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「あー!! ちょ、ねぇねぇ! 結婚したの!?」
突然声を張り上げたのは、クラス一番目立つギャル系だった女の子。
相変わらず派手で目立つ感じに苦笑した。
君とは全く違うその風貌は今でも健在だ。
「え、マジ!? お前そうなの!?」
その彼女のノリにかぶさるように、君の隣にいた奴が身を乗り出して俺の薬指を凝視してきた。
輝くシルバーの輪。
薬指の根元で輝くそれは、触れられたくないとどこかで思っていた反面、わざとつけてきたものだ。
外そうか……と一瞬思ってしまったけれど、妻に誓って妙なことはしたくないとあえて嵌めてきた。
「結婚、したんだ……」
目の前に当たり前のように座った君。
それだけでもドキドキしていたのに、君の漏らした言葉でドクドクと妙に心臓が脈打つのが分かった。
それに反して少しだけ悲しくなる心。
けど、それはほんの少しで。
光る薬指を見て、ふっと笑った。
家で待つ、彼女のことが思いだされたからだ。
それに気が付いてやっと分かった。
もう、目の前に座る君は―――好きな人じゃなくて、好きだった人、で。
完全に自分の中で消化できたことに。
あのころ、俺は君が好きだったんだってするりと認められた。
俺だってあれからいろいろな付き合いがあったわけで。
それで気が付いたんだ。
好きの始まりに、拘りなんてもっちゃいけないと。
単純でも、ありきたりでも、なんでも。
自分の気持ちを軽いなんて思う必要なんてなかったんだって。
人と比べる必要なんてなかったんだってことに。
俺は初めて君を好きになって、10年経ってようやく気が付いた。
―――好きだったよ、君が。
そう心で呟きながら俺は
「あぁ。つい、こないだだけど」
ニッと笑って、彼女に答えた。
君に対する気持ちを、ようやく消化できた気がした。
どことなく上の空な感じがする君。
だけど、昔と同じ笑顔で俺を見て
「おめでとう」
と言ってくれた。
あの時。
卒業式の日に見ることが出来なかったその笑顔を見て、俺は嬉しくなった。
もう俺の一番は君じゃないけど、それでも君の笑顔はやっぱり素敵だなってそう思った。
―――彼女は、どうしてるんだろうか……
君の笑顔と、そして同窓会というシチュエーションが嫌でも彼女のことを思い出させた。
幼かった俺が、ずるずると引きずって想っていたもう一人。
元気だったら、いいなと思う。
本当に、ただそう思っただけなのに―――
1次会が終わって外に出てみて、俺は固まった。




