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撮り鉄ちゃんの夏物語

作者: 増田馬遼

2017年夏、今年も暑い季節がやってきた。


駅のベンチで、シャリシャリっとしたカキ氷なんか食べれたら最高だろうな。


そんな事を考えながら、僕はファンの間では有名な撮影地である根歩川駅で撮り鉄をしている。


カーっと日差しが僕を照りつける。


だらだらっと汗が出る。


首に掛けていたタオルで僕は汗をふいた。


今日もやけに暑いなあ、そう思いながらも僕はお目当てである東営地下鉄浅草線の新型車両5600形の甲種回送を待つ。


13時15分か、そろそろ根歩川駅を通過するはずなんだけど。


13時17分、ようやく駅の接近放送が鳴る。「まもなく、電車が通過します 白線の内側までお下がりください」


ポポポーンと警笛が鳴る。随分面白い警笛だなと僕は思わず笑う。


車両の姿が見えたので、パシャリパシャリと何度もシャッターを切るがさっきの警笛を思い出してしまい、再び笑ってしまった。


そのせいなのか、最初の方に撮った数枚がブレブレになってしまった。


これはよく撮れたなと言わんばかりに、綺麗に編成全体がきっちり画面に映っているのもあったが、光の反射が強過ぎて側面の車体番号が判別できない感じになってしまった。


はあ、今回は駄目だったか。仕方がない。試運転の時にでも浅草線を撮影しに行こうと僕は思った。


ココ.コーラを買おうと自販機に向かう。


今時珍しいビンのコーラを売っている自販機だった。


120円を入れ、ボタンを押しコーラを買おうとした時に1人の女性と肩がぶつかる。


「きゃっ」と女性。「うわっ」と僕。


「すみません、なんか暑さでボーッとしてたみたいで」


そしたらその女性はニコッと笑顔になり「私も暑さでボーッとしてたんでお互い様ですよ、さっきの電車、かわいらしかったですね」

「そ、そうですね」と僕。

笑顔がまぶしかった。


その時、僕はポカンとその場から暫く動けなかった。


なんだろう、彼女のイメージは夏の女神かなという感じがした。


「あっ、あのあなたのお名前は?」僕はとっさに訊いていた。

僕は自分でもびっくりした。


すると女性はふふっと笑ってから「またどこかで会えますよ、鉄道の駅で」と言った。


それから沈黙が続く。


接近放送がなり、小田笑方面の電車がホームにすべりこんできた。


ドアが開き、女性は電車に乗り込んだ。


「あの、それはいつ会えますか?」と僕は訊いたがドアが閉まってしまい声は届かなかった。


電車が根歩川駅を走り去っていく。


ああ、今日はあまり良い日ではないなと僕はため息をつく。


すると、ホームにキラリと光る長い物が落ちていた。


どうもハート形のネックレスのようだ。


名前だろうか、よく見るとイニシャルでM.Uと書いてあった。


M.Uさんか、またどこかで会えたら良いなと僕は思った。


さあ、海の写真でも撮ってこようか。僕は根歩川駅の改札を出た。


それは、僕の夏の始まりだった。


次作 「撮り鉄ちゃんの秋物語」に続きます。





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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。拝読しました。続編を楽しみにしております。 あらすじ……ほぼ内容全部書いちゃってますよね。
2016/07/23 06:23 退会済み
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