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事の真相〜1〜

(相変わらず冴えない顔してるな)

 トイレの鏡に映っている自分の顔はいつも以上に冴えなかった。もともと容姿的に目立つものは何もない。背も少し低いし、髪型も家の近くの床屋でいつも通り、である。

(さすがにそろそろ床屋はまずいかな……)

 そう思いながらワイシャツのボタンを一つ外す。ウチの学校は学ランだが、もう衣替えの時期なので、ワイシャツ姿だ。外は涼しくなってきたが、これからの対峙を前にして少し緊張して暑さを感じた。七瀬はおそらく柳田を連れてくるつもりだろう。長身からの見下ろすようなすごみを思い出すと、手に汗がにじむ。

 水曜日になるのはあっという間だった。いつも通り学校に行って、家に帰ったら下らないバラエティー番組を見たら寝る。それだけだった。これから、七瀬が何をしようとしているかわかってるし、気乗りはしないがそれには乗っかるつもりだった。人に合わせるのは苦手じゃない。適当に話を合わせて、予備校には講義を受けに行く。それを淡々と繰り返すだけ。いつも学校でしてることと同じ。わずかな義務をこなすだけの怠惰な日々。

(おっと、もうこんな時間だ)

 携帯を見ると、思ったより時間が過ぎていた。外を見ると、空は赤みを失い始め夕方から夜へと移り変わろうとしていた。

「いたいた」

 トイレから出ると、左手のほうから七瀬の声が聞こえた。見ると、噴水の近くに七瀬と、……柳田がいた。七瀬は以前のように手をぶんぶん振っている。その元気な姿に、引きつった笑顔をしながら軽く手を上げた。

「久しぶりだな、泉」

 近寄ると柳田の低く威圧感のあり声が胸を刺す。うう、何でこんなことしなきゃいけないんだ。

「……久しぶり」

「とりあえずベンチ座ろ、ベンチ」

 目を合わせずにボソッと呟くように言うと、七瀬がベンチを指差した。なぜテンション高いのだろう、この女は。

(?)

 ベンチに向かう間の柳田の動きに違和感を感じる。わずかな距離だったので何かはわからないが、何かがおかしい、そう思った。

「さてと、まずは何から話そうか?」

 七瀬を間にして三人でベンチに座る。柳田は無言のまま、やや前屈みに座っている。俺も当然無言だ。

「二人とも何か話そうよう、同じプレハブ組じゃんか」

 もー、と少しむくれながら七瀬は俺たちの顔を交互に見る。彼女はプレハブ小屋のことを気に入ってるようだ。

「ほら、柳田。さっさと話しなさいよ」

 バン、と柳田の背中を強引に叩く。それに反応するわけでもなく、膝に肘を置いて手は口元を抑えていた。

「……俺は運が良かった」

 柳田が前を見ながらボソッと呟く。

「野球部にあった事件を知ってるか?」

 視線だけがこちらを向く。

「野球部?」

「中学の時のことだ」

 柳田は手を下ろし、自らの膝の上で手を組んだ。そして、視線を再び前に向けた。

 高嶺中学野球部はなかなかの強豪だ。県大会には何度も出てるし、いつも遅くまで練習し、少数精鋭で謳われた。十年くらい前に北見で行われた北信越大会に出場したときは、生徒総出で応援に行ったらしい。その野球部も自分たちの代では低迷していた。サッカー部に人が流れたことも原因の一つだが、その大元の理由は聞いたことがある。

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