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イナカオブザデッド  作者: ロボロフ鋤井
STAGE 00:山道
2/21

チュートリアル 01:現状を把握し行動を開始せよ



というわけで車から脱出しました。


事故る前の記憶を手繰ると、確か車の前に飛び出すたぬきが見えたような気がする。

で、華麗なハンドルさばきで避けたはいいものの、道を外れて雑木に突っ込んだと。


おのれたぬたぬめ。森の畜生だけにちくしょう。


とかまあ、くだらないダジャレ?で脳裏をよぎる事故の顛末書とか始末書とかから現実逃避しながらも身体に深刻なダメージがないのを確認し、とりあずは現状把握ってんで外に出てみた。

結果、もう見事に社用車さんは自力復帰不能な状態だった。

車体本体自体はいい。

道路からは2mほどしか離れていなし、高低差だって50cmもない。加えて車へのダメージは見た感じだとフロントガラスと後はボディに擦り傷少々ってところだろう。

でも、悲しいかな四輪車の性能の限界。

タイヤじゃなくてキャタピラとかなら強引に何とか道に戻れるかもしれないが、コイツではクレーンとかの力を借りなきゃ元の道へ戻ることはできそうにない。


現在置かれている状況を冷静に分析、というか途方に暮れること数分、とりあえずは会社に連絡しなきゃと思い、携帯電話を開いてみたが、


「………充電切れ?」


画面は無常にも真っ黒だった。

事故る直前、“圏外”の文字の横には電池マークが半分くらい残ってた気がしたのだが、そんなに長いこと気を失っていたのだろうか?

それともまさか、充電が切れたんじゃなく、事故の衝撃で携帯が壊れたのか?だったら書かなきゃならない書類が1枚追加されてしまう。


とりあえず時間だけでも、と思い、もはや置物と化した社用車のエンジンを再び掛けてみる。ガソリン溢れるような破損はないし、爆発はしないだろ多分!てことで。

普段から時間は携帯電話とかで確認する派な俺だったが、腕時計の必要性を初めて思い知ったのは、どうでもいい余談。


01:04


今はどう考えても夜中の1時じゃないので、普通に昼過ぎだろう。

正午ちょっと前にチェーン店じゃないっぽいコンビニみたいなので買ったオニギリを食べたから、時間的にはそんなに経っていないっぽい。

よし、始末書1枚追加だな!


…。


……うん。


てか、これって助けも呼べないってことじゃないですかー。

うわぁい。





で、だ。

選択肢は2つある。


1つはここで車が通りかかるのを待つ、いわゆるウェイトだ。

幸い、道からすぐ見える場所で事故ってるのでヘルプを求めれば助けてもらえるだろう。

問題があるとすれば、この国道とは名ばかりな山道の、俺が1時間近く飛ばしていたにも関わらず、その間ビタ1台も対向車とかに遭わなかった車通りのなさだ。

………唯一にして最大の大問題だ。


もう1つの選択肢。車を置いて歩いて助けを求める、ウェイトに対してゴーだ。

英語は弱いので合ってるか知らないけど、進む的なアレだ。

幸い、型落ちだけど頼れる相棒・カーナビの事を信じるなら、目的地までは5km。そこまで遥か彼方な距離ではないし、恐らくそこに至るまでに民家の1軒くらいは見えてくるだろう。

問題があるとすれば、野生動物の猛威だ。

事故の原因もたぬきだったし(余所見してたことは置いといて)、鹿とか猿とか出るかもしれない。熊は多分出ないだろうけど、猪とかならワンチャン有り得る。


01:10


時間をもう一度確認し、エンジンを切る。

まだ明るいけれど、時間は有限で止まることなく現在進行形だ。

このまま待ち続け、だーれも車が通りかかってくれなければ、最悪の場合、車中泊も視野に入れなきゃいけなくなる。そいつは勘弁願いたい。

街灯もないような山ん中で一夜を明かすなんて嫌だ。こわい。

ゴースト的な恐怖ではなく、それこそ夜の山なんて野生動物の宝庫だろうし、夜行性でテンションMAXになった猿とかがボンネットの上で夜通しフィーバーしたりしたら泣く自信がある。


うん、やはり“待つ”なんてネガティブな選択肢はアレだ。ダメだな。

進もう。前へ、この道の先へ。決然と、前へ。





思い立ったが吉日というか吉時吉分吉秒。

あんまりノロノロしてるとそれこそ遅くなってしまうし。

とりあえず、割と車体的には軽ダメージな社用車から多くない荷物を取り出す。



装備  :営業用スーツ(ただし上着は会社の青色ブルゾン)

     革靴

     首からぶら下げる社員証

     財布(千円札3枚とクレジットカード2枚入り)

     胸ポケットにいつも入れてあるペン(後ろが認印になっている。便利)


アイテム:営業用カバン

     社用車のキー

     電源の入らない社用携帯電話(故障してる可能性大)

     仕事用の書類一式

     メモ帳

     名刺

     先週から入れっぱなしのハンカチ

     ペン2本

     粗品のタオル(社名入り)

     飲みかけのペットボトル(りんごジュース)

     カバンの底に転がっていたいつのか不明なアメ玉



心許ないって言えば心許ないが、そもそも歩いてどこかへ行く予定はなかったし、仕方がないだろう。

野生動物の驚異は、多分きっと恐らく何もないだろうけど………トランクからL型レンチを取り出してカバンに入れる。念のためだ。


持つべきものは持った。

俺は残っていたりんごジュースを飲み干すと、社用車の中に放り込み鍵を掛ける。

車の中にはもうゴミくらいしか残ってないけど、一応用心だ。

後はメモ帳に「事故ったので助けを呼びに行ってます。ご連絡は<会社の電話番号>にお願いします」と書き、ワイパーの所に挟んでおく。

これで自分がいなくなった後に誰かが通りかかっても大丈夫だろう。多分。


よし、じゃあ行くとしますかね。

ま、テキトーな民家にヘルプミーすれば電話くらいかしてくれるだろ。うん。

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