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TrueLove  作者: 朝雛みか
4/5

三章

(narrator side)


楽しい時間ほど驚くほど早く、坦々で平々凡々とした時間ほど怖ろしく永く感じるものである。


ジョン王子とルナ姫が出逢ってから、色々なことの連続で、2人にとってこの時間(トキ)はきっと短かっただろう。


さて、2人の恋はまだまだ始まったばかり。

その2人を待つ試練は、『秘密』。


『秘密』なんて誰にだってある。

隠しているうちは、まだかわいい秘密。でも、それがいつの間にか、嘘という名の檻の中にしまわれてしまった時には、もう重く汚い秘密に変わってしまう。


あなたは、『かわいい秘密』と『重く汚い秘密』、何個持ってる?



2人にある秘密。

今から言うことは嘘なんかじゃない。真実。



ジョン王子。

生まれた瞬間には、皆に祝福された。

しかしながら、赤ん坊を産んですぐに王妃が体調を崩された途端に、王様の周りは慌て出しジョンは祝福されない存在になった。

何故かというと、実は、ジョンが生まれた時の名前はジョナシュワではなくて、ジョセフィーヌだった。

つまり、女の子としてこの世に生を受けたのだ。

しかし、王を継ぐものは男児でなければならない法律のせいで、ジョセフィーヌが後を継げないと、継ぐものがいないと察知した途端に、王様の周りからは「何故女の子なんだ。」と罵声に近い声が挙がった。


そこで王様が出した結論は、ここでの一切を他言無用とし、ジョセフィーヌをジョナシュワとして、つまり男の子として育てることに決めたのだった。



ルナ姫。

ルナは元々名前がなかった。つまり捨て子だったんだ。

だけどマイアーズさん夫妻は、神からの贈り物ではないか、と喜び家で育てる事にしたのだ。その時はまだ男の子のルークとして生きていた。


それがルナに変わったのはルークが丁度18になった時だった。

その頃はルークは毎日、母を死に追いやった病に苦しむ父を見て、嘆き悲しんでいた。

なんとかお金をつくって、治療させてやりたい。と思って、その可愛らしさを持つ容姿をいかして、身売りをしようと考えた時もあった。その時は、父ちゃんにこっぴどく怒られたのをルークは今でも忘れていないだろう。

そして誕生日、と言ってもマイアーズ夫妻に拾われた日だが、その日に街に、王子の誕生日を祝う舞踏会で后をさがすと書かれたビラが貼られているのを見て、ルークは「これだ!」と思い、ルークを捨ててルナになることを決めた。

それで、父ちゃんを救いたい。その一心でルークはみるみる男に見えなくなっていったのだった。。



そう、、2人は性別を隠して生きているんだ。

だからこそ、ジョンにもルナにも些細なことや言葉に、他の誰より感動してしまうのだろう。


そして、だからこそ、、

2人は本能的に『異性』として惹かれていったのだろう。


‥‥‥2人にその秘密を打ち明けられる勇気は、まだ無い。



(Jon side)


あれから数週間が経った今日。俺とルナの結婚式が行われようとしていた。

予期せぬ誤解も解け、お互いの気持ちも再確認出来たから、あの事件はあって良かったのかもしれない。


でも、ルナを好きになればなるほど、自分の中の罪悪感は増すばかりだった。


――ルナが俺が、実は女だったって知ったらどんな顔をするだろう。

どんな風に感じ、どんな風に思うだろう。――


結婚式の当日になっても、俺の頭はそればかり考えていた。


式が始まり、ウェディングドレスを纏ったルナを見て、素直に可愛いと思った。

それと同時に、俺も来てみたかったな、という感情も湧き出し素直に笑えない。

こんな薄い笑顔じゃ、ルナは変だと気付くだろう。


―――いずれ言わなきゃいけない


でも、そのいずれがいつなのか、俺には全くわからなかった。


色々考えすぎて、司祭が言っている言葉もよく聞こえない。


「汝は―――――誓いますか?」


「ジョン?」


「は‥はい、誓います。」


「――――――誓いますか?」


「はい、誓います。」


「―――――誓いのキスを。」


どこかで聞いたことがある。愛している人のキスが呪いを解く、一番の魔法だって。

女なのに、男として生きていく運命を背負わされたのって、呪いのうちに入るだろうか?

でも確かに愛してるけど、これは女同士だよね?

それでも呪いは解けるの??


そして、2人は唇をかわす。

俺は右に首を傾けて、ルナは俺から見て左に。


誓いのキス。

これが俺の初めてのキスだった。

だって、女の人とキスなんて考えられなかったから。


でも、このキスは柔らかい。柔らかくて甘い。

味ではなくて、心も体も脳みそも溶けてしまうような、そんな甘さが唇から流れ込む。


同性だったはず、なのにとても甘い。

まるで、異性にするそれと同じようだ。


――長い――


周りは皆が思い始める。

俺も長い気はしたけど、この甘さに歯止めがきかない。それはルナの方も同じみたいで、唇を離そうとしない。


舌をいれたディープなキスじゃない。でも、離したくない甘さが確かにある。

甘くチョコレートのよう。でも、チョコみたいに飽きることはない感覚。


呼吸をお互いの口の中でし、強欲なまでに愛を感じる。


『愛』という名の熱が口から顔へ、顔から脳みそ、体へと伝わっていく。


どちらの口からともわからぬ息が、口の端からフッと漏れれば、誓いのキスはようやく終わりを迎えた。




(Luna side)


結婚式で愛を確かめるような、それでいて激しくはない、溺れるようなキスの後。

私はふと思ってしまった。


――あれ?違和感が、、ない。――


喧嘩をした日につい拒絶してしまったのも、実を言えば相手が男だったから。

結婚式でキスをしないわけにはいかないから、心では仕方なくと思っていた。

一瞬で終わるだろうと踏んでいたそれは、はたから見れば気の遠くなるような時間、しかし自分達には数秒にしか感じない。それ程の長いキスだった。

それなのに、違和感がない。寧ろ、足りないと思ってしまったのを押し殺したくらいだ。


ルナの中で、久しぶりに『俺』が出てきたのもその所為だろう。


――あれ?俺、、もしかして、そっち系?‥‥いやいやいや‥‥‥――


でも、事実は心が示していて、いくら頭が拒否しても変えられないものだった。

それ程までに、ジョンのことを好きで、愛してしまったのだろう。


それから、皆が帰った後で頭ではなく、心が感じたことが口を伝って、ジョンへと向かった。




「「嘘ついてるよね。」」




ジョンと声が重なる。向こうも同じことを考えていたようだ。

それは、女の‥いや男の勘だった。あるいは人の誰しもが持つ勘なのかもしれない。



「「え?」」



また、重なる。



「「やっぱり。」」




声が重なったのはここまでだった。

そして次に、2人の声ではなく、唇が自然と重なった。


まるで、以心伝心するかのように、お互いの疑問を確かめるように。


はたから見たら、何が起きているかわからないだろう。

でも、2人にはわかる。


さっきの重なった言葉の意味も、お互いの答えも。


その嘘がお互いに大切だったことも、これからは『重く汚い秘密』ではなく『軽い可愛い秘密』になることも。


そして、触れる口から、舌から、手や足から感じる『異性』。


2人には秘密がいらないとわかったことで、全身を縛り付けていた鎖のような拘束具がはずれたような気がした。

手枷、足枷、首枷、そして何重にも巻かれた鍵付きの鎖。それらがはずれて、2人の体はもう軽かった。


今まで以上に、求めた。お互いがお互いを。


ただ、ひとつ。どうしてもはずれない糸。

赤い、赤い、、赤い糸。

2人の小指にがっちりとはまって、いくら誰が取ろうとしても取れない。


その糸だけは、はずれず、互いを離れられないものにした。



この糸は、世間ではきっとこう言うだろう。




『運命』



と。

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