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 登校して、席につく。

 その途端、ミホナちゃんが問題発言をした。


「今週土曜日にデートに行きたいの」


 ミホナちゃんの元からピンクな頬がさらに赤く染まっている。

 照れてる顔が天使のように可愛いんだけど、なにこの素敵な生き物。ぎゅっとしたい。

 私が同性でなかったなら、(結婚しよ)とか決意しているところだ。

 いやまて。今。なにか大切なこと言われた気がする。

 デート?


「え、誰と?」

 聞くと、ミホナちゃんはなぜかちょっと困った顔をして

「ええと、由紀子ならどこに行きたい?」

 そう質問に質問で返した。


 むむむ。答えるのは慎重になるべきだ。

 デートの相手は誰か? 一番可能性高いのは多分、速水副会長だろう。

 ゲームの数値としての好感度は彼がダントツで高い。

 いやでも、副会長とミホナちゃんのデート……

 危険な香りがする。じゃなくて危険な香りしかしない。

 最低限として人気の多い場所。いや、もういっそ尾行しやすい場所がいいだろう。

 そんな思惑を一瞬で取りまとめて、提案する。


「駅前のショッピングモールとかどうかな?」

「新しく改装オープンしたとこだもんねー」

 笑顔で賛成された。


「好きな洋服のブランド入ってるし、うん。ウィンドウショッピングするだけでも楽しいよねっ」

 大きな目を輝かせて、すごくわくわくした様子で語られてしまう。

 あ。しまった。いや、デートとかまだ早いんじゃないかなって言えばよかった。私の馬鹿。

 とりあえず「そうだよね」と同意して、

「で、誰とデートなの?」

 再度たずねると、ミホナちゃんの頬がかぁぁぁと赤くなる。

 なんだか、胸がちくちくする。

 誰だ。誰なんだ。

 こんなにミホナちゃんに好かれてるのは……。


 希望をこめて聞く。

「会長?」

 ふるふる横に首を振られる。ああああ。なんでなんで。会長すてきだよ会長。


 一応確認のために聞く。

「……まさか、広瀬先輩?」

 一瞬、目を丸くしてふるふるされた。まあ当然だ。あのおっぱい発言男なわけがない。


 あれ。つまり、消去法的に副会長じゃないか。

 理解した途端に、ざあっと頭から血の気がひくのが分かった。

 

「あれ、ちょっと顔色悪いよ?」

「……なんか急に、お腹のあたりに違和感が」

 正確にいうと、胃が痛い。

 

「え、じゃ、保健室行く?」

 わたわたしてるミホナちゃんにすばやく声だけかける。

「うん、お薬だけもらってくる。あ、大丈夫ひとりでいけるよ」

 廊下に足を踏み出して、思う。





 どうしよう。どうしよう。


 こんなときは、


 ミオトさんに相談だっ。





 

 とりあえず、廊下で立ち止まりメールを打つ。

 

「土曜日、ミホナちゃんが副会長とデートするみたいです。

 私と一緒にミオナちゃんを尾行しましょう。ミオトさん」


 ピコピコと、メールを打って送信。

 この乙女ゲームのサポートキャラと黒幕(?)の関係になってから、私とミオトさんはすっかりメル友である。

 即時返信がくる。おお。さすが頼もしい。


「大丈夫ですよ。勘違いです。

 ミホナの話をちゃんと聞いてやってください。

 尾行は物理的に不可能だと思います」

 

 勘違い?

 はてどういうことだろう。

 物理的に不可能ってなんだ。意味が分からなくて、ぎゅっと眉に力が入る。

 ガスマスクしてるから、不可能ってこと? 取ればいいだけなのに。相変わらず強情だ。 

 ……勘違いじゃなかったら、どうしよう。

 私一人で尾行しようかな。

 尾行ってどうやるんだっけ。追いかけるひとの靴を見ながらついていくんだっけ?

 そんなことを思いつつ、

 しょうがないのでもやもやしたまま、席に戻る。


 後ろの席には


「……サポートキャライベントはデートじゃないのね……」


 と携帯を見つめて呟いているミホナちゃんがいた。


 心の中で思ってることを口に出しちゃう癖は治らないらしい。あいかわらずの残念少女ぶりである。

 でも、その呟きを聞いて納得した。


(サポートキャラ。デート。尾行が物理的に無理…。)


 そういうことか。

 思わず顔が緩む。

 胃も痛まなくなった。

 むしろ、胸がほわほわする。


「お腹痛くなくなったよー。ごめんね。心配かけて。」

 そう声をかけると、ほっとした表情になるミホナちゃん。


 そのまま、彼女はきゅっと両手を握って、頬を赤く染め、唇を開く。



「えっとその」

 


「由紀子、土曜日……デート、じゃなくて、その、一緒に買い物に行かない?」


 

 なぜか、ミホナちゃんの声は、震えていてものすごく緊張してた。

 おかしいの。

 断るわけないのにね。



「うん。行きたい。誘ってくれてありがとっ」



 微笑むと、心底ほっとしたようにため息をつくミホナちゃん。

 ああ。いい子だなぁ。

 胸がほっこりと熱くなる。



 

 ミオトくんに聞くところによると、

 ミホナちゃんは小学六年生でいじめにあい、不登校になり、そのままずるずる卒業。

 中学は、最低限の登校しかしない、保健室登校児だった。

 

 高校生になって、「乙女ゲーム」が始まるから、まじめに登校してきたそうだ。


 つまり、その、たぶん、


 今現在、私がミホナちゃんのただ一人の女友達である。

 


 最初は「ゲーム」の「サポートキャラ」ってだけだったような気もするけど


 課題一緒にやったり。


 お弁当一緒に食べたりしてるわけで。


 いつまでも「ゲームのサポートだけしてくれるキャラ」だと思われていたら泣くよ。うん。


 ちゃんと仲良くなれてきたようで、ほっとする。


 

 やぁー。

 さっきのミホナちゃんは本当に可愛い生き物だった。

 にやにやしてしまう。





 ちなみに、


「さっきミホナちゃんがめっちゃくちゃ可愛かった。デレデレ。」


 とミオトさんに自慢メールを送ったら、


「由紀子さん。そんなことは一番僕が知ってます。」


 とだけ返信された。


 筋金入りのシスコンだなぁ。あのひと。知ってたけど。



ミホナちゃん回。

多分次回も。

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