルフリートが両手一杯に荷物を抱えて持ってきた。一体何を買ってきたのだろう。
『エミリア、朝から魔法の練習をしていたのかい?』
「うん。ヘルフリートはどこに行っていたの?」
『買い物をしていたんだよ。フィリアのための防具を買ったんだ』
またフィリアのための買い物か……まぁ、仕方がないとは思う。ヘルフリートがフィリアを揺すって起こすと、フィリアは嬉しそうにヘルフリートを抱きしめた。
「おはよう! ヘルフリート!」
『おはよう。フィリア、君にプレゼントを買ってきたよ』
「プレゼント?」
ヘルフリートは大きな布に包まれたプレゼントをフィリアに渡した。きっとあの中には防具が入っているのだろう。フィリアは楽しそうに布を解くと、銀色の美しい鎧が姿を表した。
『これは魔術師向けに軽量化されたメイルだよ。ガントレット、グリーヴ、メイルの三点セット。魔力を強化する効果がある』
「綺麗な防具……本当にもらってもいいの?」
『勿論だよ。フィリアは俺が召喚したんだから、俺が守らきゃならないしね』
「ありがとう! 装備してみてもいい?」
『うん。装備してごらん』
フィリアは新しい装備を身につけると、小躍りして喜んだ。フィリアばっかり……。
「ヘルフリート! 本当にありがとう!」
『良いんだよ。さぁ、今日はフレーベルに向けて移動しなきゃならない。支度をしようか。エミリア、俺をファントムナイトに再召喚してくれるかい?』
「うん……」
私はヘルフリートをファントムナイトとして再召喚すると、フィリアはヘルフリートの体を不思議そうに触った。
「ヘルフリートなんだよね? 面白いなぁ。どんな体にでもなれるんだから」
「エミリアの魔力で扱えるモンスターの魔石を賢者の書に登録すると、俺はモンスターとしてこの世界に姿を現す事が出来る。俺はエミリアが居なければただの返事をする本でしかなかった……」
ヘルフリートは懐から小さな箱を取り出すと、私に箱を渡してくれた。
「あまりお金がなくて……これしか買えなかったけど……」
箱を開けてみると、美しい銀の首飾りが入っていた。中央には魔石が嵌っている。なんの効果も持たない空の魔石ね。これを私のために……?
「エミリアによく似合うと思ってね。女性に装飾品をプレゼントしたのはこれで二回目だ」
一回目は私のための指輪。二回目も私のための首飾り。さっきまではフィリアばっかりと思っていたけれど……ヘルフリートは私のためにもちゃんとプレゼントを用意してくれていたんだ。
「記念日でもないのに、どうしてプレゼントを?」
「日にちなんて関係さないさ。あげたいからあげるんだよ」
ヘルフリートは首飾りを私の首につけると、両手を首飾りの魔石に向けた。
『リジェネレーション……』
ヘルフリートが魔法を唱えると、首飾りの魔石には強い聖属性の魔法が宿った。確かリジェネレーションは持続的に回復をする魔法だ。ヒールよりも難易度が高い魔法で、回復量は術者の魔力に比例する。
「名前は約束の首飾り。エミリアが敵から攻撃を受けると、魔石に込められている魔法が自動で発動する。俺は墓地でエミリアを攻撃されて、自分の力の無さを実感した。いくら過去に賢者だったとしても、今の俺はただのモンスターでしかない。俺が傍に居なくても、エミリアを守る方法はないかとずっと考えていたんだ」
ヘルフリートは私の手を握り、私を見つめた。
「もう誰にもエミリアを傷つけさせないために……」
「ヘルフリート……ありがとう。本当に」
「ああ、これからも俺が守り続けるよ。エミリア」
ヘルフリートは力強く私の体を抱きしめた。彼の心地の良い魔力が私の体に流れてくる様だ。
「エミリアとヘルフリートって本当に仲が良いんだね」
「ああ。俺はフィリアとももっと仲良くなりたいと思っているぞ!」
「それなら良かった!」
ヘルフリートはフィリアの頭を撫でると、彼女は楽しそうにヘルフリートに抱きついた。何だかさっきまでフィリアに対して嫉妬していた自分が馬鹿みたい。結局、私が心からヘルフリートの事を信用していなかったから、馬鹿みたいに嫉妬してしまったんだ。ヘルフリートはフィリアを召喚したからといって、浮気している訳でも無い。恋人は私なんだ。 もっと自信を持たないと。
「さぁ、出発しましょう! フレーベルへ!」
「そうだな!」
「うん!」
私達は宿を出て、荷物を馬車に積み込むと、フレーベルの町に向けて出発した……。
〈二週間後〉
フレーベルまでの道中で、私とフィリアは毎日魔法の訓練を行った。早朝に起きて魔法の練習を一時間した後、馬車を走らせて旅路を進む。夕方まで馬車を走らせると、適当な場所で野営を行う。ヘルフリートが野営の準備を担当する。料理や周辺の安全確認等だ。ヘルフリートの料理はいつも美味しく、量も多い。町を訪れた際には、保存が利く堅焼きパンや乾燥肉、乾燥フルーツ等を買い溜めておき、道中で見つけた野生動物を狩って調理する事が多かった。夕方に移動を終えると、すぐに私とフィリアは魔法の練習をした。
私はヘルフリートから魔法反射の魔法陣を教わり、アイスジャベリンや魔法陣の書き取り等、基本的な魔法を繰り返し練習した。フィリアは火属性と土属性の魔法を練習している。土属性はアースとストーンジャベリンを繰り返し練習し、火属性の魔法は、ファイアとファイアボール、エンチャント・ファイアを覚えた。
ヘルフリートはファントムナイト姿で、ホーリーの魔法や剣の稽古をしている。たまにアイスドラゴンになってモンスターを狩りまくる事がある。上空からアイスジャベリンを放ち、次々とモンスターを倒す。
私達はフレーベルまでの道で、ひたすら己を鍛え続けた。ギレスの町から二週間程馬車で移動すると、ついに目的の町、フレーベルに到着した……。
〈フレーベル到着時ステータス〉
エミリア・ローゼンベルガ―
Lv.5:力…235 魔力…530 敏捷…300 耐久…345
属性:【聖】【氷】【水】
聖属性魔法:キュア ヒール バニッシュ ホーリー ホーリーシールド ホーリーソード エンチャント・ホーリー ナイトの召喚
氷属性魔法:アイス アイスジャベリン アイスシールド アイスエレメンタル
水属性魔法:ウォーター ウォーターボール
魔法陣:魔法反射の魔法陣 大地の魔法陣 罠の魔法陣 氷の魔法陣 氷霧の魔法陣
杖:ユニコーンの杖(魔力+30)
防具:ホワイトパラディン・シルバーメイル(耐久+30 魔力+30)
防具:ホワイトパラディン・シルバーガントレット(耐久+20 魔力+15)
防具:ホワイトパラディン・シルバーフォールド(耐久+20 魔力+15)
防具:ホワイトパラディン・シルバーグリーブ(耐久+20 魔力+15)
防具:霊力のローブ(魔力+20)
装飾品:妖精族の指環(魔力+10)
装飾品:約束の首飾り(魔力+20)
特殊効果:ホワイトパラディンの誓い(魔力回復速度上昇)
特殊効果:賢者の誓い(自動回復・魔力回復速度上昇)
妖精・フィリア
Lv.4:力…210 魔力…410 敏捷…280 耐久…400
属性:【土】【火】
土属性魔法:アース ストーン アースエレメンタル ストーンゴーレムの召喚 ストーンジャベリン
火属性魔法:ファイア ファイアボール エンチャント・ファイア
武器:創造の杖(魔力+25)
防具:ルーンメイル(耐久+15 魔力+20)
防具:ルーンガントレット(耐久+15 魔力+20)
防具:ルーンブーツ(耐久+15 魔力+20)
装飾品:フィリアの指輪(魔力+20)
ファントムナイト(賢者ヘルフリート・ハース)
Lv.5:力…570 魔力…565 敏捷…585 耐久…575
属性:【聖】
聖属性魔法:ホーリークロス ホーリーアロー エンチャント・ホーリー ホーリー バニッシュ キュア リジェネレーション ヒール ホーリーソード ホーリーシールド
魔法陣:大地の魔法陣 聖域の魔法陣 魔法反射の魔法陣 罠の魔法陣
武器:プラチナロングソード(魔力+30 敏捷+20)
武器:ルーンダガー(魔力+40)
防具:ファントムナイトの魔装
防具:ハース魔法学校のマント(耐久+15 魔力+15)
装飾品:ティアナの鞄
装飾品:フィリアの指輪(魔力+20)
装飾品:ハース魔法学校の銀時計(魔力+10)
特殊効果:ファントムナイト(レベル3までの全ての闇属性攻撃を無効。闇属性攻撃に込められた魔力を聖属性魔力として吸収する)
ガーゴイル(賢者ヘルフリート・ハース)
Lv.3:力…280 魔力…300 敏捷…375 耐久…310
属性:【火】
火属性魔法:ファイア エンチャント・ファイア ファイアボール
スキル:ファイアスラスト
武器:ルーンダガー(魔力+40)
防具:ハース魔法学校のマント(耐久+15 魔力+15)
アイスドラゴン(賢者ヘルフリート・ハース)
Lv.3:力…370 魔力…380 敏捷…335 耐久…350
属性:【氷】
氷属性魔法:アイス アイスジャベリン アイスシールド