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魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第二章「迷宮都市編」
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第四十一話「ゲゼル先生との勝負」

 一時間目のゲゼル先生の攻撃魔法の授業は、今日もウッドマンとの戦闘訓練だった。魔力を強化するための単純な授業よりも、実戦形式で授業を行った方が効率良く強くなれると先生は説明していた。


「今日からウッドマンとの訓練中に全ての魔法の使用を許可します。ただし、教室内を破壊する範囲魔法の使用、呪いの使用は禁止します。それから、武器の使用も許可します。皆さんにとってかなり有利な条件になったでしょう。それでは始めて下さい!」


 武器の使用を許可すると言っても、生徒の中で杖以外の武器を装備している人なんて殆ど居ない。女子生徒で唯一武器を持っているのはレオナだけ。男子生徒の中には剣を使う人も居るみたい。ついに全ての魔法の使用が解禁されるんだ。


 私は授業中にウッドマンと五回戦い、一度だけウッドマンに勝つ事が出来た。だけど、今の私の力ではウッドマンを破壊する事は出来なかった。今日の授業でウッドマンを破壊出来たのは、レオナ一人だけだった。


「ミスブライトナー! 素晴らしかったですよ。少々物理攻撃に頼りすぎている部分はありますが。随分戦い慣れているのですね! これからもあなたの活躍に期待してます!」


 レオナはゲゼル先生から褒められると、恥ずかしそうに尻尾を体に巻き付けた。魔力的には私の方が勝っているはずなのに、私がウッドマンを破壊できなくて、レオナがウッドマンを破壊出来たのはどうしてかしら。


「エミリア。レオナはなかなか良い動きをするな。まるで熟練の戦士の様だ」

「ヘルフリート、どうしたら私もウッドマンを破壊出来るの?」

「魔力を高める訓練を毎日続け、ウッドマンに対して連続で攻撃を当てられるようになれば、あんな木の人形には負けなくなるよ」


 あんな木の人形か。私にとってはとてつもなく強い相手なのに。私は昨日のヘルフリートの活躍を思い出した。レベル4のアラクネを一人で倒したり、大量のモンスターに囲まれても傷一つ負わずに、仲間を助けながら、次々と敵をなぎ倒す力を持つヘルフリートなら、魔法攻撃も仕掛けて来ないウッドマンは「あんな木の人形」なのでしょう。


「ファントムナイトのヘルフリート! 今日もウッドマンと戦ってみませんか? 観戦しているのは退屈でしょう? あなたもミスローゼンベルガ―の召喚獣なのですから、主人と共に授業に参加して良いのですよ」

「本当ですか!」


 ヘルフリートは嬉しそうに剣を抜いて教室の中央に進んだ。生徒達がヘルフリートに注目している。騒がしかった教室は一瞬で静まり返り、皆が固唾を飲んで見守っている。ゲゼル先生はウッドマンの背後に立つと、杖を向けて魔法を唱えた。


『ファイアエレメンタル!』


 ゲゼル先生が魔法を唱えると、教室の床から強烈な炎が上がった。炎の中から武器を持ったファイアエレメンタルが三体現れた。いくらなんでも条件が不利な気がする。


『面白くなってきたね、エミリア。よく見ているんだよ』

『気をつけてね、ヘルフリート』


 ゲゼル先生はファイアエレメンタルに指示を出すと、ファイアエレメンタルは一斉にヘルフリートに対して剣を向けた。


『ホーリーシールド!』


 ヘルフリートが魔法を唱えると、彼の左手には銀色のタワーシールドが握られた。ヘルフリートは盾を構えた状態でファイアエレメンタルに体当たりをすると、ファイアエレメンタルは一瞬で教室の端まで吹き飛ばされた。ファイアエレメンタルが姿勢を崩して倒れ時、ヘルフリートは次の攻撃に移った。


『ホーリーアロー!』


 倒れたファイアエレメンタルに対して魔法を唱えると、銀色の矢が出現した。聖属性の魔力によって作られた矢は、ファイアエレメンタルの体を貫いた。大きなダメージを負ったファイアエレメンタルは、地面に倒れこんだまま動かない。


 ヘルフリートが追い打ちを掛けるために剣を向けると、ウッドマンがヘルフリートに対して武器を振りかぶった。ヘルフリートは軽々と回避すると、盾を使ってウッドマンの頭を殴りつけた。頭を殴られたウッドマンは一瞬姿勢を崩した。ヘルフリートは姿勢を崩したウッドマンを踏みつけると、敵の自由を奪った。足で敵を押さえつけたまま、剣をウッドマンの頭部に突き刺すと、ウッドマンは息絶えた。


 残る二体のファイアエレメンタルは、ヘルフリートに対して攻撃を仕掛けるも、攻撃はまるでダンスでも踊るかの様に受け流された。まるで剣を持ちながら舞っているみたい。ファイアエレメンタルが全力で攻撃を仕掛けているにも関わらず、ヘルフリートは楽しそうに敵の攻撃を受け流し、隙を見つけては盾で敵の体を吹き飛ばす。盾の攻撃によって吹き飛ばされたファイアエレメンタルは、遠距離からのホーリーアローの餌食になり、体には無数の風穴があいた。全てのファイアエレメンタルを倒し終えると、ゲゼル先生がヘルフリートに歩み寄り、頭を下げた。


「私はあなたを倒すつもりでエレメンタルを作りましたが、エレメンタル程度ではあなたに傷を負わせる事も出来ないのですね」

「私を倒したければ本物の召喚獣を用意して下さい」

「その様ですね……これからも生徒の手本として授業に参加して下さいね」

「勿論です。ゲゼル先生」


 ゲゼル先生はヘルフリートと硬い握手を交わすと、教室からは熱い拍手が湧きあがった。


「やっぱりローゼンベルガ―さんの召喚獣ってとてつもなく強いんだな! 昨日、ダンジョンでアラクネを倒したっていうのも、ローゼンベルガ―さんの召喚獣らしいぞ」

「本当? アラクネってレベル4のモンスターじゃなかった?」

「ああ。冒険者ギルドではローゼンベルガ―さん達の話題で持ち切りだよ。ハース魔法学校の一年生が率いるパーティーが、レベル4の闇属性のモンスターを討伐したって!」

「あんなに強い召喚獣が素直に従っているなんて、ローゼンベルガ―さんはやっぱり凄いな……」


 クラスメイトが私とヘルフリートの噂をしている。アラクネを倒した事が既に学内に広がっているんだ。レオナがヘルフリートに賞賛の眼差しを向けている。彼女はヘルフリートに好意を抱いているに違いない。クラスにはレオナに対して色目を使う男子も多い。そんなレオナは、男子生徒には目もくれずに、ヘルフリートだけを見つめている。どうしてこうなるんだろう……。


「エミリア。二時間目の授業に行こうか」

「うん……」

「確か、二時間目の授業はベル先生の回復魔法の授業だね。どんな先生なんだろうか。男子生徒が夢中になる美人の先生か……楽しみだな」

「そうだよ。二時間目がベル先生の回復魔法、三時間目もベル先生で防御魔法、四時間目はクライン先生の薬学。皆美人で良かったね!」

「まぁ……美人は良いな」

「ヘルフリートの馬鹿! まったく! 本当に馬鹿なんだから!」


 私はヘルフリートを教室に残し、一人で二時間目の授業が行われる教室に移動した……。

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