表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/24

ハッピーカモーン 10

 「お疲れさまです!」と午後になると元気な浜本くんが出勤してくる。

 拓也は「おう、今日もよろしくな」と答え、浜本くんは仕事に集中するというのが、毎日のこの店のパターンだ。しかし、この日は違った。

 浜本くんはいつもより30分近く早くやってきて、いつものような元気な挨拶をしてきた。

 「あれ、今日は早いな?どうした?」と拓也が不思議に思って尋ねると、

 「あ、いつものナツカワベーカリーでチョコデニッシュがセールだったので多く買ってきてしまいました。これ、女性にすごく人気なんですよ。山本・・・、いや本山さんと一緒にどうかなあ、と思いまして。いや、店長も一緒でもいいですけど。」とあのシャイな浜本くんと思えない下心丸見えの発言をしていた。

 「わかった、わかった。あの本山さん。浜本くんが一緒にチョコデニッシュを食べたいって言っているけど」と拓也は奈々子に尋ねた。

 「わあ、ありがとう。一緒にいただくわ」

と奈々子が言うものだから、拓也は奈々子に休憩を取らせることにした。

 浜本くんと奈々子は「チョコデニッシュを食べながら、アルバイト同士仲良く会話をしましょう!」とニコニコしながら2階に上っていった。

 拓也は二人が気になるものの、1階でしっかり仕事をせねばならない。2階で二人の笑い声が聞こえてきた。仲良くやっているようだ。拓也は何か面白くない。拓也は店の注文が落ち着き始めたのを見計らって、コーヒーを淹れて、2階に向かった。

 二人は楽しそうに談笑をしてきた。

 「おう、コーヒー淹れてやったぞ」と拓也が声をかけるが、奈々子が「ああ、ありがとう」と言うばかりで、一向に話をやめない。

 拓也はごほんと咳払いをして、「なんか楽しそうだけど、何話しているんだ?」と二人に尋ねた。

 「今、ナツカワベーカリーの入江さんのこと話していたんです。店長はあしらうばかりで何も話を聞いてくれないんですけど、奈々子さんは嫌な顔ひとつしないで聞いてくれるんです。」と浜本くんは目を輝かせて言った。

 「ほおお」と拓也はいぶかしげに奈々子を見た。

 「近くのナツカワベーカリーというパン屋さんにとてもすてきなお嬢さんがいるらしいわね、私もお顔を拝見したいわ」と拓也にウインクをした。

 「んなの、ほっとけ」と拓也はぶっきらぼうに答えた。

 「ほら、奈々子さん。店長はいつも冷たいんですよ」と浜本くんは奈々子にグチを言っていた。

 「拓也は昔からそうよ、恋愛なんて興味ないんだから。それでも、ちゃっかり、彼女とかがいてさあ」と奈々子は笑った。

 「そういえば店長の奥さんは高校の同級生なんですよね。あー、店長は好かれて奥さんと一緒になったんですね。だから、この僕のピュアな気持ちを理解してくれないんだ。」

 「まったく、何バカなこと言っているんだ」と拓也は少しイラついて答えた。

 「じゃあ、奈々子はどうなんだ。高校時代に好きな男とかいたのか?」と拓也は矛先を奈々子に向けた。

 「私だって女よ。好きな男の子ぐらい、いたわよ」

 「へえー、初めて聞いた。同じ陸上部の連中の一人か?」

 「恋愛に興味がない人には、話さない主義なの」と奈々子は拓也ではなく浜本くんに向かって言った。

 「そうですよ、僕に何でも話してください。僕は店長みたいに冷たくないですから」と浜本くんは言った。

 拓也は面白くない。俺は恋愛をしたことがない、つまらない人間か?

 「まったく、お前らは俺をなんだと思っているんだ、俺は仕事に戻るぞ」と拓也は1階に降りていった。

 「恋か・・・」と拓也はコーヒーを淹れながら考えていた。

 (俺は奈々子を好きでいたんだよ)と拓也は心の中で呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ