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魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第三章「フレーベル編」
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第五十一話「エールの町」

 迷宮都市ベルガーを出発して二日後、私達はギレスの町に辿り着いた。エールの生産で有名な町、ギレスには多くの冒険者が訪れていた。石畳の町で、背の低い石造りの住宅が建ち並んでいる。私達はギレスに二日滞在し、それからフレーベルを目指して出発する事にした。


 馬車で町を進んでいると、一軒の雰囲気の良い宿を見つけた。宿の入り口には二体のガーゴイルが立っている。短い剣を腰に差して、宿の制服を着ている。まさか、この宿ではガーゴイルが働いているのだろうか? 宿の前に馬車を停めると、一体のガーゴイルが近づいてきた。


「俺達は宿を探しているのだが」

「……」


 ガーゴイルは静かに頷いて入口を指さした。どうやら空室があるみたいね。私達は馬車をガーゴイルに任せると、ガーゴイルは手綱を握り、宿の近くの馬車小屋まで走らせた。随分賢いガーゴイルが居るんだな……。


「さぁ、中に入ってみよう」

「そうね」


 宿の一階は雰囲気の良い酒場になっていた。まだ昼間だというのに、エールを飲んでいる冒険者達が居る。宿のカウンターに進むと、四十代程の女性が私達を歓迎してくれた。


「おや、ファントムナイトのお客さんとは珍しいね。何泊するんだい?」

「二泊で頼むよ」

「一泊十五クロノだよ」


 ヘルフリートは代金を払うと鍵を受け取った。


「部屋は二階の一番手前だよ」

「ありがとう」


 階段を上がり、部屋に入ると、暖色系でまとめられている暖かい雰囲気の空間が広がっていた。二人でもゆったりと寝られそうなベッドに、フカフカのソファ。天井付近には、綺麗な銀色の魔石がフワフワと漂っている。聖属性の魔力が込められた魔石なのか、優しい光を放ち、部屋を照らしている。荷物を置いた私達は、早速町を見て回る事にした。


「エミリア、今日は早めにガーゴイルになろうかな、昼間から食べ歩くのも良いだろう」

「わかったよ」

「ファントムナイト姿ではエールは飲めないからな!」


 ヘルフリートは楽しそうに微笑むと、賢者の書を開いて中に入った。ガーゴイルのステータスが書かれているページを開いて魔力を込めた。賢者の書からは温かい火の魔力が溢れ、ガーゴイル姿のヘルフリートが飛び出した。


『さて、出発しよう』

「うん」

『俺も昼間から酒を飲むぞ!』

「もう、これでも本当に賢者様なんだから不思議だよね」

『今はただのガーゴイルさ。さぁ行こう』


 ヘルフリートはルーンダガーを腰に差し、ティアナから貰った鞄を提げた。鞄の中には魔石とお金が入っているらしい。まずはギレスの冒険者ギルドで魔石を換金した方が良さそうね。


「冒険者ギルドを探そうか。魔石も結構溜まってるし」

『うむ。魔石を換金したら町を見て回ろうか』

「うん」


 私は肩にヘルフリートを乗せて一階に降りた。すると、宿の主人は驚いた表情を浮かべて近づいてきた。


「お客さん! さっきはガーゴイルなんて一緒じゃなかったのに。どうしたんだい?」

「実は、部屋で召喚したんです」

「それで、ガーゴイルと一緒に狩りにでも行くのかい?」

「まず冒険者ギルドに行こうと思います」

「お客さんは冒険者ギルドのメンバーだったのかい? 魔術師かと思っていたわ」

「はい、魔術師として訓練をしている冒険者です」

「冒険者ギルドは町の中央にあるよ。一番背の高い建物だからすぐにわかるはずさ」

「ありがとうございます」


 私は宿の主人にお礼を言うと、すぐに宿を出た。宿の入り口を任されている二体のガーゴイルは、ヘルフリートを見ると、嬉しそうに挨拶をした。何やらガーゴイルの言葉でヘルフリートに話しかけているみたいだけど、ヘルフリートは本物のガーゴイルではないから理解出来ないのね……。


 宿を出た私達は、石畳の町をゆっくりと歩いて回った。小さな喫茶店や、武具屋。魔術師向けのアイテムを取り扱う店など、様々な店が立ち並んでいる。エールの生産で有名な町だからか、酒場の数も非常に多い。


 町を中央に向かって歩くと、一際背の高い建物が見えてきた。きっとここがギレスの冒険者ギルドね。私とヘルフリートはすぐに冒険者ギルドの中に入った。ギレスの冒険者ギルドは、ベルガーの冒険者ギルドよりも広く、職員の数も多い。魔石を換金するために、ギルドの受付の人に声を掛けた。


「すみません、魔石を換金して欲しいのですが」

「はい、それではこちらのトレイに魔石を載せて下さい」


 必要のないモンスターの魔石を全て売る事にした。魔石は全部で三十以上もあり、モンスターの平均レベルは2を超えている。ベルガーのダンジョンで集めた魔石も含まれており、中にはレベル4のモンスターの物もある。


「もしよろしければ、ギルドカードを拝見しても?」

「いいですよ」


 私は懐からギルドカードを取り出して職員に見せた。


 エミリア・ローゼンベルガ―

 Lv.4:力…200 魔力…450 敏捷…250 耐久…310

 属性:【聖】【氷】【水】

 聖属性魔法:キュア ヒール バニッシュ ホーリー ホーリーシールド ホーリーソード エンチャント・ホーリー ナイトの召喚

 氷属性魔法:アイス アイスジャベリン アイスシールド アイスエレメンタル

 水属性魔法:ウォーター ウォーターボール

 魔法陣:大地の魔法陣 罠の魔法陣 氷の魔法陣 氷霧の魔法陣


「ほう……これは素晴らしい。レベル4の魔術師様ですか、魔法の種類も非常に多く、魔力が450を超えているとは……ありがとうございました」


 ギルドの職員は魔石を一つずつ鑑定すると、小さな袋に代金を入れてお金を渡してくれた。魔石の買い取り額は250クロノだった。十分な金額だろう。


「ローゼンベルガー様、この町にはどういったご用件で?」

「観光です。私達、フレーベルの町を目指して旅をしています」

「フレーベルですか。もしお時間があれば、クエストを一つお願いできないでしょうか?」

「クエスト……?」

「はい。実は町の付近に闇属性のモンスターが多く沸く墓地があるのですが、最近、レベル4を超える強力なモンスターが増えつつあるのです。墓地のモンスターを討伐しては頂けませんか? ステータスを見た限り、ローゼンベルガー様は聖属性の魔術師とお見受けしました」

『ヘルフリート、どうする?』

『そうだな、今日一日だけなら良いだろう。敵が闇属性なら、俺達は属性的に有利に戦えるだろう』

「わかりました、そのクエスト、お受けします」

「本当ですか! まだ報酬の話もしていませんでしたが」

『今日一日で、墓地内のモンスターを全て討伐する代わりに、魔石や召喚書を頂けないか聞いてくれるかい?』

『わかったよ』


 私はヘルフリートの希望通り、条件を伝えた。ギルドの職員は他の職員を集めて相談を始めた。しばらくすると職員が戻ってきた。


「わかりました! それでは、墓地内の全てのモンスターを討伐して頂ければ、報酬として二百クロノと、妖精の召喚書をお渡しします。場所はギレスの町から南西に二時間程進んだ場所にあります。それから、これは詳しい場所の地図とポーションです、お使いください」

「わかりました、ありがとうございます。すぐに出発します」


 こうしてクエストを受けた私達は、早速墓地に向けて出発する事にした。

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