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そんなこと、聞いてなかった。
私はただ、会いたかっただけなのに。
だから、余計に衝撃だった。
彼の言葉が。
多分、そう―――
*
暗闇の中目が覚めると、彼の腕がこれでもかというほどに巻き付いていて、重くのしかかっていた。
「どこにも行かないって、言ってるのに」
小さくぼやきながらクルリと体を反転させて、目を閉じる彼の瞼を見つめた。
睫毛が影を作って、高い鼻も顔に影を落としてる。
こんなに整った顔してたっけ?
なんて失礼なことを思い、クスリと小さく笑った。
いつもあるはずのメガネがないだけでこんなに印象がかわるんだな、なんてさらに笑いがこみ上げた。
「こうしてたら、昔と変わらないのにね」
いつまでも伝わりきらない私の心。
それが苦しくて、悲しくて……ズキリと痛みを感じた。
こんなに抱かれて。
身も心も、もうとっくに彼にあるというのに。
どうしてそんなに、不安なの?
「何、考えてるの?」
「キャッ」
いつの間に目が覚めたのか。
彼は起き上がると私の両手をシーツに縫いとめて、至近距離で私を睨むように見下ろした。
それはメガネが無いせいで私の顔がよく見えない彼の癖。
だけどいつもいちいちドキッとしてしまう。
「別に、何もっ」
あなたのことを考えてました、なんて恥ずかしくて言えないから目を逸らす。
だけど、それはまた彼を勘違いへの階段へと誘う―――
「言えないようなこと、俺の横で考えてたの?」
「違っ!」
「もっと、俺で埋めなきゃダメなのかな。お前のこと」
左手が伸びてきて頬をなぞって、クシャリと耳横の髪を握る。
「抱くよ」
左耳にそう囁かれて、声だけでゾクリと身体が震える。
もう、声だけで高ぶってしまいそうな体を隠したくて
「ダメ、待ってっ」
思わず止めに入ってしまうのに
「待てない。全部、俺のモノになるまで。何度でもお前を抱くから」
*




