くじのひと
コンビニ袋を提げて、家路を急ぐ。
8月の、まだ蒸し暑い路地に夕闇が迫る。
新発売のアイスを買ったから、溶けないうちに帰らないと。
家から、コンビニは近い。近いといっても歩けば2、3分はする距離だ。アイスは少し溶けてしまうだろうか。そんなことを思いながら、家とコンビニのちょうど中間地点にある電信柱に差し掛かる。
ここを越えて曲がり角を曲がれば、家はもうすぐそこだ。
袋を少し振って、スキップするように電信柱を通過する。
保護版の角には錆が浮いており、文字も少々掠れている。小学生の時から見慣れている景色。
その、陰に。人がいた。
「……!!」
思わず硬直する。心臓が跳ねた。
男か女か、判別がつかない。やけに猫背だった。
私に背を向けて、電信柱を見つめている。黄色のレインコートのようなものを着ており、その子供っぽい服装がちぐはぐで不気味だった。
スキップをしていたこともあって、若干気まずく。何よりも不気味で、そそくさと通り過ぎた。
(なにあれ、気持ち悪い)
家まではもうすぐだ。
曲がり角を曲がる。あと、200m程で我が家だ。
家に着くという安堵の中で、私の思考は先ほどのちょっとした非日常へと枝葉を伸ばしていった。
例えるならば、安全が保障されたジェットコースターに乗る時のような、怖いもの見たさ。
(そういえば、やけに猫背だったな……。)
印象的だった、黄色のレインコート。顔や「それ以外」を、完全に覆い隠す。強烈な印象。
(でもあれって、猫背っていうよりも……。)
そうして。先程まで、自らの思考に安全バーが掛かっていたことに気が付く。
(……見間違いだよね。一瞬だったし。)
思考の枝葉がざわざわと音を立てて伸びていく。
安全バーが外れたジェットコースターが、加速する。
では、あれは。
どういう形であったか。
寒気が走った。
見間違いなんかじゃない。
私は〈思い出し〉ていた。
電信柱に重なるようにして、尻を突き出すように人が立っていたのだ。
そして、それはまさに、くの字に折れ曲がるように、その場所に直立していたのだった。
そんなはずはない。そんな形では人間は存在しえない。
そして今、何かの見間違えではないことを、私は思い出したのだ。
思わず叫びだしそうになった。
つい先ほど曲がった角の先に。先程まで人間だと〈見間違えていた何か〉は存在するのだ。
血が下がる感覚がする。一刻も早く。この場所を離れなくてはならないと脳が警鐘を鳴らしていた。
ずずず、ずずず。
盆の窪の皮膚が粟立つ。
何かを引きずるような。何かを啜るようなそんな音が。
後ろから聞こえてくる。
足先が凍り付いたように、動かない。
油が足りていない機械のように、ぎちぎちと頭をそちらに向ける。
先程までと同じ景色。先程までの曲がり角。
——何もない。
しかし音だけが、≪後ろから≫聞こえる。
それは、振り向いた方向とは逆。
……先程まで私が向いていた方向。それもすぐ後ろから聞こえてくるのだ。
視界の端で。
「ソレ」と目が合った。