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魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第二章「迷宮都市編」
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第三十八話「闇属性の悪魔」

 ダンジョン三階層で私達を待ち構えていたのは、闇属性のモンスター、アラクネだった。どう見ても低レベルのモンスターではない。今まで人生で遭遇したモンスターの中で、最も禍々しい魔力を持っている。この空間に居るだけで気分が悪くなりそう。


 アラクネは私達に警戒しながらモーニングスターを構えている。ヘルフリートはロングソードを構えてアラクネとの距離を詰めている。アラクネが小さな声で魔法を呟くと、草原からは無数の闇属性のモンスターが沸いた。スケルトンとレッサーデーモンだ。ざっと数えても四十体は居る。


「俺がアラクネを殺す! お前達は他のモンスターを頼んだ!」


 ヘルフリートはそう言うと、アラクネに剣を向けて駆けた。ディーゼル三兄弟は私とティアナを守るようにモンスターに向けて武器を構えた。ティアナは目に涙を浮かべて震えている。


 果たして私達はここから無事に生還できるのだろうか。後方を確認してみると、既に扉は閉まっており、扉の前ではレッサーデーモンが武器を持って牙を剥き出しにしている。恐ろしい……。


 最初に敵に攻撃を仕掛けたのはランドルフだった。銀の槍をレッサーデーモンの喉元に突き立てると、レッサーデーモンは一撃で命を落とした。ついに戦いが始まった。


 私はモンスターの足元に、次々とアイスの魔法を放ち、足を凍らせて自由を奪った。しかし、モンスターの数が多すぎる。私のアイスの魔法では、全てのモンスターの動きを止める事は不可能。幸い、敵は全て闇属性のモンスターだ。大地の魔法陣を書いて聖属性の魔力を強化出来れば、勝算はあるかもしれない。


「ティアナ! 時間を稼いで頂戴!」

「そんな余裕ないよ!」

「魔法陣を書くから!」


 ティアナは小さく頷くと、私に襲い掛かるモンスターを駆逐してくれた。大急ぎで足元に大地の魔法陣を書き上げ、魔法陣の中に入ると、魔法陣は膨大な量の聖属性の魔力を私に注いでくれた。仲間の武器に杖を向け、魔力を放出した。


『エンチャント・ホーリー!』


 この魔法を使うのは初めてだけど、何度もヘルフリートがエンチャントを使うところを見てきた。魔法を唱えた瞬間、仲間達の武器は強い銀色の光を帯びた。聖属性のエンチャントが掛かっている。魔法は成功したんだ……。


 ランドルフは強化された槍で、次々とレッサーデーモンを突き殺している。ヴィクトールとバルタザールはロングソードを振り回して敵に切りつけているが、攻撃はなかなか当たらない。二人はランドルフほど武器の扱いには慣れてないみたいね。


 ティアナは常に私の傍に居てくれて、敵の攻撃から私を守ってくれている。スケルトンがティアナに対して攻撃を仕掛けると、ティアナは瞬時に武器を使って攻撃を防いだ。私はティアナを襲うスケルトンにホーリーの魔法を放った。銀色の大きな魔力の塊は、スケルトンの頭部に当たると、一撃で骨を砕いた。


「ティアナ! 敵の注意を引いて頂戴! 私が敵を倒す!」

「わかった!」


 それから私とティアナは、次々とスケルトンやレッサーデーモンを狩り続けた。敵の数が徐々に少なくなり始めた頃、ランドルフの呻き声が聞こえた。広い草原の中から、ランドルフの姿を探すと、腹部にはレッサーデーモンの剣が突き刺さっていた。ランドルフは多量の血を流しながら倒れている。


 ヘルフリートがランドルフの様子を確認するため、ふり返った瞬間、アラクネの鉄球がヘルフリートを捉えた。アラクネの攻撃をもろに喰らったヘルフリートは、一撃で遥か彼方まで吹き飛ばされた。


 私はランドルフに向かって走り、ヒールの魔法を唱えた。ランドルフ腹部の傷は一瞬で塞がったが、意識を失っている。アラクネはモーニングスターの先端の鉄球を振り、私に向けて攻撃を仕掛けてきた。


『アイスシールド!』


 アラクネの攻撃を防ぐために氷の盾を作り上げると、アラクネの鉄球は私のアイスシールドをいとも容易く破壊した。その時、ヘルフリートが遥か後方から剣を向けて魔法を唱えた。


『ホーリークロス!』


 ヘルフリートが魔法を唱えた瞬間、聖属性の魔力の塊が空を切った。ヘルフリートの攻撃はアラクネの胴体を捉えると、蜘蛛の下半身は破裂し、辺りに紫色の体液をまき散らした。下半身を破壊されたアラクネは、鬼のような形相を浮かべ、上半身だけの体で地面を這いつくばっている。


 ヘルフリートは一瞬でアラクネとの距離を詰め、アラクネの頭部に剣を突き立てた。悍ましい呻き声が室内に(つんざ)くと、アラクネは息絶えた。彼女が使用していたモーニングスターと、アラクネの魔石だけが地面に残っている。


 ヘルフリートは魔石を拾い、剣を鞘に仕舞った。地面に落ちているモーニングスターを拾い上げると、残りのモンスターを次々と倒して回った。戦いが終わった頃、ランドルフが目を覚ました。


「勝ったのか……? 師匠」

「ああ。敵は全て殺した」

「そうか……」

「動けそうか?」

「大丈夫だ」


 全ての敵を倒し終えた私達は、目的の薬草を摘んでから、戦利品を集めた。今日一日で魔石は七十個以上貯まり、敵が身に付けていたアイテムもかなりの量になった。私達は分担して戦利品を担ぐと、すぐにベルガーの町を目指して道を進んだ……。

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