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ハッピーカモーン 6

 章子はタクシーでも使ったのか、10分もせずに、赤ん坊の由香を抱いて章子がやってきた。

 「奈々子!」と章子は一声をあげ、由香を拓也に預け、菜々子の両手を握っていた。

 「心配したのよ。階段から転落して全治2ヶ月なんて。今日は松葉杖で来たの?」と章子は大真面目に気の毒そうな顔をして奈々子に尋ねた。

 「ああ、あれ、嘘なのよ」と奈々子はさらりと言って、座っていた椅子から立ち上がって見せた。

 「この通り、なんでもないの。でもね…」と先ほど拓也に見せたように前髪を上げて、傷を章子に見せた。

 「どうしたのよ、その傷!」と章子が問うので拓也に説明したのと同じように説明をした。

 「全く、そのプロデューサーってとんでもない男ね!」と章子は怒った顔で罵った。

 「まあ、それで、甘い汁を吸っていたのも私よ。自業自得なのよね。でもね…、その男がまた私のマンションに来そうで怖いのよ。そこでね、このカフェで働きながら、2階に住まわせてもらいたいと思っているのよ。それをさっき拓也に相談していて。章子の了解がないと駄目だって」

 章子は少し思案した後に、

 「いいわよ、ねえ、拓ちゃん。キッチンもシャワーもあるし、ただし洗濯機はないから、どこか別のところで洗濯してもらう必要があるけど」

 「わかったわ。洗濯は週1回まとめてマンションでするから」

 「それと、拓ちゃんの仮眠用の布団があるから、それで良ければ使ってちょうだい。嫌だったら悪いけど、持参してきて」

 「その布団貸してくれる。とてもありがたいわ」

 「ええ、もちろんよ」

 女二人の会話は盛り上がり、拓也の出る幕がなくなった。

 「じゃあ、奈々子は、昼間は変装して、アルバイト。夜はここに寝泊り。さて、浜本くんが休憩に行けないから、俺は仕事に戻るぞ」と言って、由香を章子に戻してから階段を下りていった。

 「浜本くん、悪かったな、今度こそ休憩に行って来ていいぞ」と浜本くんの肩を叩きながら言った。

 「店長…」と浜本くんは言うと、拓也の耳元でささやいた。

 「あの女の人。絶対、山本奈々子でしょう。首筋のホクロまで一緒なんだもん」

 「むむ…」と拓也は答えられないでいた。

 「店長の高校の同級生にあんな有名人がいるとはねえ…」と浜本くんは不敵な笑みを浮かべていた。

 「まあ、とにかく休憩行ってきますよ。今日のパンは何にしようかなあ」と浜本くんは能天気に店を後にした。


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