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魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第二章「迷宮都市編」
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第四十七話「新たなエレメンタル」

 〈エミリア視点〉


 ヘルフリートから指環を貰った日から、私達はより一層強い絆で結ばれたのか、以前よりも一緒に居る時間が長くなった。学校に入学してから初めての週末がやってきた。週末は学校を出て、ヘルフリートと二人で串焼きを食べたり、夜は酒場で葡萄酒を飲んだりして過ごした。余裕のある週末を過ごした私達は、クライン先生のエレメンタルの試験の日まで、ひたすら魔法の練習を続けた。


 早朝に起床し、授業が始まるまでの時間でエレメンタルの魔法を学び、放課後はダンジョンに潜り、エレメンタルの魔法を中心に使い、四階層までのモンスターを倒し続けた。毎日同じ魔法を使っているからか、私のエレメンタルは日に日に強くなりつつある。ダンジョンには私、ヘルフリート、レオナ、ティアナ、ランドルフの五人で潜る事が多い。たまにリーゼロッテも一緒に来る事があるけれど、リーゼロッテはダンジョンに潜るよりも、学校で魔法の練習をする方が好きみたい。


 ヘルフリートは基本的にファントムナイトの姿でダンジョンに潜る事が多いけれど、気分によってアイスドラゴンやガーゴイルの体になる事もある。アイスドラゴンとしてのヘルフリートの戦い方は非常に残忍だ。モンスターがどれだけ弱くても、最大限の力で仕留めに掛かる。モンスターを見つけるや否や、敵の頭部にアイスジャベリンを放って一撃で倒したり、ゴブリンのパーティーと出くわした時は、氷の息を吐いて敵の足元を凍らせてから、アイスジャベリンで心臓を貫いた。


 私達のパーティーはバランスが良いのか、四階層までの敵なら余裕をもって倒す事が出来る。パーティーでサポート役を任されている私は、シールドの魔法や回復魔法、エレメンタルの魔法で仲間を支え続けた。そんな生活が続くと、ついにクライン先生のエレメンタルの試験の日がやってきた……。



 〈試験日当日〉


 今日も朝早くに目が覚めた。道具屋で働いていた頃からの習慣だ。ガーゴイル姿のヘルフリートを揺すって起こすと、彼は眠たそうに私に抱き着いてきた。こんなに小さくて可愛らしいのに、中身は賢者なんだから不思議だわ……。


『エミリア、今日はクライン先生の試験だったね』

「そうだよ。エレメンタル同士を戦わせる試験。試験というか大会ね。二年生や三年生も見に来るみたいだよ」

『緊張しないでいつも通りやるんだよ』

「うん。ありがとう、ヘルフリート」


 ヘルフリートは緊張するなと言うけれど、全校生徒が見ている中、エレメンタルを戦わせるんだから、緊張しない訳がない。校庭に出て一時間ほどエレメンタルの魔法の練習をした。アイスジャベリンとアイスシールドを持たせたエレメンタルをヘルフリートと戦わせる。私のアイスエレメンタルでは、ヘルフリートに攻撃を当てる事すら出来ないけど、ヘルフリートは「エミリアのエレメンタルは十分強い」と褒めてくれた。


 ついに、クライン先生のエレメンタルの試験が始まった。試験会場は大広間。大広間は普段、食事を頂く場所になっているけれど、催し物等もここで行われるらしい。クライン先生をはじめとする教師陣も全員集まっている。


「それでは、一年生のエレメンタルの試験を行います! 今から名前を呼ぶ五人は前に出てエレメンタルを召喚して下さい」


 クライン先生が一人ずつ名前を呼ぶと、名前を呼ばれたクラスメイトは緊張した面持ちで杖を構えた。エレメンタルを作り上げると、ついに試験の準備が整った。一回戦は五人ずつで戦い、生き残っていたエレメンタルが二回戦に進む事が出来るのだとか。一年生は五十人いる訳だから、一回戦は十回行われる。私はクラスメイトの試合を観戦していると、ヘルフリートが私の肩の上に飛び乗った。


『エミリア、氷の魔法陣と氷霧の魔法陣を使っても良いよ』

『本当?』

『ああ。今までは自力で強いエレメンタルを作れるように、魔法陣を使ったエレメンタルの召喚は禁止していたけど、今日は使っても良い。最高のエレメンタルを作るんだ』

『任せておいて』


 私は念話でヘルフリートに話すと、私とヘルフリートの念話を聞いていたレオナが近づいてきた。


「ヘルフリート……絶対エミリアには負けないからね!」

『ああ、頑張るんだよ。応援しているからね』

「ありがとう」


 しばらく一回戦を観戦していると、ついに私の番が来た。一回戦の相手は、名前も知らない男子生徒三人とレオナだった。一回戦からレオナに当たるとは……。


「それではエレメンタルを召喚して下さい!」


 クライン先生が叫ぶと、男子生徒達とレオナはエレメンタルを召喚した。三人の男子生徒は、雷、風、石のエレメンタルを作り上げた。どのエレメンタルも人型で、手には武器を持っている。レオナのエレメンタルは火のエレメンタルだ。巨体の虎の様な見た目をしている。まるでサーベルタイガーね。鋭い二本の牙は、どんな鎧でも簡単に噛み砕けそう。全身から強い炎を放ち、エレメンタル達を威嚇している。レオナのエレメンタルが現れた瞬間、大広間で見物していた生徒達は大いに盛り上がった。


「一年生が人型以外のエレメンタルを作るとは……サーベルタイガーのエレメンタルか? あの子がファントムナイトを召喚した子だろうか」

「いや、ファントムナイトを召喚したのは、隣にいる紫色の髪の子だよ」

「そうか、一回戦から楽しめそうだな」


 みんなが私とレオナの話をしている。ついに私の番ね……ヘルフリートは氷の魔法陣と氷霧の魔法陣を使っても良いと言っていたけど、多分、氷属性のエレメンタルでは、レオナの火属性のエレメンタルを倒す事は出来ない。それなら、聖属性のエレメンタルを作り上げるしかない。私はすぐに作戦を変更した。聖属性のエレメンタルなんて一度も挑戦した事が無いけれど、やるしかないんだ。ヘルフリートが見ているんだ……絶対に失敗は出来ない。


 まずは聖属性の魔力を強化する事にした。私は書き慣れた大地の魔法陣を足元に書いた。魔法陣の中に入ると、莫大な量の聖属性の魔力が私の体に流れ込んだ。


「おいおい……あれって大地の魔法陣か? 九百年以上前に作られた魔法陣じゃないか。書物の中でしか見た事が無かったが、まさか新入生が使うなんて」

「一年の女の子に天才が居るとは聞いていたが、あの子の事か? 確か名前は、エミリア・ローゼンベルガーだったな」

「ああ、そうだ。現代の賢者ハースとか呼ばれているみたいだよ。賢者ハースが得意だった大地の魔法陣と、氷霧の魔法陣を使いこなすからだって」


 先輩達が私の噂をしている……だけど、今は集中してエレメンタルを作らなければならない。なるべく強い人型のエレメンタルを作り、剣と盾を持たせよう。私は頭の中で理想の剣士を想像した。レオナのサーベルタイガーに勝てる強さを持ち、私の事を守ってくれるエレメンタル。魔法陣から体に流れ込んできた聖属性の魔力を、杖の先から放出させて魔法を唱えた。


『ホーリーエレメンタル!』


 魔法を唱えた瞬間、目の前には見覚えのある姿が現れた。これは……ヘルフリートだ。ファントムナイト姿のヘルフリートが私の目の前に現れた。鎧のデザインもファントムナイトにそっくり。手にはヘルフリートが普段使うロングソードが握られている。勿論、本物のロングソードではなく、聖属性の魔力で作られた物だ。


 遠くの方でヘルフリートが微笑んでいる。私の新しいエレメンタルは、どこからどう見てもヘルフリートだった。これで全員の準備が整った。


「試合開始!」


 クライン先生の掛け声と共に試合が始まった……。

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