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ハッピーカモーン 4

 「でも、今は何をしたらいいかわからなくなっちゃって…」と奈々子は頬杖をついて言って、そして続けた。

 「ねえ、拓也。このお店始めてから、どれくらい経つの?」と奈奈々子は拓也に尋ねた。

 「俺が三十歳のときに店を立ち上げたから、もう七年も経つね」と拓也はそういえば…そんなに経つのかと思いながら答えていた。

 「高校時代の拓也と、コーヒーなんて想像もつかなかったけど」

 「そうねえ、俺がコーヒーにはまったのは社会人になってからだよ。一人暮らしのアパートの近くに古いカフェがあってね。なんか、陰気くさい店で、初老の男性がオーナーでね。客層も老人ばかりでさ。でもコーヒーは本当に旨くてさ。その店は朝の7時半に店を開けるんだけど、毎朝、目覚ましにコーヒー飲んでいたよ。それからかなあ、コーヒーショップを出そうと思い始めたのは」と拓也は昔を思い返して言っていた。

 「拓也はどちらかっていうと、陸上部のハードルバカで、味覚にはこだわりがなさそうなタイプのように思えたわ」と奈々子はいたずらっぽい顔をして言った。

 「ひどい言いようだな。じゃあ、俺の特製のブレンドコーヒーを飲んでみてよ」と言って拓也は一階の店舗に向かい、店長おすすめブレンドコーヒーを淹れる準備を始めた。コーヒー豆はその日によって違うが、拓也が一番好みの豆を三種類使って、豆を粗挽きする。そして、ネルフィルターを設置したサーバーに挽きたての豆をいれ、ゆっくりと湯を注いでいく。ゆっくりゆっくりコーヒーが滴り落ちるこの瞬間の香りが拓也にはたまらない。そのコーヒーを二階の奈々子に運んでいく。

 「おまちどうさま」と拓也はテーブルの上にコーヒーを置いた。

奈々子は一口飲み乾すと「おいしい!」と感嘆の声をあげた。

 「ふふふ、そうだろ、そうだろ」と拓也は少しばかり得意げになった。

 「拓也にこんな才能があるとはねえ。時代は変わるもんだ。」と奈々子はきょとんとした顔をして言った。


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