出かけよう!
「遊園地? 何でまた」
「5月5日、私の誕生日なの! それで皆で行こう」
バン、とテーブルを強く叩いて七瀬が立ち上がる。やかましい女だ。
「あ、お誕生日なんだ。おめでとう」
「ありがとう」
今度は笑顔。いつも気だるそうにしてるわりにはコロコロ表情が変わる。何がそんなに面白いのか不思議に思う。
「どこ行くの?」
「山城リトルパーク」
山城リトルパークは県中央部の南、その名の通り山沿いにある田舎の小さな遊園地だ。ちなみに俺はまだ行ったことはない。
「山城リトルパークかー、実は行ったことないんだよね、俺」
珍しいな、泉は行ったことないのか。
「え、泉。行ったことないの? 何かありそうだと思ってたから」
「家族で出かけるときはいつもサッカー関連だったから。草サッカーとかスタジアムとか」
思い出した。泉の家は一家総出でサッカーバカだったっけ。
「私は一回だけ」
「私も小さいころに一回だけー!」
確かに、お嬢様ってのはあまり遊園地みたいなところに行かないものなのか? そもそも七瀬はお嬢様ですらないだろうけど。
「一時間半くらいだっけ? いいな、行こうよ! でも、僕でいいのかな……」
「いいから、誘ったの」
七瀬は決まりだね、と泉の手を握って嬉しそうに振り回している。
「……それには俺も含まれてるのか?」
「当然じゃん、アンタには誕生日プレゼント上げたでしょ? 協力してよね」
「おいおい、菓子もらっただけじゃねーか」
「何々? 百合ヶ丘のお嬢様のデートのお誘いを断るの? 感謝してほしいくらいね」
おいおい、マジでコンビニで買った菓子しかもらってねーぞ。お嬢様のおの字もない女に言われたくない。
「柳田はもう誕生日終わったの?」
「あぁ、俺はかなり早いから」
残念、祝えなかったと泉。そういえば、泉の誕生日はいつなんだろうか。そのうち聞いてみるとするか。
「決まりかしらね?」
「仕方ないな。これで貸し借りなしだぞ」
「決まり! 屋代駅の改札に8時半集合ね。遅れちゃダメよ、それとプレゼント募集中だから」
ずけずけとコイツは……。まぁ、たまにはそんな1日もいいか。
「良かったね、雪乃」
椎田が再び微笑む。そういや、彼女とは会ったばかりだな。うまくやれるといいが。
「楽しみだね。……あ、講義始まった。行こっ!」
泉の声に押されるかのようにプレハブ小屋を出た俺たちであった。
あー、遊園地行く前に1話使いきった……。途中で泉の一人称を僕に変更。数字がバラバラ。これらはそのうち直したり、統一したりします。
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