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気が付いたら思い出していた。
キミのこと。
今さら付き合いたいとかそんなんじゃなくて。
ただ、逢いたい。
―――そう思っただけ。
*
ギシギシと音を立てて彼がベッドを揺らす。
甘い吐息を漏らす私。
熱い吐息を漏らす彼。
どこにも行かないよ。
私は、アナタが好きだから。
何度もそう伝えるのに、腕の中に閉じ込めるようにして私を抱く。
抱かれている間は、私はアナタの腕と言う名の檻の中。
心はとっくに閉じ込められているってことに。
そろそろ気が付いてもいいんじゃない?
「ん……あ、あっ……っ!」
激しく私を揺らせて、彼はいつも不敵に笑う。
「俺の元からどこにも行くな」
そう言って。
今日も私の思考を真っ白にさせる。
いつもそう。
そしてまた、私の心が届かないまま意識を手放した。
*