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絵描きの君とのラフな関係。「先生、進捗どうですか?」  作者: 葵依幸
【4】考えるな、感じるんだ。理想のおっぱいを。

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考えるな、感じるんだ。理想のおっぱいを。(後日談)

《 後日談 》


 おっぱいマウスパッド騒動から三ヶ月が経とうとしていた。


「みてみてー! 桜ちゃんのおっぱいーっ!」


 休日の午後。自室で仕事を片付けていた秀治のもとに満面の笑みで絵麻は突撃し、届いたばかりの『音野葉桜、おっぱいマウスパッド』を掲げた。


「ほらほら、触って触って! 私の自信作!」と、押し切られるがままに仕事を片付けたい一心で手を伸ばし、知り合いのアバターの胸を揉んだ秀治だったが、「ん?」と小首を傾げることになった。


「なんか違うくないか?」

「え?」


 まさかの反応に絵麻は目を丸くし、秀治を見る。


「いや、だってほら、俺が良いって言ったやつと感触違う気がする」


 あの一件から三ヶ月が過ぎ、既に夏も終わりに近づいている。

 手のひらに触れた感触はもはや覚えていないが、秀治は再びマウスパッドの胸を揉み『これじゃないよな』とやはり小首を傾げる。


 思い出し、顔を赤くしたのは絵麻である。


 絵麻は完全にあの晩の出来事を忘れていた。


 否、記憶の奥底に封じ込めることでそれからの日々を過ごしてきた。

 思い出せば明確にその時の光景が脳裏に蘇るのが絵麻の凄いところである。無駄に記憶力は良いのだ。秀治以上に。


「絵麻?」

「へっ?」


 突然固まってしまった絵麻に、秀治は「はて?」と顔色を窺う。


 何か不味いことを言っただろうかと気を遣いながらも不備があってはいけないと、真面目な秀治は目を細めて届いたばかりだというおっぱいマウスパッドを見つめる。


「感触違うぞ。メーカーに確認した方がいいんじゃないのか?」


 悪気はない。


 秀治はただ、常日頃、絵麻がどれだけ真剣に『絵描き』という仕事に向き合っているかを見てきているから万が一があってはいけないと、本気で思っているのである。


「違うって、ナニが?」


 若干カタコトになりつつも絵麻は尋ねる。


「感触だよ。ほら、なんか硬すぎるっていうか、あんとき選んだのはもうちょい柔らかかったっていうか」


 マシュマロとまでは言わないが、手のひらを優しく支えてくれるような暖かさがあった。


 少しずつ記憶が蘇り、自らの手を見つめて秀治は真剣な目のままに告げた。


「合ってるのか? それで」

「合ってるよ!」


 絵麻はキレた。

 というか、大声で押し切った。


「合ってるの! これで! 桜ちゃんのおっぱいはこれなの! 私が選んだのー!」

「お、おお……、そっか……? なら、いいんだ。絵麻が満足してるならそれはそれで……」


 秀治は別にあの時の感触が恋しいわけではない。

 ただ絵麻に後悔して欲しくないだけであった。


 当然、絵麻にもその気持ちは伝わっている。

 伝わっているからこそ、地雷が埋まっていることを自覚しながらも尋ねざるを得なかった。


「……秀治は、あの時のが良かったの?」


 揉まれた感触を、絵麻は今やはっきりと思い出すことが出来る。

 目隠しをされた幼馴染が、自らの胸を揉む感触を。


「……んー。まぁ、それよりかはあっちの方が良かったな。揉んでて気持ちよかったし」

「そ、そっか……!」


 絵麻は恥ずかしいやら嬉しいやらで赤くなりそうな顔を必死に堪え、おっぱいマウスパッドで顔を隠しながら言った。


「あれは、秀治専用だから、いいんだよっ……」

「……ん?」


 小声である。


 聞こえなければ聞こえないままで、

 聞こえたならば勢いに任せ、もう一度揉ませてやろうかと暴走気味の言葉である。


「何か言ったか?」

「なんでも! じゃあはいこれ! サンプル! 二つ貰ったからひとつあげる! 変なことに使っちゃダメだからね!」

「はいはい……」


 と音野葉桜の姿が印刷され、胸部だけが無駄に膨れ上がったマウスパッドを秀治は押し付けられ、絵麻はそそくさ部屋から出ていってしまった。


 仕事途中のノートパソコンの前。

 幼馴染の描いたイラストが印刷されたおっぱいマウスマッドを前に秀治は思う。



 ――変なことに使うな、とは言うけど、おっぱいマウスパッドの正しい使い方ってどうするのが正解なんだ……?



 配信画面では饒舌に音楽トークを繰り広げる音野葉桜も、おっぱいマウスパッドにされては恥じらい、こちらを物欲しそうに見つめるばかりであった。


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