ハッピーカモーン 13
「入江さんはどこの大学に行っているんですか」と浜本くんはすかさず聞いた。拓也は浜本くんの素早さを意外に感じていた。なんだ、俺が出る幕もなく、勝手に仲良くやっているじゃないか。俺よりも数段、女性に対しては積極的じゃないか。
奈々子は二人の様子を伺うわけでもなく、淡々と別のお客様の接客をしていた。
拓也はカウンター内で二人の会話を盗み聞きしていた。内容を要約すると、入江さんはこの近くのK大学の英文科に通っている。(かなり優秀な大学だ。)現在、2年生。将来は英語の先生になりたいので、履修項目がかなり多いらしい。その合間にナツカワベーカリーでアルバイトをしているのだが、勉強やらアルバイトやらで、なかなか自由な時間がとれない。そんな内容だった。
「じゃあ、このお店は大学からもナツカワベーカリーからも近いから、少し時間ができたら、勉強にでも、骨休みにでも来てくださいよ」と浜本くんは言い「僕は週5日の午後はここにいますので」としっかり自分をアピールしていた。
「じゃあ、是非、これからは利用させてもらいますね」と入江さんは笑顔で言った。
ふむ。案外、二人は気が合いそうだし、うまく行くかもしれないなあ。若いっていいなあ。拓也はまたもや心の中で呟いた。
ひとしきり会話が弾んだ後、「お店に戻らなくちゃ」と入江さんが言って、「また来ますね!」と元気な声で店を出ていった。浜本くんも負けじと「また来てくださいねえ」と声をかけていた。
入江さんが帰った後、「今度はデートにでも誘えそうな雰囲気だったな」と拓也は浜本くんを茶化した。
「また、店長は。僕をからかってばかり」と浜本くんは口では不満を言っていたが、横目で見る浜本くんの顔は真っ赤になっていた。




