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魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第三章「フレーベル編」
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第五十二話「召喚書」

 ギレスの冒険者ギルドでクエストを受けた私達は、一度宿に戻って支度をする事にしたヘルフリートはファントムナイトの姿に戻り、部屋に置いておいたロングソードを腰に差した。私はホワイトパラディンの全身装備で身を固め、ローブを羽織り、ベルトにユニコーンの杖を差すと準備は完了した。


「エミリア。闇属性のモンスターとの戦闘は、聖属性の魔法の使い手である俺達の方が有利だろうが、敵の数が分からない。慎重に狩りをしよう。万が一、危なくなったら聖域の魔法陣を使う」

「聖域の魔法陣?」

「ああ。聖属性の魔法陣で最も防御力が高い魔法だよ。魔法陣内の全ての者を外部からの物理攻撃、魔法攻撃から守る魔法陣だ。防御の効果は、魔法陣作成時に込められた魔力に比例する。300の魔力を込めて魔方陣を作れば、聖域の魔法陣は300以下の物理攻撃、魔法攻撃を全て打ち消す」

「それって……最強なんじゃない?」

「ただし、魔法陣の中に入ってしまえば、魔法陣の外に対して、いかなる魔法も使う事が出来ないんだ。一時的に魔法陣の中に逃げ、体力と魔力を回復させるための魔法陣だな」

「その魔方陣を使う機会が来なければ良いけれど……」

「うむ。聖域の魔法陣は敵が複数居る時には、逆に戦いずらい環境を作ってしまう」

「それはどうして?」

「魔法陣の中で休んでいる間、敵は魔法陣を書く事も出来るし、仲間を呼ぶ事も出来る。そして、攻撃魔法の準備をする事だって出来る。使い所の難しい魔方陣だ。基本的には、戦闘中に怪我を負ったメンバーに対する防御として使われる」


 聖域の魔法陣か。まだまだ私が知らない魔法陣は多いんだな。学校でも様々な魔方陣を教わるけれど、私は天空の魔法陣、大地の魔法陣、氷霧の魔法陣を練習する事が多い。魔法陣はこの三種類で十分だと思っていたけど、そうでもないみたいね。出発の前に賢者の書でヘルフリートのステータスを確認しておこう。


 ファントムナイト(賢者ヘルフリート・ハース)

 Lv.5:力…520 魔力…480 敏捷…510 耐久…520

 属性:【聖】

 聖属性魔法:ホーリークロス ホーリーアロー エンチャント・ホーリー ホーリー バニッシュ キュア リジェネレーション ヒール ホーリーソード ホーリーシールド

 魔法陣:大地の魔法陣 聖域の魔法陣 魔法反射の魔法陣 罠の魔法陣

 武器:プラチナロングソード(魔力+30 敏捷+20) ルーンダガー(魔力+40)

 防具:ファントムナイトの魔装 ハース魔法学校のマント(耐久+15 魔力+15)

 装飾品:ティアナの鞄 ハース魔法学校の銀時計(魔力+10)

 特殊効果:ファントムナイト(レベル3までの全ての闇属性攻撃を無効。闇属性攻撃に込められた魔力を聖属性魔力として吸収する)


 確かに聖域の魔法陣の表示がある。それから、魔法反射の魔法陣って何だろう。


「魔法反射の魔法陣は、魔法陣に対して放たれた魔法を、一度だけ術者に反射させる聖属性の魔法陣だよ。作成には大量の魔力を必要とし、魔法陣内に入った者はいかなる魔法からも守られる」

「いかなる魔法からも?」

「ああ、いかなる魔法からもだ」

「それじゃあ、この魔方陣の方が聖域の魔法陣よりも防御力が高いんじゃない?」

「まぁ、そういう考え方も出来るが、この魔方陣は敵の魔法攻撃を一度しか反射させられない。一度敵の魔法攻撃を受けてしまえば、魔法陣は消滅する。それに、物理攻撃に対する防御力は低いんだ」

「だけど、どんな魔法でも反射出来るなら、いろいろ使い道がありそうだよね」

「使いどころが難しい魔法陣だけどね。敵が最強の魔法を放っても反射出来るが、最弱の魔法を放っても反射してしまう。敵が魔方陣に対する知識がある者なら、見破られてしまうだろうな。まぁ、現代にこの魔方陣を知る者は少ないだろうが……」

「そうなの?」

「ああ、俺が作り出した魔法陣だからな。この魔法陣の作り方を後世に残す前に、俺は命を落とした。さぁ、そろそろ出発しようか」


 私達は宿を出ると、ガーゴイルに預けておいたウィンドホースに乗り、ギレスの町を出た。今日の討伐クエストを行う墓地は、ギレスから南西に二時間程進んだ場所にあるらしい。私達だけでレベル4のモンスターを倒さなければならないから、ヘルフリートの足手まといにならないように気を付ける必要がある。


「ヘルフリート、妖精の召喚書っていうのはどんなアイテムなの?」

「名前の通り、妖精を召喚するためのアイテムさ。例えば、召喚書に対して火属性の魔力を注ぐと、火属性の妖精が現れる。術者の魔力の波長と同じ妖精が現れるんだ。まぁ、自分が使える属性と同じ属性の妖精が現れるという事だね」

「ヘルフリートは妖精を召喚した事あるの?」

「いいや、まだ一度も召喚した事はないよ。クエストの報酬として召喚書を頂いたら、妖精を呼び出してみるのも良いかもしれないな」

「どんな妖精が来るかはわからないんだよね?」

「そういう事だよ。そして、妖精の召喚書は一度しか使えない。一度魔力を注いで妖精を呼び出すと、召喚書は消滅する。召喚された妖精と召喚士は契約を交わす事によって、どちらかが死ぬまで共に生きる事になる」


 妖精と共に生きる? 一度しか使えない召喚書で、万が一変な妖精が現れたら大変ね。勿論、契約をしなければ良いのでしょうけど……。


「妖精は強制的に召喚されるんだよね? 無理やり契約をさせられるっていう事?」

「いいや、強制的ではないよ。妖精自身も術者の魔力を感じ取って、召喚を承諾するか、拒否するか選択出来る。妖精が召喚士と契約を結ぶかどうかは、お互いの相性次第だろうな。妖精というのはなかなか扱いずらい種族なんだ」

「そうなんだね……」

「俺のかつてのパートナーだったイフリートは、火属性の精霊の中でも最も強力な精霊だった。精霊も妖精と同様の契約をする」

「イフリートか……ヘルフリートのイフリートは、今何をしているんだろうね?」

「まぁ、奴ならまだ元気に生きているだろう。精霊には寿命が無いからな」

「また会いたいと思わない?」


 ヘルフリートはしばらく悩んだ後、私の方を見て寂しそうに語り始めた。


「イフリートは俺の命を何度も救ってくれた最強の精霊だ。俺がまだレベル7の頃に契約を結んだんだ。会いたくてもイフリートを呼び出せる力がない。最低でも700以上の魔力がなければ、イフリートを呼び出す事は出来ないだろうな」

「魔力700? そんなに強い精霊なんだ……」

「ああ、火属性の攻撃魔法に特化した最高の精霊さ。俺がいつかエミリアに再召喚してもらったら呼び出すとしよう」

「それが良いよ。きっとイフリートも会いたいと思っているはず」

「それなら良いけどね。そろそろ墓地に着くみたいだよ、闇属性の魔力が強くなってきた」


 ギレスの町を出て約二時間、そろそろ目的の墓地に到着する頃だろう。しばらく馬を走らせると、深い森の中に、朽ち果てた墓地が見えてきた。墓地の周辺には低レベルの闇属性のモンスターが大量に沸いている。ついにクエストが始まるんだ。ギレスの冒険者ギルドでは、この墓地にはレベル4のモンスターも沸くと言っていたわね。私達は墓地から少し離れた場所に馬を停め、モンスターに気が付かれないように墓地の付近に身を隠した……。

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