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魔法幻想紀 - 迷宮都市の賢者と魔術師 -   作者: 花京院 光
第二章「迷宮都市編」
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第三十五話「学長との出会い」

 〈四時間目・エミリア視点〉


 四時間目は学長のアレクサンダー・クロス先生の魔法研究の授業だ。授業は一年生の教室で行われる。一体どんな内容の授業なのだろうか。教室でヘルフリートを待っていると、彼はすぐに戻ってきた。


「お待たせ、エミリア」

「おかえり。ティアナのお母さんの具合はどうだった?」

「悪くはないよ。薬草と十分な栄養があればすぐに治るだろうな。それで、四時間目の授業はまだなのかい?」

「もうすぐだと思うよ」

「俺はこの授業のために帰ってきたんだ」


 ヘルフリートがそう言った瞬間、教室の扉が開いて先生が入ってきた。黒い鎧を身に纏い、長く伸びた金色の髪を結んでいる。ハース魔法学校の紋章が入ったマントを羽織っていて、腰には剣と杖を差している。背は高く、体格も良い。


 先生は軽やかな足取りで教壇まで進むと、私達の顔を一人ずつ確認するように見つめた。先生が教室に入っただけで場の空気が変わったような気がした。クラスメイト達は、存在感のある先生に圧倒されている。


「私は学長のアレクサンダー・クロス。レベルは7で、火と土の魔術師。一時間目に皆が戦ったウッドマンは私が作った物だ。簡単な自己紹介をしておこうか。年齢は四十五歳。趣味は森で木を伐り、ウッドマンを作る事だ。それから召喚獣のドラゴンと旅に出る事が好きだ。週に一度はドラゴンと過ごす時間を設けている。ハース魔法学校には五年前に就任した。その前は大陸中をドラゴンで飛んで回り、冒険者ギルドの討伐のクエストを受け、生計を立てていた。私の簡単な自己紹介は以上だ」


 そういうと、学長のクロス先生は私を見つめた。


「さて、次は皆に自己紹介をしてもらおうか。そうだな……最近教師の間で話題になっている、ミスローゼンベルガ―! 自己紹介を頼むよ」


 え? いきなり私? 普通こういう時は出席番号順じゃないのかな。なんだか緊張するけど、私はヘルフリートを連れて教壇に立った。


「ドーレス村出身のエミリア・ローゼンベルガーです。最近魔法の練習を始めました。魔法学校に入るまでは道具屋で働いていました。将来の目標は、呪いを解ける魔術師になる事です」

「ドーレス村出身……呪いというと、三年前に闇属性のモンスターに襲撃された村の生き残りという訳か」

「はい。私の両親は今も呪いの影響で正気を失っています。ですが、いつか両親に掛けられた呪いを解ける魔術師になりたいと思っています」

「素晴らしい! そういう心掛けで魔法の練習をする事は実に良い。それから、隣に居るファントムナイトの事も紹介して欲しいのだが……」


 クロス先生はヘルフリートを見ると、ヘルフリートは教壇に立って皆を見つめた。


「私はファントムナイトのヘルフリート。エミリアの召喚獣だ。主人を守る聖属性の騎士。エミリアと共に力をつけて、悪質なモンスターを討伐し、この大陸をより住みやすい大陸に変える事が目標だ」

「素晴らしい志を持つファントムナイトだな。ゲゼル先生がマントを渡した理由が分かったような気がしたよ。ミスローゼンベルガ―は戦闘魔法の授業で、ゲゼル先生のファイアエレメンタルを倒し、召喚獣のファントムナイトは一時間目に俺が作り上げたウッドマンを破壊したのだとか……二人のこれからの成長を楽しみにしているよ」


 自己紹介が終わると、教室からは拍手が沸き上がった。人前に出て話す事はやっぱり恥ずかしいな。だけど、ヘルフリートは普段通りというか、凄く堂々としていた気がする。それから生徒達の自己紹介が終わり、クロス先生が教壇に戻った。


「さて、早速授業を始めるが、皆さんはハース魔法学校はなぜ午前中しか授業を行わないかと、疑問を抱いた事は無いだろうか? 午前中には授業を受け、午後からは生徒自身が学びたい事を探し、自分の意思で魔法を学んで欲しいから。当校は三年制の魔法学校。三年後に魔法学校を卒業した後の事を考え、今から少しずつ魔術師として活動して欲しい」


 クロス先生は生徒達に優しく微笑むと、話を続けた。


「私は幼い頃から土属性の魔法が好きで、どうしたら世のために自分の土の魔法を活かせるか長年考え続けた。二十台の前半の頃の事だが、ドラゴンと共に大陸を旅していた時、私は干乾びた大地を見つけた。大地には朽ち果てた建物が点在しており、全体を見渡してみると小さな町だった。私はどうにかしてその町を再生出来ないか考えた。まずは枯れた大地に土属性の魔力を注ぎ、新たな土に作り変えた。それから水属性の魔術師を連れてきて、土にたっぷりと水を含ませた。枯れた土地は魔法の力によって瞬く間に豊な土地に生まれ変わった。それからしばらくしてその土地を見に行くと、そこでは農夫達は農業を営んでいた。すっかり豊かな土地に変わった町からは、毎年、新鮮な野菜と果物がベルガーの町に出荷されている」


 クロス先生はゆっくりと教室の中を歩いて回った。しばらくすると立ち止まって私の方を見た。


「何を言いたいかと言うと、魔法はモンスターを殺める事も出来れば、土地を豊かにする事も出来る。他人に呪いを掛ける事も出来れば、呪いを解除する事も出来る。魔法の使い道は様々だ。どの様な魔法を覚え、何を成し遂げるかは皆さんの自由だ。皆さんには将来、何を成し遂げたいか、魔法研究の時間を使って考えて欲しい。いくら時間を掛けても構わない。まずは一年生の間に、魔法の力によって何を成し遂げたいか考えるんだ。これが魔法研究の授業の内容だ」


 クロス先生の授業こそ私が求めていた授業だ……。ヘルフリートは私の肩に手を置いている。


『素晴らしい先生だな。ここはやはり最高の学校だ。生徒自身が魔法を学ぶ事について考え、人生で何を成し遂げるか、若い頃から考えておく必要がある』


 クロス先生は羊皮紙を配ると、羊皮紙に自分が学びたい魔法、魔術師としての目標を書くように指示をした。


「羊皮紙に記入が終わったら私に提出するように、期限は一週間以内。目標や学びたい魔法が決まっている生徒は今すぐに提出しても良い。それから個別に学ぶべき事を教えていく」


 私はすぐに羊皮紙に羽根ペンを走らせた。まずは学びたい魔法について。それから魔術師としての目標。



 〈氏名〉

  エミリア・ローゼンベルガ―


 〈習得したい魔法〉

 ・呪いを解除するための魔法。

 ・氷属性の攻撃魔法、防御魔法。

 ・聖属性の回復魔法。


 〈一年の目標〉

 ・新たな魔法を覚え、魔力を高めるための訓練を積みたいです。

 ・魔力を四百三十まで強化します。(現在の魔力:三百七十五)

 ・召喚獣のファントムナイトと共に、ダンジョンの攻略にも挑戦したいです。


 〈将来の目標〉

 ・両親に掛けられた錯乱の呪いを解除出来る魔術師なる事が人生の目標です。



 羊皮紙に記入が終わった私は、クロス先生に提出した。先生はしばらく羊皮紙を見つめた後、羊皮紙の裏側に羽根ペンを走らせた。「魔法研究の時間にダンジョンに潜っても良い」という内容だった。


「ミスローゼンベルガ―。魔法研究の時間にダンジョンの攻略に挑む事を許可するよ。この時間は自由に使ってくれて構わない。校内で魔法の練習をするのも良いだろう。分からない事があればいつでも相談してくれ」

「ありがとうございます。それでは今の時間は学校内で魔法の練習をする事にします」


 魔法研究の時間は、基本的に先生が授業を行う事は無く、生徒達一人一人の個別相談の様な時間だった。私はアイスエレメンタルを作る練習をするために校庭に出た。作り上げたアイスエレメンタルをヘルフリートに鍛えて貰う練習だ。


 私のアイスエレメンタルは、何とか盾を使ってヘルフリートの攻撃を防げるようになったものの、ヘルフリートの攻撃を防ぐだけで精一杯の様だ。ヘルフリートもかなり力を抑えてエレメンタルに攻撃を仕掛けているみたい。しばらく校庭でエレメンタルを作り続けていると、終業のベルが鳴った。大広間に戻って昼食を食べた後、ティアナとの待ち合わせの時間までゆっくり休む事にした……。

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