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本当は好きだった。
ずっとずっと好きだったのに―――
どうして私はキミの手を手放してしまったんだろうか?
今でも思う。
キミを手放さなければ、と。
隣に、今でもキミが居たんじゃないかって。
そんなことを……
*
「お前、俺のこと好きじゃないだろ?」
そう言われてフラれたのは何回目だろうか?
「そんなこと、ない」
何度も吐かれた同じセリフに、心が折れそうになりながら震える声で言葉を発した。
違う。
私だって、貴方のこと思ってきた。
本当に本気で。
私なりに一生懸命に愛も注いだ。
それなのに、どうして伝わらないの?
悲しくなってそれが涙に変わろうとするから、目頭をギュッと抑えた。
泣きたくなんかなくて、目を逸らして冷たくなったコーヒーを口にした。
「そんなこと、あるよ。だってお前、俺のこと見てない」
「ないよ! ないったら! 私、私だって……!!」
「じゃあ。今すぐ俺と結婚して」
「―――え?」
想像してなかった言葉に震えながら顔を上げると、神妙な顔をした貴方。
それは、今までに見たこともない表情で、私は思わずドキリとした。
「け……こ、ん……?」
たどたどしく言われた言葉を反芻して、そのまま黙った。
ひたすら、ただ見つめた。
貴方の薬指あたりを、ただ―――
その行為に意味はあるのか分からないけれど、ただそこを見つめたまま目が逸らせなかった。
幾ばくか時間が流れたころ、カタンと音を立てて貴方は立ち上がった。
「あ……」
返事も何もしてないのに、立ち上がってしまった貴方に私は慌てた。
だって、どうして立ってしまうの?
待って、お願い。
ほんの少しでいいから、待って―――
そう思うのに、その言葉すら出ない私に
「ホラ、だから言っただろ? お前には、俺を選べない。終わろう、俺たち」
ポン
私の肩を軽く叩いて、貴方はそのまま去って行った。
―――私はまた、静かにその場に座った。
もう、何も考えたくはなかった。
*