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第4章

 原作のシーンのあれこれを思い出して、何とかチャールズの心が妹のアンではなく自分に向かないかと考え込んでみた。

だが、考えれば考えるほど絶望したくなった。


 そもそも、後には復讐のために(他にも理由があったけど)帝国への叛乱まで考えるほど惚れ込んでしまったアンをチャールズが簡単に諦めるはずがない。

何とかならないの、と私の心の一部は悲鳴を上げた。


 アンは原作中では帝国貴族社会内では随一といってよい美貌を誇るとされている。

これは(原作中では明確な描写がなかったが)私達の母親譲りのもので、実は私も(自分で言うのもなんだが)アンに似て、それなりの美貌を持つのだ。

だが、私の美貌がどちらかといえば冷たい印象を与えるのに対し、アンの美貌は愛らしさがあり、どんな人をも惹き付けるところがある。

そして、この似ているというのが逆にハンデになってしまう。


 原作中のチャールズの独白によれば、メアリを見るとどうしてもアンを思い出してしまい、却ってアンへの恋心が冷めないということになってしまうのだ。

全く女々しい奴と思わなくもないが、一夜だけの関係で玉のような娘までできたら、18歳の男が運命の女性と思い込むのも無理はない。


 そう考えたところで私は逆転の発想に気づいた。

妻ではなく、チャールズの娘の母になるのはどうだろう。

これはこれで哀しい発想だが、私の誇りも何とか維持できるし、少なくとも原作のように私は捨てられなくて済むのではないだろうか。


 チャールズとアンの娘キャロラインは、私の記憶が正しければ、原作中ではアンが秘密裏に出産した後、チャールズに渡される。

チャールズは自分の母親に、実は交際していた愛人に娘ができたが、愛人は出産の際に亡くなったので、この子を育ててほしいと告げるのだ。

そして、チャールズの母は何も疑わずにキャロラインを育てることになる。


 このお母さんは何で疑わないのと私は思わなくもない。

だが、次期大公におもねる輩はそれなりにおり、チャールズはその1人に相談して偽の母親をでっちあげるのだ。


 そして、キャロラインが可哀想だからと言って、チャールズは何かと実家の母の下で寝泊まりを多くするようになる。

チャールズなりの考えがそれにはあって、メアリと一緒にいるとアンを思い出してしまうから、自分の心の整理ができるまでということなのだ。


 しかし、真実を知らないメアリにしてみれば、愛人との間に子どもが出来たのは止むを得ない、と渋々納得できなくもない。

だが、結婚から1年も経たない内に実家で寝泊まりを多くするのは、どういうことなの、ということで夫婦間に隙間風が吹くきっかけになってしまうのである。

そして、メアリはチャールズとの同衾を嫌がるようになり、ますます夫婦仲が冷えるという悪循環になる。


 更に、原作中では娘キャロラインの近況を伝えるために、アンへチャールズは手紙を送り、アンも娘が気がかりなのでそれに対して手紙を書くということが起こる。

その手紙のやり取りをメアリが知ったことから、メアリは夫が冷たくなったのはアンが夫を誘惑したせいだと激怒してしまう。

これが、全く間違っているとはいえないのがつらいところだ。

そして、終にメアリはアンに姉妹としての絶縁を告げるのである。


 その娘キャロラインを私が引き取るというのはどうだろう。

チャールズは嫌がるだろうが、正妻が夫の亡くなった愛人の子を引き取るというのはこの世界ではよくあることだ。

だから、私から言いだしてはチャールズは反対しきれない。

そうすれば、チャールズは実家に寝泊まりする理由が無くなる。

それに、アンとキャロラインが同じ敷地内の建物にいる以上、チャールズがアンに手紙を書く理由も無くなる。


 その後は、チャールズにアンの形代として私が愛されればいい。

哀しいかもしれないが、それが現実では精一杯かも、私はそう考えた。

結婚式当日にそう決意することにはならなかったと思いつつ、私は前を向いて行動することにした。

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