戦後8か月 アラスカ
その日、私は通信塔の修理を手伝っていた。
これで――もう五回目の挑戦になる。
電力も、最初は小さな手回し発電機だった。
けど出力が足りなくて、拾えるのはひたすら雑音だけ。
二回目はギアを増やし、三回目は重りを付けた。
この頃には、基地に残っていたアルコールエンジンじゃもう力不足で、
自然な流れ(?)で私が動力係を拝命することになった。
四回目には、ついに戦車の残骸から部品を引っこ抜いて組み込んだ。
でも、結果はいつも通りの無反応。
そのたびに誰かが「もう少し出力上げてみよう」と言い出して、
気づけば発電機は人間サイズを軽く超えていた。
アンテナも風雪に負けて何度も倒れたから、そのたびに新しいのを立て直した。
最初は数人がかりでいけたけど、今じゃ人力じゃまともに動かせない。
なので、私が担ぐ。
便利な重機枠じゃないかって気もするけど、やることがあるのはいいことだよ。うん。
「いきますよー?」
鉄くずを寄せ集めて溶接したアンテナを、真っ白な空へ向けて掲げた。
最新型(?)の手動発電機は、もはや一般人では回せない。
セルゲイさんたちが全員でかかって、ようやく回るくらいだ。
私は、身長ほどの直径を持つ巨大ハンドルに、ぐっと力を込める。
軽く回せるなんて代物じゃない。
回すたびに軸が重くうなり、金属が震えた。
漫画みたいな光景だけど、誰も笑わない。
「これでダメなら……」と、誰かが神妙な顔でつぶやいた、その直後。
――スピーカーが短く鳴った。
ジッ、ジッ、ジジッ、ジ――
「ノイズ?」
「……違う、規則性! モールス!」
ユイさんが慌ててメモ帳を開き、
古い軍用符号を一文字ずつ追っていく。
みんな、息をひそめて見守った。
やがて、解読された一文が読み上げられる。
『UNION SECTOR7 FROM NORAD
ANY SURVIVORS REPLY』
沈黙。
風の音が、急に大きく聞こえた。
そして――誰かが、小さく言った。
「……届いた」
次の瞬間、歓声が爆発した。
抱き合って、笑って、泣いて、叫んで、転げ回って。
ついさっきまでの静けさが、嘘みたいだった。
「生きてた!」「やった!」「繋がったぞ!」
「返信だ! 今度はこっちの番!」
「発電急げ! ナツメ、全力でいけーー!」
「でも壊すなよ!? 軸曲げるな! 丁寧に! フルパワーで!!」
「だからどっちぃぃぃ!!?」
笑いと涙の中、私はハンドルを回し続ける。
ぐるぐると回すたび、鉄がうなり、空気が震えた。
どこかで何かの部品が外れる音がしたけど、それでも止められなかった。
――ジッ、ジジッ、ジジジ――
ユイさんがスイッチを叩くたび、無線機が短音と長音を刻む。
雪の上に散ったみんなの影が、白い光に揺れた。
その瞬間、ようやく――
戦争が、本当に終わったんだと思えた。




