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TrueLove  作者: 朝雛みか
3/5

二章


(Jon side)


――舞踏会の日、俺は『運命』だと思った。

顔を、そして目を見た瞬間に、この人が運命の人だと思ったんだ。

ルナの目は、ものすごい勢いで俺を求めていた。俺にも彼女にも、過去にどんなことがあったって全てを忘れて愛してしまうほどに、好きだと思った。――


ジョンが広い家の廊下を物思いに歩いていると、その歩く先にルナの姿があった。



「お、おはよう。」


と照れながら言えば、ルナはその声で初めてジョンの存在に気づいたように、一度「あっ!」と驚いてから、


「おはよう、ジョン。」


と笑って返した。

ルナがジョンを通り越して行こうとするので、後ろから抱き付いた。

腕を脇から回して右手の指と左手の指をルナのお腹の前で交わらせた。


ジョンはこの格好が(恥ずかしくてたまらないけど)好きだ。


「愛してるよ。ルナ。」


と耳元でささやけば、ルナは少し苦い顔を浮かべた後、フッと優しく笑って、


「私もよ、ジョン。」


その言葉を聞いてから、目の前にあった部屋にルナを押し込み、扉が閉まると同時に、唇を寄せた。

熱いキスになるかと思えば、ルナが唇を手で覆い、


「こういうことは結婚式を挙げてからにしましょう。」


と微笑みながら言った。

本当は、好きだからこそ欲求不満になりそうなのだが、好きだからこそ、また我慢ができるとジョンは思った。


「そうだね。でもルナ、俺は愛してるよ。」


そういって部屋を出ていった。

そして、ジョンは3階にあるあの古びた扉を持つ部屋に向かって歩き出した。


部屋につくなり、窓を開け、黄昏るように考え始めた。


――ルナはどうしてしまったのだろう?

舞踏会のあの日、俺を見るルナの目は、確かに俺を求める目だと思った。

でもあの日から今まで、その目は見られなくなった。

婚約を王様に報告してすぐに、不治の病と呼ばれていた病に犯された、父を助けて欲しいと懇願された。


もしかして、考えたくないけど、、

俺に近づいたのは金目当てだったのか?


信じない、信じなくない。金目当てだなんて、、

いや、信じよう。ルナを。ちゃんと愛してくれていると。


あの日のあの狂おしい程俺を求める目は、もう見れないのだろうか。――



そんな事を考えながら、窓から入る陽射しでウトウトとしてきた。



(Luna side)


――あの日以来、彼は顔をあわす度にいつでも「愛してる」と言ってくる。

本心で言っているのか、疑問がこみ上げてくる。

私だって、愛してる。

愛してるけど、恥ずかしくてなかなか口に出せないんだ。

でも、口に出しにくいからこそ、その思いに真実味が出てくるんだと思うんだけど、私は間違ってるのかな?――


ルナはそんなことを考えながら廊下を歩いていた。


すると不意に声をかけられた。


「お、おはよう。」


ルナは急のことで、「あっ。」と驚きの声が漏れたが、その照れながら言った挨拶がジョンからであったことはすぐにわかった。

ジョンは王子だが、その雰囲気などから『可愛いなぁ』と感じさせる部分があった。

ルナがそれに恥ずかしさを感じて、視線を逸らし食堂に向かおうと歩みを前に出すと、後ろから優しく抱きしめられて、足が止まる。


お腹の前で結ばれている彼の手がルナを堪らなくドキドキさせる。


「愛してるよ。ルナ。」


――まただ。こう何度も言われると、誰にでも言ってるんじゃないかって思っちゃうよ。――


っと一瞬考えてから


「私もよ。ジョン。」


と答えた。

それから、一番近くにあった部屋に連れ込まれ、ルナは壁を背にキスされそうになった。

でも、今はなんだかそんな気分になれなくて、


「こういうことは結婚式を挙げてからにしましょう。」


と言って、半ば強引に拒否した。


ルナはそれからのことは、少し記憶が薄い。

それはジョンに対する罪悪感と、また聞こえてきた「愛してる」と言う言葉に対する疑問感からだった。


それでも、ルナは思った。

――信じたい。本当に私の事を思って、愛していると言ってて、他の人になんか言ってない。私にだけ、、言ってるんだ。――



その日の夜に、ルナにとって事件とも呼べる出来事が起きたのだった。


その日の夜、昼間、素っ気なく拒否してしまったことを謝ろうと、ジョンを探していた時の事。

国を代表する城が為に、当然客人をもてなす部屋、いわゆるゲストルームがあるわけで、、

その部屋の前に通りかかった時に不意に笑い声が聞こえた気がした。


気になって、聞き耳を立ててみたが、あまり中の声が聞こえてこない。


そこで、気づかれないように、そーっと2,3センチだけドアを開けてみると、そこから聞こえてきたものは、ルナの聞き慣れた声で、聞き慣れた言葉だった。


「――愛してるんだ。だから、―――――――」


愛してるんだ。

の後はもう聞きたくなかった。だから、完全に耳を塞いで、自分の部屋まで駆けだした。




(Jon side)


物音が聞こえた気がした。

ただそれだけだけど、何故だかルナのような気がしてならなかった。


「ルナ?!」


と声をあげて立ち上がり、部屋をでてルナの部屋に向かう廊下を見る。

しかしそこには誰もいなかった。けど、誰かがいたような気配があった。



(Jon side)


ジョンはゲストルームに戻り、客人に微笑みながら、


「今日はどうもありがとう。また話を聞いてくれよ。」


と言って、丁重にお帰りいただいた。

その客人も、


「あぁ、またな。」


と、明らかな男声で帰りの合図を送って、外へと歩き出した。


ジョンは王子である前に、1人の男である。その為、男友達は多くいた。

その中でも仲が良かったのがこの男で、ジョンの唯一物心つく前から一緒にいる、いわば親友だった。


名前はカルティス・オブライエン。

皆には、「カルティ」とか「カル」と呼ばれている。

身分でいうと、エリート貴族というのがピッタリの好青年だ。



カルティの帰った後、ジョンはどうしても気になって、ルナの部屋へと足をのばした。


『トントン。』

「ルナ?いるか?」


「‥‥‥‥‥。」


部屋には人の気配はするが、返事がない。


「ルナ?いるだろ?」


「‥‥‥‥‥‥‥。」


「入るぞ。」


と言ってドアを開けると、ベットの上でうずくまって布団の中にくるまって、まるで拗ねているルナがいた。

それをつい可愛いと思ってしまう、ジョンがいた。


ジョンはベットの上のルナのそばに腰をおろし、頭らしき凸部に撫でようと手を伸ばすが、少し考えて止めて声をかけた。


「ルナ、、どうした?」


「‥‥‥‥‥‥。」


「言ってくれなきゃ、わからないな。いくら俺でもさ。」


「‥‥‥‥。」


「ル〜ナ、、?」


「‥‥ズルい。」


少し間の後、本当に蚊の鳴き声のように小さな声で、ルナが言った。


「ずるいって、何でかな?」


とても優しい綺麗な声で、ジョンが聞いた。その声は、少しだけ女性的な包容力が感じられた。


「だって、、だって。私は恥ずかしくて、口に出して上手く言えないのに。ジョンは誰にでも簡単に言うじゃん。」


さっきよりも大きくなったけど、拗ねてるのを全く感じさせる声は、とても愛らしかった。


「言う言うって、何を?」


すると、一瞬で空気が変わって、布団で顔が見えないのに、ルナの顔が赤くなったのがわかった。

――今だ。――

と言わんばかりに、先ほど引っ込めた手を出して、ルナの頭であろう場所を軽くタッチした。


「あ、愛してる。って、誰にでも言うじゃん。」


拗ねてるルナを可愛いと思っていたのも束の間、その言葉を聞いた途端、素直に動揺した。


「俺、ルナにしか言ってないよ。」


「嘘だ。私、聞いたもん。ゲストルームの前で。」


「やっぱりいたんだ。それは、完全に誤解だよ。」


「ご、、かい?」


「そ、誤解。ちょっとついてきて。」


いきなり連れ出す形で、布団をはがされたルナは少し戸惑った顔をしていた。(Luna side)


――ちょ、ちょっと。何なのよ!いきなり!!――


と思ったが、声には出せなかった。

ジョンが今までで一番楽しそうな顔で、ルナの手を引っ張って廊下を進んでいくからだった。


とても楽しそうにしているジョンに、ルナは最初は呆れていたが、階段を2階から3階へ上っていくうちに、呆れを通り越して楽しくなってきた。


3階にある、ひとつだけ変わった扉を持つ部屋に入った。

するとジョンは、やはり楽しそうに、


「この部屋は、大昔なら使えた魔法に関する本が置いてあるとこなんだ。

俺は、小さい頃に暇になる度に、夢のような魔法が載っている本を、まるで童話を読むかのように読んだんだ。」


「魔法って、、今でも使えるの?」


「ううん。使えない。

ただ、、、、。」


とジョンは言葉をためた。それにはルナも気になり、


「ただ‥‥‥?」


と聞き返す。


「ただ‥、見つけたんだ。ひとつだけ使える魔法を。」


「ふぇ‥?」


ルナが思わず、ハとへの間のようななんともおかしな声をあげれば、ジョンがどういうことか説明した。


「いろんな本を読んでるうちに魔法は、太古には空気中に含まれていた、神より与えられた力って意味のブッダイシソアンって呼ばれる物質を、想像とか呪文で動かすことで使えたんだ。

でも、現在、このブッダイシソアンは存在しない。言ってしまえば、架空の物質になってしまってる。

だけど俺は見つけたんだ。この部屋の本に、少しだけその物質がついてるのを。

それでも、微量だから、ほとんど魔法は使えない。

後一回でも、簡単な魔法使っただけで、きっと全部使い切っちゃって、もう使えなくなるね。」


「でもなんで、そんなことわかるの?」


「あれは、偶然だったんだ。

俺がまだ6歳程だったとき、本を読んでて、ふと未来に行ってみたい。って考えながら、本に書いてある呪文を詠んだんだ。

そしたら、いつの間にか、電車の中にいて、コケて泣くのを我慢する俺を優しく慰めてくれた女の人がいたんだ。

俺は、その日からその人がずっとずっと好きで、忘れることがなかった。

だから、舞踏会で君に会ったときは、運命を感じたんだ。

ねぇルナ。汽車で俺を助けたのおぼえてる?」


「う、、うん。」


「じゃあ、これから過去に行こう。ゲストルームに客が来てたときの時間に。」


「でも、そしたら、、もう魔法使えなくなっちゃうんじゃ?」


とルナが言うと、ジョンはフワリと笑ってこう言った。


「そんなことどうでもいいよ。俺は、誤解が解けることの方が大事だからさ。ね?」


ね?と聞かれて、ルナはつい「うん。」と頷いた。



ジョンは本を見ながら、なんだかおかしな呪文を唱え始めた。

するとどうだろう。

不意に体がフッと浮いたような気がした瞬間。目の前が暗くなって、またすぐに明るくなった時には、もう前の部屋にはいなかった。


ここはどこかというと、例のゲストルームだった。

コツコツと部屋の外から誰かが近づいてくる音がしてきた。

するとルナはふと疑問。


「私たちって、他の人にも見えるよね?」


ジョンはやや首を傾げてから、


「うん。見えるけど、、なんで?」


「これからあなた達と誰かさん(多分、浮気相手でしょうけど?)が来るのに、ここにいていいの?」


「あー、、、ダメ。」


と言って、ニカッと笑った。何で笑ったのかはわからないけど、、。

多分、未だに魔法を使っていることを楽しんでいるのだろう。


「さ、早く隠れなきゃ。」


とジョンがニコニコしながら、ルナの手を引いた。


ゲストルームは、入って右側に壁があって、左に向かって部屋が広がっているのだが、2人はその左奥にあるクローゼットルームに身を隠した。

そこは、小規模のゲストルームだったために、客人の服を10人程余裕を持ってかけられるスペースと、ジョンなど、家の人が服を置いておける、二部屋構造になっていて、ジョンとルナはその後者側のスペースに隠れていた。


すると隠れた途端に、そのゲストルームに2人の男性が入ってきた。


相手が男性ということに気がついてルナは「はっ!」と息を呑んだ。

ジョンがうんうんと頷いているのを背中から感じた。


因みに、クローゼットルームの中でも、身内用のスペースにいる2人は、その狭さもあって、軽く密着していた。

ルナの首には吐息がかかり、背中からは心臓の音が伝わってくる。

さらに言えば、2人の格好は座ってはいるものの、ジョンの好きな後ろから抱きしめるような格好だった。

ジョンの流れに任せたら、ついそうなってしまったみたいだ。


2人の男が話し始めると、すぐさま耳栓をされてしまった。

ルナがムスッとすると、ジョンは耳栓を少しずらして微笑みながら言った。


「まだ、世間話だからいいだろう?大事なとこはちゃんと聞いてもらうから。」


ルナの顔は元には戻らないけど、ジョンは静かに優しい微笑みを見せた。

ルナが最初見た時にジョンを惚れた要素は、顔立ちも少なからずあったかもしれないが、実際のところはジョンに『異性』と『優しさ』のオーラが出ていたからに違いないだろう。


ジワジワと時間が過ぎ、漸く耳栓がとれた時に聞こえてきた言葉は、


「カルティ、聞いてくれよ。

昔、お前にだけ未来に行ってみたことがある話したよな?」


「あぁ、うん。」


カルティと呼ばれた男が、そんなこともあったな、というような拍子で答えた。


「その時に逢った運命の人覚えてる?

俺に、泣いてもいいんだって教えてくれたんだ。

そのおかげで、俺は今も思ったままに生きてられるし、心も子供の時のまま豊か、いや子供の時よりも豊かに育った。

全部、本当にあの人のおかげだよ。

その人が、舞踏会に来たんだ。嬉しかった、本当に。泣くかと思ったけど、憧れだと思ってた気持ちが、一瞬で好きなんだって気づいたんだ。

思ったよりも気は強かったけどね。」


2人の笑いに、ルナがまたも、ムッとしてジョンを見たら、今度はやや苦笑いで「まぁまぁ。」と言った。

話は続いてて、


「俺はこんなに人を愛したのは、初めてだよ。

本気でルナを“愛してるんだ。だから、”毎日いつでもどこでも『愛してる』って、言ってるんだ。」


――ドタドタドタ

と足音が聞こえた気がした。一瞬、扉が閉まった気もする。


「でもジョン。そんなに言ったら、引かれちゃうんじゃないか?」


と言う声はジョンには届かずに、ジョンは慌てて扉に向かっていた。


「おいおい、どうしたんだ?慌てて。」


――今、ルナがいた気がした。――

これが、ジョンの素直な気持ちだろう。



ここで、クローゼットルームにいる二人の視界が暗くなり、すぐに3階の魔法の本の部屋に戻っていた。


「あぁ、やっぱり最後まで見れなかったね。」


と言うジョン。きっと、ブッダイシナンチャラが無くなってしまったんだろう。


現在の時間に戻っては来たが、2人の体勢は変わっていなかった。

その為、ジョンにもルナにもお互いの顔が見えなかった。


いや、ルナからしたら見られなくて良かった。

嬉しかったのとホッとしたのが重なって、涙と鼻水で凄い泣き顔になっていたから。


それでも、泣いていたのがジョンにはわかったみたいで、


「ね、誤解だったでしょ?」


と優しく言って、ルナの右肩に顔を乗せて頬ずりをした。


それから、少し時間がたって、涙も止まり頬ずりも止まった。ついでに鼻水も止まった。

そして聞こえてきたのは、2人の静かな寝息だった。2人とも、嬉しいやら楽しいやらわからないが、優しい顔をして眠っていた。



さらに時間がたって、その部屋から聞こえてきたのは、


「愛してるよ。」


という、ジョンの一言の寝言だった。

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