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第6章

 だが、こんなに心労が重なる生活が長く続けられるわけがない。

そして、私はチャールズに捨てられたくないと夜まで頑張った。

その甲斐あって、無事に結婚式の後、時をおかずして私は妊娠できた。


「丈夫な男の子が出来るといいね」

「そうね」

 私はチャールズと教会に安産の祈りに行き、その帰りに会話した。

とりあえず、チャールズに捨てられることは無いと、私は安堵した。


 だが、運命は残酷で、結局、私は流産してしまい、心身共に度重なる衝撃のために、冬に入って早々に完全に私は寝込んでしまったのだ。


「大丈夫かい、メアリ」

 チャールズは私を心配して、宰相の仕事も手に着かないらしく、仕事が終わるとすぐに帰宅して私の傍に付き添ってくれて、声をかけてくれる。

「そう心配しないで、すぐによくなるから。それに子どもなら、また、妊娠できると思うし」

 私はそう答えながら、頭の片隅で思った。

確かアニメ版では、メアリは妊娠しなかった。

漫画版では第2部でメアリは妊娠するが、既に第二夫人に落ちた後のことで、今更妊娠しても、と却って狂乱を深める一因になったのだ。

そして、産まれた娘は、実母のメアリはすぐに亡くなるし、実父のチャールズからは愛されずじまいで、1歳にならない内に亡くなったような覚えがある。


 この世界で私は既に妊娠はしている。

ということは、運命は変えられるのが、これで私には分かったのだ。

何事も前向きに考えよう、と自分を励ました。

そして、考えてみれば、原作のメアリはチャールズに甘えることが無かった。

それを思うと、私が気弱になってチャールズに甘えることや結婚早々にチャールズと関係を深めようとしたことから、私にとって良い方向に世界が変わりつつあるのかもしれない。


 だが、そう思ったことが、却ってよくなかったのかもしれない。

私は体は回復したが、しばらくしてから、燃え尽きてしまい、うつ病になってしまったのだ。


「全く父親にも相談できないことが起きたのではないだろうね」

 北山の別荘に隠棲していた父が、私を訪ねてきたのは春になったばかりのことだった。

その頃、私はかなりうつ病をこじらせていた。

心労の最大の原因がチャールズとアンのことなのだから、この2人には当然相談できない。

また、私には心の底から信頼できる侍女もいない。


 最早、心労の原因を父に相談するしかないと私は覚悟を固めた。

そうしないと自分が心労のために自殺をつい考える状況なのだ。

何かきっかけがあれば、自分は自殺しかねない、と自分でも思えていた。

自分が死ねばチャールズとアンが結婚できるし、皆、幸せになると頭の片隅がささやくのだ。


 それに間もなくアンが出産するはずだ。

私は自分が寝込んだり、うつ病に罹ったりでアンがチャールズに妊娠を伝えるのに対して何もできなかった。

原作通りだと、アンの乳母ソフィアが、自分の実家でアンを極秘裏に出産させることになる。

しかし、私が妊娠してチャールズが私に付き添うことが起きる等、原作からかなり流れが変わっているのだ。


 ここは父に頼るしかない。

父は黙って私の話(最も何で私が知っているのかと言うことになるので、私の憶測と言うことで話すしかなかった)を聞いてくれた。


「なるほどな。アンが妊娠しているらしいのに、自分に相談してくれない。相手がチャールズとしか思えないということか」

 父はそっと言った。

勿論、侍女たちは追い払い済で、この場には父と私しかいない。

私は肯きながら小声で言った。

「それ以外の相手なら、私に相談すると思うのです。相手が不誠実だというなら、私とチャールズでアンと結婚するように圧力を掛ける等、幾らでもなりますから」

「そういえばアンの乳母ソフィアが実家にしばらく帰りたいと言っていたな。そういう事情があったからか」

父はぽつんと言った。


 ソフィアは、私達姉妹の実母が亡くなった後に父と関係を持った。

正式に夫人にするかもと私が思ったことさえもあったが、父にとって妻は私達の実母だけだったようで、ソフィアとは召人関係に止まってしまった。

それにソフィアも30歳近くになって玉の輿狙いとささやかれるのを嫌がったのもあった。

だが、今でも父とソフィアの愛人関係が続いてはいる。

ソフィアはやはり原作通りに動いていたのだ。


「分かった。幾らでもお前の相談に乗るし、アンにも気を配ろう。それにしてもアンがチャールズの子を本当に妊娠していて出産したことが公になったら、大公家の親族は大混乱になるな。帝室にも影響が及びかねない話になってしまう」

父は小声で言った。

その言葉に私はりつ然とした。

そうだ、実際にアンの出産は最終的に帝国の混乱を原作で巻き起こしている。

この世界での私の祖国、帝国の混乱を皇帝の孫娘として私は阻止せねば。

私は義務感に駆られた。

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