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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

勇者。お前騙されてんだよ

作者: 暇庭宅男
掲載日:2026/03/11

はるばるようこそ勇者。魔界の城へ。


えーと 出身地とお名前、差し支えなければご年齢も。


……うん、わかるんだ、何聞いてんだ関係ねえだろってだろ。そうだよないきなりだよな。でもこっちには大いに関係あるんだ、だから頼むよ。な。


サントリーニから?うおーメッチャ遠いな、王都なんか行ったこともないんじゃね?出発するとき王城に行ったきりか、そうでしょうとも。べつに王都になんか行かなくったってどこでだって生きていけらぁな。


名前は?ジョルジオ・ディオニッシアス?わお!かっけー!いかにも英雄サマじゃん。いい名前。俺、テルバ・ヴァサントね。一応今だけ覚えといて。えっ、歳、じゅうろく!?姫様より下じゃんお前……すげぇ頑張ったな……


戦わねえのって?ま、一戦やってもいいんだけど。ちっと話さないとならんことがあってさ。


ジョルジオさあ、率直に言うんだけど、王都から正規軍の増援はないわけ?

いや、だからさ、王族直属のバルダサリ師団とか、聖導院のアーレアス聖隷軍とか。超精鋭部隊も王都にはいるんだわ。ぶっちゃけね?お前がヒーコラ旅して来なくてもさっき言った軍隊直でブチ込んでくれば俺の首なんか一週間で獲れんのよ。


気がついた?なんでその精鋭部隊をよこさずに、わざわざ勇者のお前なんだと思う?

お前さ、サントリーニで生まれてから6歳までに王都には行かなかったろ?

で、その後に奇跡の力が見つかって王様に召し抱えられたんだよな。その称号が勇者だ。


王都ではな、生まれながらにして奇跡の力を宿す人間はみんな、聖女サマか、教導者として乳離れと共に親から引き離されんの。()()()()()()()()()()()()()。んで、聖導院の象徴なんで()()()()()死なない訓練とか受けんのよ。毒とか、刺されても自己治癒とか。いろいろね。


お前はそうなるはずだった。少なくとも王都に近い街の生まれなら教導者として育てられて、その後一生を聖導院のために全て捧げるはずだった。


そして、幸か不幸か、お前はその奇跡の力を埋もれさせたまま、たくさんの人のなかで普通に育ってきた。自分が何をできるか分かったあと、誰かの役に立ちたいって思って、選んだ先にいるのがここだ。


ジョルジオ。この旅は何だったんだと思う?

魔王退治の旅、ね。そう信じてこれたのはそれなりに、幸福だったのかも知れんけど、さ。


ジョルジオ。お前、騙されたんだよ。

聖導院の制御の外側にいる、奇跡の力を振るう何者かなんて、国にとっちゃ不穏分子でしかねーんだ。聖導院を相手取って、民草束ねて反乱しかねないバケモンなんだ。だからお前は魔王討伐を任ぜられた。バケモンにバケモンをぶつけて、かなうことなら殺し合って相討ちになりゃ万々歳ってな。

勇者なんて、要は(てい)のいい雑兵さ。精一杯擁護するにしても傭兵だ。お前は結局、お前を恐れてお前に死んでほしいと思ってる奴らにばっかり尽くすわけさ。


お互いツイてねえな。ホンのちっとばっかり力があるせいで、他人からの余分な不信やら何やらでカンタンに人生が狂う。俺やお前の、こう生きていきたいって願いは全部、他人から見たら自分の思い通りの外側にある余分でしかなかったりする。信じられねえか?だが事実だ。


俺もおなじさ。王位継承権じゃ下位にいたはずなんだが、魔族に伝わる「王の(しるし)」ってやつが、事故で俺にひっついて取れなくなっちまった。


俺はそれから腹違いの兄貴を殺す羽目になって、兄貴の母親も殺して、兄貴が王サマになるのを心待ちにしてた誰も彼も殺して、このクソデケェ城のひとりぼっちの魔王になった。まあそんなこんなでな。俺自身はべつにこれまでも、これからも、人間世界の支配なんて考えてねーんだ。


……誰かを殺して、本音を隠して、ハラの底じゃ四六時中、気に食わねえ誰かの殺し方ばっかり考えてたりして。そうしなきゃいけない国やら何やらの、仕組みってのが、死ぬほど憎たらしいだけなのさ。


……つうわけで、待たせたね、勇者。死合おうか。いいね、願ったりだ。お前くらい強いヤツになら、命を取られたって勲章さ。

魔王を倒したいのになぜ多くの作品で王様は勇者頼りで軍隊出さないんだ……という無粋極まりない感想をもとに書いたもの。過去作から人名や単語を多々流用しているが、つながりはない。

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― 新着の感想 ―
読んでいてヤマトタケルを思い出した。いつの時代も世知辛いですね。
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