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ハッピーカモーン 23

 数週間後、奈々子はテレビの中で2ヶ月前と同じようにニュース原稿を読んでいた。

 「やっぱり、山本さんがいなくなると寂しくなりますね」と浜本くんがカウンターで言った。

 「平凡なコーヒーショップに戻ったわけだ」

 「まあ、そうですけどね」と浜本くんは寂しげに言った。

 拓也が休憩のために2階にあがっても、奈々子の笑顔を見ることはできない。もともと世界が違う人だったのだ。突然やってきて、急にいなくなってしまった美しい人。

 拓也と浜本くんが雑談をしていると、入江さんが店にやってきた。浜本くんが「いらっしゃい」と言って優しい笑顔を入江さんに向けていた。

 浜本くんは最近、入江さんと付き合うようになったそうだ。先日、浜本くんが拓也にとびっきりの笑顔で報告してきたのだ。山本さんのおかげだと何回も繰り返し言っていた。


 入江さんは「店長」とカウンターの中の拓也に声をかけた。

 「あの昨日、本山さんがお店に来られて。店長にこれをと・・・」と白い封筒を渡した。

 「浜本くん、ちょっと、店をよろしく」と告げると、拓也は2階へ急いであがっていった。拓也は封筒を丁寧に開くと奈々子からの手紙が入っていた。見覚えがある美しい文字で書かれていた。


「拓也へ 

突然、私を受け入れてくれて、それなのに、急に挨拶もせずに、お店を辞めることになって、ごめんなさい。

2ヶ月の間、本当に楽しかった。浜本くんにもよろしく言っておいてください。

それと、啓介への伝言をしてくれてありがとう。あれから啓介とも会いました。何とかうまくやっていけそうです。

あの事件があった後、自分が全精力を注いでいた番組も降板となりました。毎日全速力で走っている道が行き止まりとなって、私にも少し考える時間ができました。私はすぐに拓也を思い出しました。拓也に会いたいと思いました。高校時代、私はあなたのことが好きだった。愛とか、恋とか、そんなものだったかわからない。もっと淡い、淡い、純粋な気持ちだったと思います。あなたと今年見た桜は、高校のときに二人で見た桜のように、より鮮やかに美しくみえました。ありがとう。あなたは私の初恋の人。言葉ではうまく言えませんが、啓介はどことなく、あなたに雰囲気がよく似ています。普段のしぐさとか、言い回しとか、一つのことに夢中になるところとか。だから、彼を好きになったのかもしれません。

いつまでも、章子と仲良くお元気で。私もがんばります。また、いつか会える日まで。

PS.コーヒーとても美味しかったです。また変装して突然あらわれるかもね。

山本奈々子」


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